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#42 熱中症の怖さを伝えたい

ここ連日35度以上の猛暑日が続いている。
毎日毎日「熱中症警戒アラート」が発令されているので、「熱中症」という言葉を目にしない日がない。

僕は一度、熱中症になったことがある。
軽度ではあったが、今でも思い出せるほどそれは苦しい経験だった。

炎天下のスーツが体を蝕む

大学時代、8月。
派遣会社の面接のために、渋谷に行っていた。
それもスーツで。

今ほど高くなかったと思うが、それでも最高気温は35度前後だった

あまりにも暑いので自然と水分補給はしていたけれど、慣れない恰好と慣れない環境、そして面接への緊張感。
補給した水分は、かなりの速度で汗となって放出されていた。

そのとき飲んでいたのはペットボトルのお茶。
当時ダイエットに身を入れていた時期で、2か月で10キロ以上の減量をしていた。
そのため、スポーツドリンクなどの甘い飲み物を禁止していたのだ。

無事に派遣登録も終わり、そのまま電車で大学へ。
駅から大学へも15分ほど歩く。
炎天下の中、スーツのまま歩くのはとてもしんどかったけれど、図書館へ行けば涼しい空間が待っている。

僕は逃げるように大学の図書館へ駆け込み、熱くなった体を冷やしていた。
さて、勉強するか!

そう思った矢先、体に異変が訪れた。

眠い、汗が止まらない、頭痛い、気持ち悪い

最初に現れたのは、強烈な眠気だった。
とにかく目を開けるのが辛いほどに眠い。
寝苦しい夜が続いたから、睡眠不足なのかもしれない。
僕は10分だけ仮眠をとるため、机に突っ伏した。

図書館は、エアコンが利いていて涼しい。少々寒いくらいだ。
そのはずなのに、額からも腕からも汗が止まらない。
あまりの汗によく眠れず、僕は目を開けて自らの腕を見た。
すると、腕の毛穴全てから玉のような汗が噴き出しているではないか。

え、なにこれ。

さらに現れたのは激しい頭痛と吐き気。
頭の中を殴られているかのように、痛い……!
胃腸から腕が出てこようとしているような心地。気持ち悪い……!
そしていよいよ目の前の光景もゆらゆらしてきた。

なんだこれは。
風邪か? 熱か? 何らかの病気にかかったのか?

なんとか仮眠をして、症状を抑えなくては。
しかし、眠れないほどに頭が痛い。気持ち悪い。

これはまずい。

僕は体をひきずって保健室へ向かった。
その間も、苦しい。
頭が割れそうなほどの頭痛と、胃腸をかき回されているような気持ち悪さ。
止まらない汗、ぼやけた視界。
歩くのも難しい中、僕はなんとか保健室へと辿り着いた。

あと一歩で救急車だった

あのときの保健室の先生の慌てようは今でも覚えている。

「ベッドに寝て! ポカリ飲んで! 保冷剤で首を冷やして!
 冷えたポカリを脇に挟んで! とにかくポカリ飲んでポカリ!」

脇に挟むのはポカリじゃなくてもいいのでは……
とぼんやりしながらも思っていたが、とにかく熱中症にはポカリがいいというのを、この経験から刷り込まれたような気がする。
先生がくれたポカリと塩飴を口に含みながら、僕は眠りに落ちた。

寝ていたのは2時間くらいだろうか。
汗、吐き気はほぼ収まり、頭痛もずきずきする程度になっていた。

スーツで面接に行っていたこと、お茶を飲んでいたことなどを話すと、先生はこう話してくれた。

「この炎天下でスーツじゃ熱中症になるよ。お茶もいいけど塩分も補給しないとね、汗で塩分が出ちゃうから。
 症状から見るに、あと少し遅かったら救急車を呼ぶことになってたよ」

今でこそ熱中症対策にはこまめな水分と塩分補給が必要というのは常識となっているけれど、当時の僕は無知で水を飲んどきゃいいだろと思っていた。

自分の身は自分で守らなければならない。
正しい知識を得ていないといけない。

それを強く学んだ経験となった。

熱中症になった原因

1,服装のミス

いくら面接とはいえ、炎天下の中でスーツは当然ながら体温を尋常ではなく上げてしまう。
ビジネススタイルでもクールビズにしておくべきだった。
というか当時の僕はなぜスーツで出かけたのか理解に苦しむ。

2,塩分不足

お茶で水分をこまめにとっていたけれど、やはり塩分も取らなければ熱中症になってしまうのだということをこの経験から学んだ。
僕は今、炎天下の中を自転車通勤している。
そのため、塩分チャージは絶対に持ち歩くようにしている。
もちろんポカリやスポーツドリンクを飲むのも効果あり。
だけど、それらはそこそこ糖分も入っているので飲みすぎには注意しなければならない。

3,体力・免疫力が低下していた

熱帯夜による睡眠不足も原因の一つだったと思う。
それによって免疫力が衰えていた。
免疫力の低下は、今ではコロナにもかかりやすくなるので、適切にエアコンを使ってしっかりと睡眠をとることは絶対に必要だ。

それからこれはレアなケースだけど、当時の僕は急激にダイエットをしていた。それによって体力も低下していたのも原因だったと分析している。
「早く痩せたい」と思い、厳しい食事制限や運動を自分に強いている人も中にはいるかもしれない。
しかし、それは絶対にやらない方がいい。
早く痩せたい気持ちはわかるが、健康あってのダイエットである。

どうか熱中症にはならないで

ここまで書いた教訓は当たり前なものかもしれない。
だけど、当たり前なことこそ、改めて頭に入れておくことが大切だと思う。
ましてや、自身の健康のことならばなおさらだ。

どうか熱中症にはならないでほしい。
誰にもあんな辛い経験をしてほしくない。

こまめに水分と塩分補給を。
適切にエアコンを使って、快適な睡眠を。
体温が上がらないように、涼しい服装を。
無理しない程度に、栄養のある食事を。

厳しい暑さは続くけれど、楽しい夏を過ごしていきましょう。



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