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【号泣】久々に『容疑者Xの献身』を観た。

――守り切れなかった絶望と、同じ色になれた希望。相異なる2つの感情がせめぎ合ったことで、石神は最後に泣き叫んだ。僕はそんな風に考えました。



人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「久々に『容疑者Xの献身』を観た」というテーマで話していこうと思います。

◆『容疑者Xの献身』で泣いた

今日、僕は友人と映画『沈黙のパレード』を観にいってきます。以前、本で読んだことはありますが、ガリレオシリーズ最新映画ということで、やっぱり観たくなってしまいました。

その予習のために、昨夜、primevideoで『容疑者Xの献身』を視聴したんです。昔、鑑賞したことがありましたが、気持ちを高める上でもやっぱり見ておくに越したことはないなと思ったのです。前夜祭って大事ですよね(笑)


さて、まずはざっとあらすじを共有しておきますね。

高校の数学教師である石神哲哉は数学にしか興味のない天才で、壁の薄いアパートに住んでいます。隣の部屋には花岡靖子とその娘、美里が住んでいました。靖子はお弁当屋さんを経営していました。石神はそこに足繁く通うほど、彼女に惹かれていました。

ある夜、靖子の元夫が彼女の部屋に訪ねてきました。復縁を迫られたのです。心無い言葉を浴びせられ、元夫の帰り際、美里がスノードームを凶器にして彼の後頭部を殴りました。しかし、元夫は気を失うこともなく、それを折に激高してしまったのです。

隣の部屋で一部始終を聴いていた石神は、やがて音が途切れ、彼女たちが元夫を殺したんだと悟りました。石神は隣人を訪ねます。靖子と美里を救うためです。

そこから、石神の靖子たちに献身する日々が続いていきました。警察の目をもごまかし、事は順調に運んでいるように思われましたが、ある一人の人物との再会を機に全てが狂ってしまったのです。

その人物とは、大学の同期である物理学者、湯川学です。

天才2人の頭脳戦、靖子たちを守るためのトリック、石神の献身、愛の存在……。様々なことを考えさせられる感動作です。


さて、タイトルにもありますが、僕は号泣しました。

映画で泣くというのもあまりないことですが、本当に心を動かされました。今日はその心の軌跡を自ら辿っていく回です。


ちなみにですが、これ以降、物語の結末に触れますが、ご容赦くださいね。


◆隣同士は同じ色になれない

僕が号泣したのは大きく分けて2回のタイミングです。その2つについて、分析していこうと思います。

まずは、石神が拘置所の中で靖子たちとの日々を回想しているシーンです。彼女を守るために、自ら出頭したのです。その夜石神は、狭い布団に横たわりながら、殺風景な天井に図形を描いていきました。

頭の中で、四色問題を解いていたのです。

四色問題とは、「地図に色を塗っていくとき、4色あれば隣り合う者同士が同じ色にならずに塗ることができることを証明する問題」です。

日本を例に出せば、東京都を赤、埼玉県を青、千葉県を緑、神奈川県を緑、山梨県は緑、茨城県は赤……というように、隣接する県同士は全て違う色に塗れるということです。

石神は天井に地図を描き、四色問題に思いを馳せていたのです。そして、そのときに「隣同士は同じ色になれない」という言葉を心の中で呟きました。

僕はそれを聴いたとき、涙が止まりませんでした。

この台詞は、石神が「自分と靖子は同じ色になれない」ということを再認識したことからくるものです。アパートの隣人同士、生活音が聞こえるほど近くにいるのに、石神は靖子と一緒になれることはなれない。それを表現した一言なのです。

「失恋して悲しい」とか、「恋は儚い」とか、そんな簡単な言葉ではありません。四色問題を引き合いに出して、報われない恋に対する絶望を静かに表現したのです。

ストレートな言葉ではないからこそ響くものがあったし、論理的に証明された四色問題が、非論理的な愛の輪郭をなぞるという形で伏線回収されたことに、僕は心を強く揺さぶられたのです。


◆最後の慟哭に込められた感情

僕が2回目に号泣した場所は、石神が最後に慟哭するシーンです。

送還される前に、靖子と再会を果たし、彼女から「私も一緒に償います」と涙ながらに訴えられます。その言葉を聴いて、石神は崩れ落ちるように涙しました。

石神が涙を見せたのはこのときだけです。何故、彼は泣いたのでしょうか。最後の慟哭にはどんな感情があったのでしょうか。


僕はここには2つの思いがせめぎ合っていると考えました。

1つは、自分の献身が成功しなかったことへの絶望です。

石神は靖子たちを守るために、自慢の頭脳を使って警察の目を騙しました。守りきるために、石神は出頭し、自分が犯人であることを警察に打ち明けました。全てが完璧にいくと思われた計画が、靖子の言葉によって台無しになってしまう。

このままいけば、靖子たちを守り切ることができたのに、どうして靖子は「私も一緒に償います」と口にしたのか。それも警察官のいる前で。

石神が慟哭する前に呟いた「どうして……」には、そんな絶望と疑問が込められてたいのではないでしょうか。


しかし、それだけではありません。石神の涙にはもう1つの思いが宿っています。同じ色になれたことへの希望です。

さっきの四色問題の回想にあったように、石神は隣人の靖子とは同じ色になれないとあきらめていました。だからこそ、自分のできる形で彼女を守ろうとしたのです。

しかし、最後に「私も一緒に償います」と言われ、同じ色になれたと感じたのではないでしょうか。「一緒に」という言葉に、衝撃的な感動を覚えたのではないでしょうか。


守り切れなかった絶望と、同じ色になれた希望。

相異なる2つの感情がせめぎ合ったことで、石神は最後に泣き叫んだ。僕はそんな風に考えました。


自分の傾倒してきた四色問題では「隣同士は同じ色になれない」と証明されていたけど、靖子はそれをひっくり返してきました。論理的に生きてきて、論理的に靖子たちを守ろうとした石神が、最後に非論理的な愛という存在に狂わされ、慟哭する。

この物語に、僕は胸を打たれ、込み上げる思いが涙に変わりました。

改めて、圧倒的な物語だなと思いました。良い作品を鑑賞すると、自分の創作意欲も高まりますね。頑張ろうと思えました。


最後まで読んで下さりありがとうございました。

20221012







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