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最後にタイトルに戻ってこれるように。

――入り口に入るときと出口を出るときとで、そのコンテンツのタイトルを再定義することが、読者の満足度を高めることにつながってくるのではないか、という話でした。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

最近は音声配信も始めました。毎週金曜日22:00から僕のお気に入りの本を紹介するライブ「FAVORITE!!」を開催しています。興味を持たれた方は是非遊びに来てください。

今回は「最後にタイトルに戻ってこれるように。」というテーマで話していこうと思います。



📚名前をつけるということ

僕は書く人だし、最近はイベントをつくる人だったりするから、何かに名前を与える瞬間が少なくないんですよね。本の名前もそうだし、イベントの名前もそう。名前をつけることは、その対象に命を吹き込む行為。一度つけたら、なかなか変えたくない性分なので、毎度毎度慎重になっています。

最近、「うわあ、やられた」というタイトルに出逢いました。



先日、僕の敬愛するアーティスト、コブクロのライブに行ってきたんです。ライブ名は「ENVELOP」。包み込むという意味です。最新シングル「エンベロープ」と引っ提げてのツアーだったので、ツアー名の由来はその曲にあります。

ただ、それだけじゃない。ツアー名にはもうひとつの意味があったことが、ライブ終盤に解き明かされました。

ライブの最後を彩ったのは、原点にして頂点、コブクロの代表曲「桜」です。ふたりが結成したきっかけの曲です。ライブの最後に、みんなで「桜」の大合唱をして締めくくるという演出だったのです。

コロナ禍が明け、やっとライブでの声出しが解禁されたツアーでした。去年までは歌いたくても歌えない。盛り上がりたくても盛り上がり切れない状態が続いていました。今年のツアーでやっと声を出すことができるようになったんです。そんなツアーだからこそ、最後の曲は、コブクロファンに限らず、コブクロを知っている人なら誰もが口ずさめる歌、桜だったのです。

つまり、「ENVELOP」というツアー名には、「みんなの歌声に包まれる」という意味も込められていたんです。最後の最後で伏線回収されたので、伏線フェチの僕はカタルシスに溺れました。
#伏線フェチって何

もちろん「桜」の大合唱も最高でした。やっとこの歌をみんなで歌えるんだという安心感にも包まれました。コロナ時代には辛いことも悲しいこともいろいろあったけれど、今この歌をみんなと歌えている幸せを考えれば、取るに足らないことだなと思いました。


さて、話を戻しますね。

言いたいことはなんとなく伝わったと思います。コンテンツのタイトルがもう一度再定義される展開が、僕はとっても好きなんです。


📚タイトル再定義という伏線回収

タイトルが再定義されるとは言い換えれば、コンテンツを楽しむ人に気付きを与えるということです。今までにはない視点で物を見る機会、物の本質を悟る機会を与えるということです。

さっきの「ENVELOP」ツアーでいえば、「最新曲の名前」が第一段階にあり、次にその曲の歌詞や込められた思いから「包み込む」「個性を尊重する」といった意味が第二段階として考えられます。

ツアー名が「ENVELOP」になった時点で、このあたりまではみんな予想できるわけですが、さっきもいったようにもうひとつ先の段階がありました。「みんなの歌声で包み込む」という意味があったのです。

それに気付いたとき、コンテンツの受け手は、コンテンツの名前に納得し、意味を再定義し、心が動くのです。

僕はそれを広義の意味で「伏線回収」と呼んでいるんですが、物も情報も何もかもが溢れている時代、何かを生み出す人(作家)に求めらえているのは、今あるものをどう再定義するかだと思うんですよね。

誰もが知っているものをどう捉え直すか。自分はどんな視点で、どんな角度から、どう見つめたのか。その先にある姿に価値があると信じているんです。


📚最後にタイトルに……

その姿勢があるので、僕自身そんなコンテンツづくりを目指しています。

たとえば、僕は去年、初書籍『Message』を出版しました。そんなタイトル、世界を探せばいくらでもあります。『メッセージ』も『MESSAGE』もたくさんある。第一段階の意味では差別化が図られていないんです。だから、一見のインパクトはそこまでないんです。



しかし、第二段階としての意味は「ダイイングメッセージ」で、そこには個性が生まれているんですよね。ダイイングメッセージという意味で『Message』という単語を使うコンテンツは見当たりませんから。

また、同時にダイイングメッセージは犯人の名前を書く文化があるけれど、人生最後なんだから本当に伝えたいことを伝えたい人に伝えるべきだよね、というダイイングメッセージの再定義も行っているんです。

第二段階の意味で、コンテンツの受け手に気付きを与えることができているので、本としては申し分ありません。

僕はさらにそこに意味を重ねていきました。現実世界で、僕が動いて、意味を加えていったんです。

今でも機会があれば行っている小説『Message』の手売りは、僕から読者へのメッセージを手渡すという意味が込められています。詳しくはいえませんが、とっときのメッセージを最後の一行に託しているんです。



また、今年の5月に「BOOK TALK LIVE “Message”」というイベントを開催しました。小説『Message』にまつわるエピソードを物語るトークイベントです。そこでも、「僕が伝えたいことを伝えにいく」というコンセプトのもと、聴いてくれる人に全力で物語りました。

「Message」という単語に、いくつもの意味を重ねていくことで、唯一無二の個性をつくっていったというわけです。



ちょっと話がテーマのその先にまで及んでしまいましたが、とにかく入り口に入るときと出口を出るときとで、そのコンテンツのタイトルを再定義することが、読者の満足度を高めることにつながってくるのではないか、という話でした。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

20230910 横山黎


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