ハリケーンの前の静けさ【シカゴ】旅の私小説「喜悦旅游」#32
シカゴ行きの飛行機で、発酵学者小泉武夫先生の「食あれば楽あり」を読む。小泉先生は、別名「味覚人飛行物体」と呼ばれているそうで、世界中の美味しいものや食文化を追っている。その豪快な食べっぷり、旅っぷりが面白く、旅のお供に最適な本なのだ。
徒然に読んでいたら、ハッとする部分があった。旅先でうまいイカを勧められた小泉先生が、
「遠慮など自分には似合わない」と言って、イカを平らげる話。
自分の喜びと相手の好意が、素直に一致して、ありのままに受け取り、また喜びが広がる。読んでいてとても微笑ましい。
この旅を通じて、わたしにとって楽しいこと、
わたしにとって嬉しいこと、それを積極的に見つけてやっていこう!そう思った。
優れたエッセイを読むと、まるで自分への小人的なメッセージが書かれているように感じることがある。小泉先生の著書から、旅立ちに際してのエールが送られたような気がした。
読書したり、機内食を食べたり、少しうとうとしていたら、あっという間に時間は過ぎた。
8:05シカゴに着く。マイアミ行きの飛行機への乗り換え時間が少々タイトなので、急ぎ足で入国審査に向かった。
入国審査の列は混んでいたが、ほどなくしてアメリカ人専用のレーンが全ての人に開放され、列が順調に進み出した。
入国審査官に「どこに行くの」と聞かれたので、「マイアミに行きます」と伝えたら、一瞬動きが止まった。なんだろう?
審査官は気の毒な表情を浮かべてこう言った。「ハリケーンが水曜に通過するかも知れないんだよ。ビーチでのバケーションとかは、まあ難しいかもね。」そして、ポンとスタンプを押した。
審査自体は数年前に比べて驚くほどスムーズだったが、ハリケーンの情報は、少々気になる。しかし乗り継ぎ時間が結構ギリギリなので、それに囚われている場合ではない。
ターミナル間をつなぐトレインに飛び乗り?ターミナル1を目指す。シカゴ空港はとにかく広い!
お茶でも飲んで一息つきたかったが、出発ゲートには搭乗ギリギリについたのでその暇もなかった。国内線の小ぶりな飛行機に乗り換え、マイアミに向かう。およそ3時間ほどの空の旅に、再び向かった。
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