ポポパポペピアノ【毎週ショートショートnote】
独特な雨の匂いが鼻にまとわりつく、ある梅雨の日。彼はいつもの手つきでピアノを弾いていた。その繊細な音色は、屋根に打ち付ける雨の音と交わり、家を響かせる。
私は、彼と出会った日のことを思い出していた。あの日と違うのは、彼が以前より喋るようになったこと。それと。
「こえ!」
娘がおぼつかない足で、おもちゃのピアノを持ってきた。
私が随分前に買った、このおもちゃのピアノ。演奏だけでなく、オノマトペも奏でられるのが特徴的だ。かなり年季が入っているが、使い方が良かったのかちゃんと音は出る。
『ワクワク』
「オノマトペピアノだね〜」
「ぽぽぱぽぺぴあのあえ〜」
彼の演奏が終わり、ピアノの余韻が私たちを暖めた頃。
彼が後ろを振り返って静かに問う。
「今の演奏は?」
娘は小さな柔らかい手で、白いキーボードを押す。
『キラキラ』
すると、娘がもう一つのキーボードを押した。
『ドキドキ』
娘の手から奏でられた機械音は、私たちをあの日に還させた。
(409字)
こんばんは。れんこんです。
こちら、たはらかに様の企画の裏お題です。
以前書いたオノマトペピアノの話の後日談になってます。内容的には、オノマトペピアノとも被っていますが…。(裏お題難しい!けど楽しい!)
最後までご覧いただきありがとうございました。
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