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痔除伝

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とある肛門疾患の発症から完治まで、10年近くの戦いのまとめ。面白おかしく描きました。ぜひお付き合いください!
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2021年3月の記事一覧

痔除伝 第七章 modulation

痔除伝 第七章 modulation

「要するに、前回みたいに排膿してしまえば、一時的に楽にはなるけど、繰り返す。根本的に解決するなら、ここでは出来ないけど、大きい病院で手術ですね」

正直、そうだろうなぁとは思っていた。地獄司教(北の医者)もそんなことを言っていたし、ネットで調べてもそんなようなことが書いてあった。パワーはあえて名称を口にしなかったが、どうやら痔瘻というやつになってしまったようだ。

……なんだよ、痔瘻って。知らねー

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痔除伝 第六章

Interlude

痔除伝 第六章 Interlude

裏ナプキン密売人のもえさんと袂を分かち、私はつかの間の平和な日常を満喫していた。

アヌスが痛くない日常とは、それだけで光が溢れている。花の色は鮮やかさを増し、食事では繊細な風味や香りに気付き、ブスにも優しく振る舞えるようになった。

不自由を減らす事で気付ける喜びがある。そのことに気づき、健康、体調にこれまでよりも気を使うようになり、特にお腹の不調には気を配るようになる。お酒も多少量を減らし、飲

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痔除伝 第五章 CanCamとわたし

痔除伝 第五章 CanCamとわたし

翌日。職場に着くと、抜糸後はどうなのかとか、どうしたら肛門周囲膿瘍になるのかなど、どうしたって話題になる。慣れ切った職場ではみんな新しい話題に飢えているから、オペとか、抜糸とか、聴き慣れない疾患とか、そんな話題が刺激的なのだ。

私はそれに対し、お腹下しがちな男性に多いみたいで、なるかどうかは運みたいですよ、とか、抜糸後は生理用ナプキンで対処しろとか言われましたよ、と、なるべく明るく、笑い話に変換

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痔除伝 第四章 あの日出た粘液の名前をボクはまだ知らない

痔除伝 第四章 あの日出た粘液の名前をボクはまだ知らない

その後も、発作のように、苦しみが続いた。数ヶ月おきに辛い痛みと重みがやってくるも、1週間も経たずに消える。病院へは、行かない。

発作的に起こるつらさは、回を重ねる毎に強くなっていく。しかし、どうせ病院に行っても意味が無いと思うと、行く気になれなかった。見せ損、掘られ損である。

「見られても減るもんじゃない」という言葉があるが、目には見えない何かが、間違いなく減っているという手応えがある。

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痔除伝 第三章 refrain

痔除伝 第三章 refrain

ある冬の朝、いつもよりも少し早く目覚めた私は、前日のお酒と暖房により、乾燥しきった喉を一杯の水で潤し、トイレに向かった。便座に座り込み、力を入れる。体内の水分も抜けているのか、「確かに直腸内にあるもの」が動いてこない。ただ、確実に存在は感じるので、少し強めに力を込める。なんだか、少し降りてきた気がする。もう少し、もう少し……。徐々に力を強める。

バリッ!!!!!

突然何かが破けるような衝撃が身

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