592.【WACK峮峮スピンオフ未公開集#5】さまよう繭の中で
大家好。WACK峮峮スピンオフ未公開集の第5回目は、第2部の19で、Julieがルシファーになってしまった峮峮(チュンチュン)を救い出すストーリーの第3回目です。
この場面には伏線があり、それが第1部16「さまよう繭のたまゆら」です。
また、この第2部19は、第2部18の続きです。第2部18「峮峮にJulieの念いは届くか?(2)」は次のエピソードをご覧ください。
それでは、note未公開部分をご覧ください。
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さまよう繭の中で
眠りたい。もっと眠りたい。
峮峮は繭の中にいた。
その中は明るく輝いていて、ふわりと包み込む。
いつまでも心地よい繭の中で、まどろんでいたい。
「峮峮、行こう。迎えに来たよ」
「あなたは……」
峮峮は目をこすりながら言った。
「Julie?ここに来たの?」
「峮峮、帰ろう。一緒に帰ろう」
峮峮が起き上がると、今までのことが怒濤のように蘇ってきた。
「ダメだよ。あたし帰れないよ」
Julieが顔を近づけると、峮峮は思わず顔を背けた。Julieの顔をまともに見られない。
「なんであんなことしちゃったんだろう。街をメチャクチャに……あたし、みんなに迷惑ばかりかけて」
Julieは励ますように言った。
「峮峮、みんな許してくれる。きっと、いや、絶対大丈夫!」
「もう戻れないよ。あたし……あんなことしちゃったんだもん」
「私は許すよ。誰だって間違いはある。みんなもきっと許してくれる」
「Julie、あなたはわかってないから、そんなこと言うんだ。……みんな、誰もわかってくれない」
Julieは、峮峮の肩を抱いて言った。
「怖かったんだよね。いろんな悪魔が出てきて、体の中に入ってきたり、自分がルシファーにまでなって……」
峮峮はハッとして、Julieの目を見た。視界がゆがみ、目からあふれる涙を止めることができなかった。
「Julie、……わかってくれたんだ」
いつの間にか、峮峮はJulieにすがりついて泣いていた。
「怖かった、ホントに。何度もやめようと思った。でもみんながいるから、みんなが悪魔に苦しめられてると思うから……できなかった。でも怖くて……」
Julieは、峮峮を抱きしめて言った。
「もっとあなたに寄り添うから。今までのこと許して」
「どうして……許してほしいのはこっちなのに」
「あなたのつらさを受け止められなかった。ごめんね、峮峮」
峮峮もJulieを強く抱きしめた。不安でいっぱいだったが、Julieがわかってくれただけで気持ちが晴れてきた。
「峮峮、私の目を見て」
「え……」
「……みんなわかってくれる。きっと。許してくれるよ」
峮峮はいったんJulieから視線を外すと、うつむきがちに言った。
「そうだよね。いつまでも、ここに閉じ籠もってることもできないよね……」
この繭の中は、2人の言葉以外存在しなかった。もう一度2人の視線が交錯した。峮峮の瞳に力が宿ってきた。
「Julie、一緒に、お願い」
「うん……」
夜は明け、朝日が照らす公園に長い影を残して、峮峮とJulieは歩みを共にした。
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そして、この「さまよう繭の中で」の次は「ありがとう、峮峮!」というフィナーレになります。
この繭のくだりは、Genesis「Cuckoo Cocoon」からインスパイアされました。
小説の全容を以下リンクで示します。内容が大量なので、もう一度出すことは難しく、リンクでご容赦ください。
第1部 峮峮の変身
第2部 7人の悪魔との対決
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