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長編小説、超短編小説、実験小説、詩、、朗読ライヴの元ネタ、文体の研究などなど。多すぎてどれ読んでいいかわからない時は「【おすすめ】創作編」というマガジンをどうぞ。
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2019年2月の記事一覧

【即興実験小説】まじでこの世の全ての彼女持ちに教えてあげたいんだが(15分・722字)

【即興実験小説】まじでこの世の全ての彼女持ちに教えてあげたいんだが(15分・722字)

お題:彼女の料理  必須要素: 十字 制限時間:15分

いつも彼女の料理を「うまいうまい」と連呼しながら食ってたら、
「うまい以外言われない。悲しい。もっと何かないの?」
と言われた。
「めっちゃうまい」
「7字」
「超スーパーうまい」
「8字」
「ミラクルめちゃうま」
「9字。せめて10字以上で何か言ってよ」
「超スーパーミラクルめちゃうまい」
「……うん……」
彼女は台所でお茶を入れるふりを

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【超短編】もうだれも車を取りに来ることはない駐車場

【超短編】もうだれも車を取りに来ることはない駐車場

月極駐車場で車たちはおとなしくたたずんでいた。

どの車もうだれも取りに来ることはない。何日も、何か月も、もうずっとそうだった。

車というのは移動しないと存在価値がない。
だから、駐車場でずっと待つということは車にとっては緩慢に死んでいくのと同じだ。
はじめのうちは、主が現れないことをどの車も異変に感じ、そわそわしていた。
しかしもう、どの車も主との再会を諦め、眠るように、自らが自らの墓標となる

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【超短編】みてはいけないものでいっぱいの美術館

【超短編】みてはいけないものでいっぱいの美術館

みてはいけないものでいっぱいの美術館が話題になっている。

美術館に並ぶ彫刻のうち、いくつもに鉄の覆いがほどこされ、まるで工事中の建設物のように、警備員が立ちふさがり、何が隠れているかも全く分からないのだという。

「一瞬でも見たら目に毒が入る、っていう噂だけど」
「目だけから入る毒なんて初めて聞いた。普通は触るとかにおいをかぐとか、瘴気を吸い込むとかでしょ。近くに行っても問題ないのに、直接見たら

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【即興実験小説】いびきと生き死に(息してる?)

【即興実験小説】いびきと生き死に(息してる?)

妻は夫のいびきに辟易しており、もはや同室で寝るのは不可能というほど困っていた。枕を変えたり、横向きに寝かせてみてもやはり夜中に何度も起こされ、そのたびに失望を覚え、愛情は冷え切り、むしろ殺意すら感じた。
起きている夫に相談しても、寝ているときだから分からない、そんなもの我慢しろと全く取り合ってくれない。
ある夜、また寝ている夫に起こされ、ついにその首に手をかけそうになったところで夫が予言めいたこと

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