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ポテチとおじさまと
私は毎度のように、沈みかけた太陽の中、コンビニに向かう。
行きすぎて、きっとパートやアルバイトの人に覚えられているだろう。少し恥ずかしい。お目当ては、毎週のように出るめちゃうまスイーツと言いたいところだが、本当は違う。
コンビニが見えてきた。
いた!
心の中でチャンピオンのように拳を上げる。
コンビニの外の端の方で、40代ぐらいの色気と哀愁がダダ漏れおじさまがいる。缶ビールを飲んで携帯を見る姿は、そのスタイルとオーラといい、雑誌のモデルである。
そう、私がコンビニに毎週行ってしまう理由はこれだ。きもいとかいう感想は受け付けない。
表情が緩みそうになるのを抑えながら、私はコンビニの中に入る。
特に目当てのものもないので、適当に店の中を一周する。
お菓子の陳列棚で足を止める。先程まで思ってなかったのに、なぜか口の中がお菓子を求めている。今日はそういう気分らしい。ポテトチップスを手に取り、カゴに入れる。
次に、店の窓ガラスに面した、雑誌コーナーの棚に行き、興味もない週刊誌を広げた。
週刊誌を読むふりをして、外にいるおじさまの横顔を見てしまう、この時間は罪なのだろうか。
朝にしっかりとセットしたであろう髪は、仕事の疲れと共に崩れ落ち、綺麗に形作られたであろうネクタイは、仕事から解放されるように緩ませてある。
ああ、おじさま。何を憂いていらっしゃるのですか。私でよければポテチを食べながら、何時間でもお聞きいたしますよ。
ビールをごくり。
上を向いた時に出てくる喉仏のシルエット。
肌にまとわりついている汗。
細長くもゴツゴツとした安心感のある指。
最高の三拍子。
きっとこのおじさま、職場では契約をしっかり取ってきて仕事を完璧にこなすのはもちろん、後輩の面倒見も良いパーフェクトおじさまである。知らんけど。
そんなパーフェクトおじさまが、この時、この瞬間、携帯を見て今の世の中を憂い、疲れをアルコールで浄化させる。これ!この人間臭さとギャップがたまらん!!
この時間を噛み締め擦り潰しながら、私は週刊誌をそっと棚に置く。どのような内容の週刊誌だったかはもう覚えていない。
こうして私はいつものように会計を済ませ、コンビニを出た。
おじさまはまだ同じ場所で、ビール片手に携帯を見ている。
お仕事お疲れ様です。
心の中でおじさまに深々と頭を下げて、今日も私は自宅に帰るのだった。
れんこんです。
全然投稿できていなかったのですが、最近また始めました。
今のところ最終的な目標は脚本家ですが、小説などさまざまな形で自分を表現できればと思い、自分なりにこれからも投稿する予定です。
よければ過去作品も見てください!
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