コンビニ弁当とおじさまと
私は、仕事帰りに今日もコンビニに向かう。
今日の仕事のミスと、帰ってからの家事のことを考えると、地味な重さの足枷をつけられているようだ。
時折、私は何のために働いているのだろうかと思う。金。即答してしまう私はまだ未熟なのだろうか。
コンビニの光が目に突き刺さる。
あれ、おじさまがいない。
私の全身に、隠れていた疲れが一気にのしかかる。
行くのを止めようとしたが、ちょうど食器用洗剤を切らしているのを思い出した。
全身の筋肉を扉にもたれかけ開ける。
いたァアアアアア!!
どこか安心感のあるおじさまの後ろ姿。キッチンに立ち、めちゃうまな料理を作っているのが、容易に想像できてしまった。
心は正直である。
お菓子の陳列棚に向かい、一度脳と心臓を落ち着かせる。しかし、落ち着くよりも、早く拝みたい気持ちが勝ってしまった。
お菓子の陳列棚をぐるりと回り、おじさまが見える位置に着く。
シャープな顎のラインに、うっすら蓄えた髭。
どこから見ても素晴らしい。
おじさまの目線の先には、コンビニ弁当。
自炊ではない!
でも全然良い!!
そう、心は正直である(2回目)。
しばらくして、ゴツゴツとしたおじさまの指がしなやかに動く。
唐揚げ弁当か!
しかし、それはフェイントだったようで、隣の焼肉弁当を会計に持って行った。
今日もお疲れ様です。
扉の開閉のメロディが鳴る。
その音をしっかりと確認した私は、当然かのように唐揚げ弁当を手にとった。
私ってこんな気分屋だったっけ。
会計を済ませた私は扉を開ける。指一本でも開きそうな軽さだった。
やはり、心は正直である(3回目)。
コンビニを背に、歩き始めて気づく。
「あ、洗剤忘れた」
今日はそういう日だったのかもしれない。
そうして、私は再びコンビニに向かった。
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