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思い出を連れて【シロクマ文芸部】

舞うイチゴ。どこまでも続く青空に、鳥の形に切り取られた苺。手に小さく収められた苺の鳥は、彼女との思い出を連れて、今にも飛んでいきそうだった。

彼女は苺が大好きだった。ある日、彼女は苺を鳥の形にしてほしいと言ってきた。どこにでも行けそうだからと。その時の彼女の瞳は、雲一つない青空に揺れていた。
放っておいたら消えてしまいそうな彼女を、繋ぎ止めたかったのだろうか。次の日から、僕は何度も練習をした。ただでさえ小さい苺。絆創膏まみれの手で、不恰好な苺を差し出す僕に、彼女はいつも笑っていた。


「お父さん!」

後ろを振り返ると、そこにはちょこんと立っている娘。少し前から僕を呼んでいたのだろう。娘はムスッとした顔を僕に向けている。

「ごめんごめん」

娘は僕が持っている苺に気がつくと、一瞬にして目を輝かせた。あの時の彼女のように。

「お母さんのとこに持っていく!」

「優しく持ってね」

「うん!」

きっと、僕たちの今も連れて行ってくれるだろう。その小さな手に乗せられた苺の鳥は、先ほどよりも大きく羽ばたこうとしていた。


こんばんは。れんこんです。

今回は、こちらの小牧幸助様の企画に参加させていただきました!

初めて参加させていただいたのですが、ウンウンと悩みに悩みながら書きました(笑)
次はもうちょっと長く書きたい!

最後までご覧いただきありがとうございました!

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