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喜悦旅游〜旅の私小説

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わたしたちの旅を、私小説として記録しています。オリジナルの記事は、Raymmaサイト(https://www.raymma-0.com/blog)にて連載しております。noteで… もっと読む
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「18年、交差する時空」喜悦旅游#22  - 旅の合間に。

「18年、交差する時空」喜悦旅游#22 - 旅の合間に。

 私の街で桜が開花した朝、盛田さんからメールが届いた。

 「丸18年分を1週間で片付けたよ」

 盛田さんは、北鎌倉で営んでいた美容室「盛田」を閉めた。絶え間なく盛業であり、予約の取れない繁盛店だった。繁盛店の後にお店が入ると、とても縁起がいいと聞く。同店の跡地に開業される方も決まっているというが、幸先の良いスタートを切ることができるだろう。

 しかし、普通こんなことが起こり得るだろうか。全て

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「旅の途中、ふと立ち止まる」喜悦旅游#21 宮古島

「旅の途中、ふと立ち止まる」喜悦旅游#21 宮古島

 宮古島の海は、なんとも形容しがたい青だ。

 この青が呼んだのか、わたしたちは半年の間に3回も、ここに来てしまった。

 いつでも宮古島の旅は、突然決まる。それでいて必然としか言いようのないできごとが毎回あり、その後のわたしたちの展開は、大きく変わっていく。

 「運命を切り替えるような磁場が、この島にはあるのかも知れないな」

 来間島の険しい石段を見下ろして、わたしは、ひとりつぶやいた。

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「知らない街に、夜ついた」喜悦旅游#20 和歌山のラーメン

「知らない街に、夜ついた」喜悦旅游#20 和歌山のラーメン

 わたしと盛田さんは疲れ切っていた。

 その日は早朝に神戸を出発し、長距離運転で仕事先に向かった。幸い天気には恵まれ、すべては順調に進んだものの、気がつけば日暮れ。宵闇の中、さらにここから1時間半ほど走った、見知らぬ町に向かっていく。

 仕事の進行状況によって、どこの町に泊まるのかわからないこともある。宿も何もかも決めないまま、ただひたすらに県境を走った。食事をとるタイミングも難しい日だったた

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