思い出を連れて【シロクマ文芸部】
舞うイチゴ。どこまでも続く青空に、鳥の形に切り取られた苺。手に小さく収められた苺の鳥は、彼女との思い出を連れて、今にも飛んでいきそうだった。
彼女は苺が大好きだった。ある日、彼女は苺を鳥の形にしてほしいと言ってきた。どこにでも行けそうだからと。その時の彼女の瞳は、雲一つない青空に揺れていた。
放っておいたら消えてしまいそうな彼女を、繋ぎ止めたかったのだろうか。次の日から、僕は何度も練習をした。ただでさえ小さい苺。絆創膏まみれの手で、不恰好な苺を差し出す僕に、彼女はいつも笑っ