不思議な旅団|旅の私小説「喜悦旅游」#20
2024年3月某日。わたしは確定申告の作業をしていた。
これが最後の個人確定申告かと思うと、何か感慨深いものがあった。24年間一貫して行なってきた個人事業が、ひとつの区切りを迎えている。
もちろん、何事も「最後」というものは厳密にはなく、終わっていたこと、途絶えていた道が急につながることもある。実際に、引退し、旅芸人としての役割を終えたはずのわたしが、来たる4月には旅回りの拠点としていたモントリオールの舞台に立つ。確定申告に並行し、衣裳の準備、靴の準備、髪飾りの準備