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22歳と本

――22歳という1年を通して、「Biblio」というテーマのもと、本にまつわる発信と活動をしてきて、辿り着いた場所は「FAVORITE!!」でした。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

毎月最終日には誰の目を気にすることなく、自分の過去についてつらつらと綴っています。今月もその日が来たので、記憶の旅にでかけます。

また、今日という日を迎え、23歳という新しい未来を迎えたこともあるので、今ぼんやり考えているこれからのことも語っていきますね。

今回は「22歳と本」というテーマで話していこうと思います。



📚22歳と本

僕は20歳のときから年齢ごとにテーマを設けることにしたんです。20歳のときは「20歳」、21歳のときは「Message」、22歳のときは「Biblio」といった具合に。

おかげでその1年で何を重視すべきなのか、どこに収束していけばいいのかがはっきりしているので、より豊かな1年を過ごすことができていると振り返っています。

21歳が終わる頃、僕が22歳のテーマに「Biblio」を選んだのは、全国大学ビブリオバトルに挑戦する未来を控えていたからです。

ビブリオバトルは自分のお気に入りの本を5分間で紹介する書評合戦。リスナーは発表を聞いていちばん読みたいと思った本に票を入れます。最も多くの票を集めた本がチャンプ本に輝くというわけです。

僕は高校生のときから公式戦に参加していました。恩師の鹿目先生のアドバイスもあり、高2の時に東京都代表として初めて全国の舞台へ。あのときビブリオバトルに魅力に取りつかれたんだと思います。大学進学後も、再び同じ舞台に戻り、全国制覇の夢を叶えたいと思うようになったのです。

大学2年、大学3年と挑戦しましたが、結果は振るわず。全国制覇の夢までは遠い道でした。学生としてビブリオバトルに参加できる最後の年、是が非でも夢を叶えるために、僕は22歳のテーマに「Biblio」を掲げたのです。

茨城大学大会では、高野史緒さんの最新作『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』という青春SFを相棒にしました。茨城を舞台にした物語だし、高野さんは茨城大学出身だし、物語の途中に茨城大学の学生が登場するし、大学生が共感しやすい内容だと思ったからです。

無事に優勝し、次は茨城決選へ。大学大会とは本を変えて、似鳥鶏さんの『小説の小説』という実験的エンターテインメント小説集を相棒にしました。全ての文章を既存の文学作品の文章から引用してつくられた『無小説』など、とにかく実験的な小説が収録されているんです。本のカバー表紙の裏にも小説がある奇想天外のつくりにもなっているので、興味を惹くことができると確信しました。

茨城決選も無事に優勝し、自身3度目となる全国大会に出場することができました。全国優勝の夢までもう1歩です。

最後に紹介したのは、『Good Luck』という外国の本。僕が2023年で出逢ったなかでいちばん心を掴まれた、お気に入りの本でした。飛び道具のような本ではなく、本当の自分がおすすめしたい大好きな本を紹介しにいったんです。

結果は、準決勝敗退。

全国制覇の夢は潰えました。

7年追いかけてきた夢に区切りをつけなければいけないときが来てしまったことをすごく悔いたし、もっと何かできたんじゃないかと自責の念に駆られました。

しかし、僕のなかでいちばん悲しかったのは、自分の本当にお気に入りの本を紹介したというのに、それが報われなかったという事実です。

正直、『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』も『小説の小説』も、飛び道具のような本ではあるので、紹介しやすいし、勝ちやすい本なんですよね。一方で、『Good Luck』はそれには劣ります。分かりやすく惹かれる設定がなかったんです。

自分のお気に入りの本を紹介したのに……やっぱり飛び道具のような本を紹介した方が良かったのか……と頭を抱えたものです。そんな迷路に彷徨っていた僕に光をくれたのは、「FAVORITE!!」という本のイベントでした。


📚「FAVORITE!!」という答え

22歳になった頃から、僕は本の発信や読書会への参加、本のイベントの企画運営を始めました。常日頃本を感じられる環境をつくっていった方が、ビブリオバトルのモチベーションにつながるし、場数を踏むことになるので慣れていくと考えたのです。

なかでも、「FAVORITE!!―お気に入りの本を紹介する会―」という本のイベントには精力的でした。「The FAVORITE」というクラフトビールバー等で開いていました。

当初はビブリオバトルを身近に感じてもらうために、それに近い進行の読書会を運営するつもりでした。だから、5分で紹介する、複数冊ではなく基本的に1冊を紹介する、といったきまりをつくったんです。

ただ、何回かイベントを運営していくうちに、ビブリオバトルにあたるディスカッションタイムが長くなっていったんですよね。感想を伝えたり、質問をしたり、対話が生まれたり、本や本の紹介をきっかけに交流が生まれ続けていったんです。

それに気付いたとき、僕が本当に用があるのは、ビブリオバトルではなく、「FAVORITE!!」のような本の場なのかもしれないと考えるようになったのです。

ビブリオバトルの夢を閉じてから半年以上が経った昨日、第6回「FAVORITE!!―お気に入りの本を紹介する会―」を開催しました。参加者は全部で10人。それに加えて、スタッフが3人くらいいました。

今回は、スピーカーの方2人に本を紹介してもらって、そして、スピーカーとリスナーとのディスカッションを僕が進行していくような形を3ブロック分繰り返していきました。つまり、スピーカーは6人ということです。

発表時間はいつもと同じように約5分と決めて、その後のディスカッションを今まで以上に長めに取りました。そして、より双方向的にしました。スピーカー同士、スピーカーと僕、お客さん……言葉が消えて沈黙が舞い降りる余地はありませんでした。

各ブロックの間には5分くらいの休憩を入れたんですが、その時間には紹介された本を手に取ってみたり、他の人と話してみたり、初めましての人とでも仲良く交流したりしている景色が見られました。

最後のブロックは、ビブリオバトラーの林君と僕の本紹介。お互いビブリオバトルに傾倒している同士ですから、めちゃくちゃ意気投合してディスカッションも盛り上がりました。

イベント後、林君にイベントの感想を聴く機会があったんですが、「ビブリオバトルに対するジレンマを解消してくれた」と話してくれました。勝敗なんか気にもせず、自分の本当にお気に入りの本を紹介する時間、空間を追求することの意義を感じてくれたようです。

「これを今度ビブリオバトラー集めてやりたいね」

そんな夢も交わしました。


📚23歳のテーマは……

22歳という1年を通して、「Biblio」というテーマのもと、本にまつわる発信と活動をしてきて、辿り着いた場所は「FAVORITE!!」でした。このストーリーが、僕のなかで最大の収穫。また、タイミングをみて、「FAVORITE!!」は開催したいな。心からそう思っています。

ただ、昨日で22歳は終わり。「Biblio」という1年は閉幕です。23歳になった今日からはまた新しい旗を空に突き上げて、新たな1年を駆け抜けていきます。

23歳のテーマは……「Guesthouse」です。

冒頭の自己紹介でも触れていますが、僕は4月から茨城県水戸市上水戸にある木の家ゲストハウスのマネージャーとして仕事をしています。少なくとも、来年の3月までは確実にゲストハウスの仕事をしてるだろうし、今後自分も場所をつくっていきたいという思いもあるので、23歳のテーマは「Guesthouse」に決めました。

明日からはゲストハウスにまつわる発信や活動をしていきたいと思います。いつか本のあるゲストハウスをつくってみたいな。そんな夢を秘かに、しかし確かに抱きながら、23歳という1年を物語っていきます。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240630 横山黎

「Guesthouse」


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