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ビールとおじさまと

毎週の恒例行事に、私の足が勝手に早くなる。疲れているはずなのに、全く感じない。
何事も慣れてしまうのは怖いことである。

コンビニの外、今日も光に包まれたおじさまがいる。

秋が近づいているのを感じさせない気温の中、手にはまだ開けられてない缶ビールがある。

プシュッと音がしたような気がした。
おじさまの缶ビールから泡が溢れてくる。開ける前に落としてしまったのだろうか。しかし、おじさまはいつものことのように、口で泡を受け止める。

おおおお!お見事!!

全くぶれない。
その余裕はどのようにして、積み上げてきたのだろう。

私は外に出る人と入れ違いに、店の中に入った。
冷房が私の体を心地良く冷やしていく。

そして、アルコールの陳列棚に行き、ビール1本をカゴに入れる。冷え切ったビールが自分の体温を感じさせた。ここ最近、買いたい気分になってしまう。今日もそういう気分らしい。

苦手なのになぁ。

私は外にいるおじさまをふと見た。その背中は油断でもなければ余裕でもなく、安心感と威厳に満ちていた。

んーーー
もう1本!

私は思わずもう1本ビールをカゴに入れた。

誰かおじさまにビールのCMを提供してくださいいいい…!

私はいつものように会計を済ませ、扉を開ける。
幻想的な真っ赤な空が、暗く塗り替えられていく。

今日もお疲れ様です。

何も変わらない慣れてしまった景色。おじさまの表情がいつもより柔らかい気がした。


家に着いた私は缶ビールを開ける。
プシュッと音がし、ごくっと一口。

弾ける泡と苦味が喉をつたい、アルコールは鼻から抜けていった。

確かに慣れは怖いが、悪いことばかりではないのかもしれない。

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