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最新グローバルレポートから見る「リコマース」 -サステナビリティと経済合理性の実現-

こんにちは!リコマース総合研究所(リコマース総研)、主席研究員のakaneです。

昨年6月に取り上げた米国ThredUp社の「リセールレポート」について、最新版「リセールレポート2024」が発表されたので、解説していきたいと思います!


サマリー

  • グローバルリユース市場は2028年までに3,500億ドルに

    • 2025年までには、グローバルアパレル市場の10%がリユース品で構成されると予想されています。

    • 米国ではオンラインリセール市場が拡大傾向にあり、2023年は昨年比23%成長しました。また、2025年までには、オンラインリセール市場がすべてのリセール品支出の半分を占める見通しになります。

  • 2023年、消費者の52%がリユースアパレルを購入

    • 特に、Z世代およびミレニアル世代の65%がリユースアパレルを購入しています。

    • 過去12ヶ月間に購入されたアパレルアイテムのうち、5つに2つはリユース品、かつ消費者はアパレル予算のほぼ半分をリユース品に費やしました。

    • 購入チャネルTop3は、1位「SNS」、2位「ブランドから直接購入」、3位「管理されたマーケットプレイスからの購入」

    • 半数以上の人がブランドから直接購入する理由として「マーケットプレイスよりもブランドを信頼している」と回答しました。

  • ブランドによる自社リセール市場は2023年も勢いを持続し、年間31%成長

    • 2023年ThredUpにて自社リセールを行っているブランドは163にのぼり、前年から39ブランド増加しました。

    • 現在自社リセールを提供していないリテール企業幹部の74%は、将来リセールを検討しているか計画していると回答しました(2022年より+5pt)。

    • 自社リセールがもたらした利益Top3は、1位「サステナビリティに関する目標を推進できている(87%)」、2位「収益を生み出している(80%)」、3位「顧客獲得につながる(67%)」

    • 自社リセールの最大の課題は「リセール品の材料になる商品を、購買者から回収すること」ということがわかりました。

  • 政府の関与がファッション業界の持続可能な未来への移行を加速

    • 有権者は、循環経済を支持する候補者を支持しています。65%のリテール企業幹部と43%の消費者が、ファッション産業の環境への影響を軽減するために、政府の対応は不十分と考えており、さらに、40%の消費者が持続可能なファッションを支持する候補者に投票する可能性が高いと述べています。

    • また、58%のリテール企業の幹部が、政府の助成金の対象となれば、持続可能なビジネスや材料革新に投資すると述べ、52%のリテール企業幹部は、政府が提供する金融的なインセンティブがあれば、自社リセールのような循環型ビジネスモデルを採用すると述べています。

リユース市場拡大:グローバルリユース市場は2028年までに3,500億ドルに

2028年までに、グローバルのリユース市場は3,500億ドルに達し、これはグローバルアパレル市場全体の成長率を3倍超える見通しです。また、2025年までには、グローバルアパレル市場の10%がリユース品で構成されると予想されています。

米国で成長著しいオンラインリユースショッピング、2025年までにリセール市場の半分はオンラインに

また、2028年までに米国のリユースアパレル市場は年平均で11%成長し、730億ドル(約11兆円)に達する見込みです。成長を続けるリセール市場の注目すべきモメンタムとして以下のようなことがあげられます。

  • 2023年、リセール市場は広範な小売り衣料品セクターよりも15倍速く成長しました

  • 2028年までにまでにリセール市場は2023年の倍以上になり、広範な小売り衣料品セクターよりも6.4倍速く成長し、年間複合成長率(CAGR)が17%を記録する見込みです。

  • また、次の10年間でリセール市場の市場シェアは倍以上になる見込みであり、2033年までには、リセール市場が他の流通チャネルよりも最も大きなシェアの増加を記録すると予想されています。

特にオンラインリセール市場は拡大傾向にあり、2023年には昨年比23%成長しました。また、2025年までには、オンラインリセール市場がすべてのリセール品支出の半分を占める見通しです。さらに、次の5年間で、オンラインリセール市場は年平均成長率(CAGR)17%以上で拡大し、2028年には400億ドル(約6兆円)に達する見込みです。

消費者はよりリユースアパレルを選ぶ時代に

2023年には、消費者の52%がリユースアパレルを購入しました。特に、Z世代およびミレニアル世代の消費者の65%がリユースアパレルを購入しています。また、過去12ヶ月間に購入されたアパレルアイテムのうち、5つに2つはリユース品でした。過去12ヶ月間の平均では、消費者はアパレル予算のほぼ半分をリユース品に費やしました。2023年にリユースアパレルを購入した消費者の63%がオンラインで購入し、その中でもZ世代およびミレニアル世代では71%にのぼります。

ブランドから直接リユース品を購入する消費者も、その理由は「信頼」

リユースアパレルの購入チャネルTop3は、1位「SNS」、2位「ブランドから直接購入」、3位「管理されたマーケットプレイスからの購入」という結果になりました。ブランドから直接購入している理由として、半数以上の人がマーケットプレイスよりもブランドを信頼していると回答しています。また、ブランドから直接購入する人の44%が、アイテムを横に並べて比較しやすいと回答しています。41%の人が、特定のブランドがキュレートした商品を購入することを好むと述べています。

ブランドによる自社リセール市場は2023年も勢いを持続し、年間31%成長

2023年ThredUpにて自社リセールを行っているブランドは163にのぼり、前年から39ブランド増加しました。また、現在自社リセールを提供していないリテール企業幹部の74%は、将来リセールを検討しているか計画しており、これは2022年から5ポイント増加しました。

自社リセールによる収益アップとサステナビリティゴールの推進

自社リセールを開始してわかった利益Top3は、1位「サステナビリティに関する目標を推進できている(87%)」、2位「収益を生み出している(80%)」、3位「顧客獲得につながる(67%)」という結果になりました。さらに、回答者の67%が、自社リセールは企業にとって5年以内に意味のある収益源を生み出すと述べています。そのような中で、ブランドはリセール品の在庫を十分に確保することが最大の課題と回答しています。

政府の関与がファッション業界の持続可能な未来への移行を加速

有権者は、循環経済を支持する候補者を支持しています。65%のリテール企業幹部と43%の消費者が、ファッション産業の環境への影響を軽減するために、政府の対応は不十分と考えています。また、42%の消費者が、持続可能なファッションを促進するために政府が立法措置を取るべきだと考えています。44%の消費者が循環型テキスタイル政策を無党派の問題と見なしています。さらに、40%の消費者が持続可能なファッションを支持する候補者に投票する可能性が高いと述べています。

政府が起こすべき具体的なアクション

65%の消費者が、リユースアパレルの売上税を廃止すべきだと考えています。また、50%の消費者と59%のZ世代およびミレニアル世代の人々が、売上税がなければより多くのリユースアパレルを購入すると述べています。58%のリテール企業幹部が、政府の助成金の対象となれば、持続可能なビジネスや材料革新に投資すると述べています。52%のリテール企業幹部は、政府が提供する金融的なインセンティブがあれば、自社リセールのような循環型ビジネスモデルを採用すると述べています。

おわりに

グローバルでリユース市場が拡大する中、消費者(特にZ世代やミレニアル世代)ではリユース品の購入が一般的になりつつあります。購入チャネルも多岐にわたり、「メルカリ」のような個人間取引やオフラインのリユースショップだけではなく、ブランドから直接リユース品を購入する人が2割いることが本調査でわかりました。アパレルメーカーもこうした消費者の行動変化やサステナビリティの推進から、自社のリセールに取り組む企業が増えてきました。自社製品の回収に関する取り組みも、以前はCSR活動にとどまっていた企業が多かったように思いますが、本調査の結果から自社リセールはサステナビリティの目標達成だけでなく、収益の向上や新たな顧客獲得など、経済的な合理性も見出すことができることがわかりました。一方で、経済的合理性を確保するには、一定量の商品回収が必要です。すでに消費者から不要になったアパレルを持っている二次流通のプラットフォーマーや事業者と、一次流通が連携することで、共に持続可能な新しいビジネスモデル(リコマース)を推進できる可能性があるのではないでしょうか。


▼主席研究員

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