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おじさまシリーズ

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「私」のおじさま観察日記みたいなシリーズです。 ※フィクションです!
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コンビニとおじさまと私

コンビニとおじさまと私

(「コンビニと私と」の続き)

入ってきたのは見覚えのある出立ち。おじさまだった。こちらにある陳列棚にまっすぐ向かってくる。

まずい!

私は急いで店員さんから賞品を受け取り、1等のぬいぐるみを脇に抱えて店から出ていく。必死に下を向いていたので、どのタイミングでおじさまとすれ違ったのかは分からない。

地面のアスファルトの色が移り替わっていく。気がついた時には、コンビニが遠くの方で光っていた。

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コンビニと私と

コンビニと私と

最近は厳しい寒さが、鞭のように顔に打ちつけてくる。今の私の現状にも鞭を打ってるかのようだ。マッチングアプリを入れて、1ヶ月が経とうとしていた。たしかに、いろいろな男性と出会えたのは良かった。しかし、誰かに会うたびに、自分にペンキを塗りたくったようで、少し疲れてしまったのだ。

私は少しのもの悲しさを抱えて、コンビニに入った。
周りを見ておじさまがいないのを確認する。今日のお目当ては、今日から始まる

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枝豆とおじさまと

枝豆とおじさまと

コンビニの冷えた陳列棚が、じっくりと私の表情を凍らせている。ついでに心も冷えそうであった。
つい先日、親友と電話してる時、喧嘩をしてしまった。喧嘩というか、私が一方的に不機嫌になってしまったのだが。その親友は小学生の頃からの仲であり、驚くほどに気が合った。なので尚更気分が沈んでいる。

今週もおじさまは、ビールのお供に合うおつまみを探しているようだった。その長い足で何度も行ったり来たりを繰り返して

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アイスクリームとおじまさと

アイスクリームとおじまさと

私は、街中で連呼される「○○の秋」と、鼻の詰まり具合で今の季節を感じていた。風情なんてあったものではない。

この歳になると、コンビニに置いてあるご祝儀袋が無意識に目につく。今の世の中の結婚観に不満を抱いてるわけではない。ただ、友達と話してる時、恋バナのネタを提供できない自分に、虚しさと無力さを感じるのである。
マッチングアプリも勧められたのだが、言葉では言い表せない抵抗感があった。
そうして私は

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エレベーターとおじさまと

エレベーターとおじさまと

飲み会帰りの少し浮ついた足元で、私はマンションへと向かう。

『お願い』

この言葉に弱い私は、合コンの帳尻合わせだと分かっていても行ってしまう。好きで行ってるはずなのに、終わった後のモヤモヤは何なのだろう。

マンションの扉が渋るかのように重々しく開いた。
エレベーターに誰かが乗ろうとしているのに気づいた私は、駆け足で向かう。
しかし、私の目の前でエレベーターの扉は完全に閉まった。

その瞬間、

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ビールとおじさまと

ビールとおじさまと

毎週の恒例行事に、私の足が勝手に早くなる。疲れているはずなのに、全く感じない。
何事も慣れてしまうのは怖いことである。

コンビニの外、今日も光に包まれたおじさまがいる。

秋が近づいているのを感じさせない気温の中、手にはまだ開けられてない缶ビールがある。

プシュッと音がしたような気がした。
おじさまの缶ビールから泡が溢れてくる。開ける前に落としてしまったのだろうか。しかし、おじさまはいつものこ

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コンビニ弁当とおじさまと

コンビニ弁当とおじさまと

私は、仕事帰りに今日もコンビニに向かう。
今日の仕事のミスと、帰ってからの家事のことを考えると、地味な重さの足枷をつけられているようだ。
時折、私は何のために働いているのだろうかと思う。金。即答してしまう私はまだ未熟なのだろうか。

コンビニの光が目に突き刺さる。

あれ、おじさまがいない。

私の全身に、隠れていた疲れが一気にのしかかる。
行くのを止めようとしたが、ちょうど食器用洗剤を切らしてい

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ポテチとおじさまと

ポテチとおじさまと

私は毎度のように、沈みかけた太陽の中、コンビニに向かう。
行きすぎて、きっとパートやアルバイトの人に覚えられているだろう。少し恥ずかしい。お目当ては、毎週のように出るめちゃうまスイーツと言いたいところだが、本当は違う。

コンビニが見えてきた。

いた!

心の中でチャンピオンのように拳を上げる。

コンビニの外の端の方で、40代ぐらいの色気と哀愁がダダ漏れおじさまがいる。缶ビールを飲んで携帯を見

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