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間違えて俯いても僕を照らすライトがある

――自分の目の前が真っ暗なとき、実はそれが自分の影だったりします。振り返れば、そこには光がある。明るい未来の在り処があるんです。


人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「間違えて俯いても僕を照らすライトがある」というテーマで話していこうと思います。


📚スポットライト

5月21日(日)に開催される文学フリマ東京36に、僕は出品者として参加します。最新作『夜明けのうた』といううた集を販売する予定です。

詩のような、歌詞のような、うた。中学時代から400以上の作品を綴ってきた僕が、20作品を厳選して1冊の本に仕上げました。1日の終わりに1作品をじっくり味わう読み方がおすすめです。眠る前のあなたに小さな革命を起こしたい。ステキな夜明けを迎えてほしい。そんな願いが込められています。

Amazonで購入できますが、文学フリマ価格で少しお安くご案内します。是非、【N-38】のブースにお越しください!


文学フリマまで少し時間があるので、うた集に収録してる作品たちを毎日紹介していこうかなと思います。そのうたにまつわるエピソードを物語っていきますね。

今回取り上げるのは、「スポットライト」という作品です。

中学時代、僕は演劇部に所属していたんですが、僕のことを慕ってくれた演劇部の後輩に贈ったうたです。



📚大間違いしたセリフ

小学6年生頃から演劇に興味を持ち始めた僕は、中学生になって演劇部に入部しました。その頃から小説を書き始めていたから脚本を書きたかったからでもあるけれど、単純に役者として舞台の上で演じてみたかったからという理由もありました。

テレビドラマを観るようになり、自分でも演じてみたいという気持ちが芽生えたんでしょうね。舞台をつくるという創作に惹かれたんです。


なかでも印象に残っているのは、中学3年生のときの文化祭公演のとき。僕の親友のオリジナル脚本『高橋が居ない』という演目でのことです。

高橋というスーパーマンみたいな高校生が突然いなくなってしまいました。そして、彼のまわりにいる人物の関係の変化や心情の変化を描いていく青春群像劇です。朝井リョウさんのデビュー作『桐島、部活やめるってよ』にインスピレーションを受けた作品だそうです。

で、僕はいなくなった高橋のバスケ友達、大地という高校生を演じました。大地はそこらへんにいる普通の男子高校生なんですが、実はダークサイドがあって、ふとした瞬間に毒づく嫌なやつなんです。

それが露見するのが、えりかという女子高生とのワンシーン。彼女は高橋のことが好きな女の子。しかし、高橋は別のカノンという女子のことが好きなので、思いは届きません。そして、高橋はカノンが好きってことをえりかは知っているという切ない状況です。

僕の演じた大地も、その関係の全体図を知っていて、そのシーンでは、傷心のえりかの心の傷に毒をぬりつけるのです。「あいつ(高橋)はカノンのことが好きだったよな!」という台詞を言うんです。最低な男です(笑)

言っていることは最低ですが、僕からしたらおいしいセリフです。僕の見せ場はそこですから、この台詞をいうときこそ、一番輝く瞬間なのです。


で、僕はその大事な台詞を言い間違えました。

「あいつ(高橋)はカノンのことが好きだったよな!」という台詞を、「あいつは高橋のことが好きだったよな!」に変えてしまった。

「?」ですよね。

僕が言い間違えたせいで、高橋は自分のことが大好きなナルシストになってしまったというわけです。セリフを口にしてから1秒後、僕は自分の失敗に気付くわけですが、水を打ったように静かになっているので、後戻りはできません。

体温が消えたとき、僕の視線の先に居たのは、ひとりの後輩でした。僕のことを慕ってくれていた後輩で、彼女は演出家として客席の片隅で見守っていたんです。彼女の顔を見て、その表情から何かメッセージを受け取った気がしました。

「あきらめないで」

そんな言葉を受け取った気がしたんです。


その後、僕は演技を止めることもなく、何事もなかったかのようにシーンを進めました。とりあえずやりきることを目指したんです。

終演後、真っ先に僕のところに駆けつけてくれたのは例の後輩で、彼女に慰められました。そして、集合写真のとき、並んで撮った記憶があります。

そのときの経験を忘れたくないと思い、言葉にしたのが、この「スポットライト」だったんです。


📚僕を照らすライトがある

このうたにまつわる物語を全部語ろうとすると長くなっちゃうから、また別の機会に話しますね。最近の僕の活動とからめながら、ちょっとずつ話をまとめていこうと思います。


僕は一昨日、「BOOK TALK LIVE “Message”」というライブイベントを開催したんです。僕の初書籍『Message』にまつわるエピソードを物語っていきました。感動したという声をたくさんもらいました。なかには涙されている方もいらっしゃって、それほど心を動かす話ができたことを誇らしく思います。

舞台の上に立って、何かを表現する。やっていることは中学時代と変わっていないことに気付かされます。もう一度演劇部の頃に戻ってきたような、懐かしい思いを抱えました。

イベントの終盤、僕は「失敗を捉え直す意義」について語りました。どんな失敗をしても、どんな間違いを犯しても、その先で捉え直すことでいくらでも正解に変えることができる。プラスの記憶に変えることができるんですよね。

文化祭公演のとき、台詞を言い間違えたけれど、それがきっかけで後輩との関係性もぐっと縮まったし、送別会のときの手紙に「れい先輩がいたから続けてこれました」というありがたい言葉をもらったし、未来の果て、もう一度、舞台に戻ることができました。

間違えて俯いた僕のことを照らしてくれる存在がいたから、こっちに進めばいいんだと信じることができたし、ひどく落ち込むこともなかった。もう少し頑張ってみよう。もう一度信じてみよう。そう思えたんです。

自分の目の前が真っ暗なとき、実はそれが自分の影だったりします。振り返れば、そこには光がある。明るい未来の在り処があるんです。

僕自身、この先思い悩んで俯くことがあるでしょう。そのときは顔を上げて、光り輝いた人に歩み寄って、明るい方へ身を投げようと思います。


みなさんにとってのスポットライトは誰ですか? 是非、コメント欄で教えてください。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20230504 横山黎



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