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小説

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#連載小説

【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #5

 中学はどちらも中途半端な僕は高校は、偏差値55くらいの少し勉強ができるところに入学した。
 その時には漠然とした夢なんてなかった。

 よく小学生の時に将来の夢は、たまたまスポーツをやっていたから、
「オリンピック選手になりたい」
とか言っていたが、本当は何になりたいかも分からないし。

 働くという事が自分の未来におとずれる事なんて、想像もしていなかった。働くという事を想像したり、未来について

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【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #4

 そんな落ち着きなく勉強の成績は真ん中より上の方。運動は出来ると言っても、マイナー、スキーで全国選手。
 夏は陸上をやっていたが、学校の陸上部はほとんど遊びのようなもので、練習をサボったり良くしたものだ。
 当然、試合では悔しい思いをする。北海道の大会が出れるどころか中学1年生から伸びると期待されてた僕は、練習をサボりまくってたので3位入賞もできずに陸上を引退した。

 そして、氷点下を迎える冬が

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【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #3

【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #3

 母方の祖父母は大正産まれで太平洋戦争まっただなかで、ご飯を食べる事も大変な時代だった。
 高齢者の介護をしていても、戦時中を味わった人はご飯は食べる物がなくてジャガイモとカボチャを多ベられれば良い方だった。

 確かに、カボチャやジャガイモのイモ類は、お腹をいっぱいにするには持ってこいの食材だ。
 
 小学生を迎える前の僕にはそんな厳しさを知る訳もない。中学に行き歴史の教科書で、『ああ、日本って

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【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #2

【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #2

 小学生の時から落ち着きが無くて、先生に怒られていた。授業中には教室にいなく外に行ったり、他の教室に居て欠席の人の席に座っていたりした。
 いわゆる、問題児という子だ。

 ただ、勉強は得意ではないがある程度できていた為に、普通に小学校に過ごしていた。運動は北海道出身という事もあり、クロスカントリースキーをやっていた。
 クロスカントリースキーはスキーに乗りながら、ストックを使って走る競技だ。

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【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #1

【介護小説】俺なんてどうせ負け組だから #1

 今日も送迎から始まり、入浴の介助をした後に食事介助をする。そして、毎日変わらない日常をおじいちゃんとおばあちゃんと過ごす。

 もう、30になって送迎をし認知症のおじいちゃん、おばあちゃんをして、うんちをしたオムツ交換をしていると思うのか、『俺は何やってんだろう』と心の中で思いながら働く。

 でも、そうしなければ暮らして行けないので仕方がない。まあ、家は他の女の所に同棲しているので問題もない。

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俺らは最強!!

「ツモ!!16000オール」
「マジか。役満かよ。」
と言って、大貴は今日も役満をツモる。
「大貴、めちゃめちゃ強いな。ごめん。おれらはこれで終わらせてもらう。」

「わかりました。じゃ、残りは今度来たときにもらうので、今回は払える分で結構です。ちなみに払えない分は利子付きでもらえるとありがたいです。」
「わかった。今度は強い奴つれてくる。」
「それは楽しみですね。では、また来週か再来週いつでもよ

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑲

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑲

 そんな記憶の断片を思い出していると、
「今日はゆっくり休みな」
 と井上さんに言われ家に帰って行った。

 いつも会社まで自転車で来ているが、歩いてゆっくりと家まで帰った。
 自分の住んでいる街に、高齢者がこんなに住んでいると思わなかった。

 授業でも、どんどん高齢化が進み日本はどんどん少子化社会になっていくと習った。
 自分の住んでいる近くにも沢山の高齢者が住んでいるし、孤独の老人もいるの

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恋の不時着(仮)①

恋の不時着(仮)①

 初めて出会ってから、もう15年の月日が経過している。
 彼女と僕は出会った頃から考えも環境は違った。そんな彼女とは会うたびに心臓の鼓動が早くなるのだ。毎回が初デートのような感覚。

 本当に会ってはいけないような気がしてならない。今のどうしよもない僕と当時掲げていた目標を何一つ達成出来ていないし、昔の僕を知っている彼女を失望させてしまいそうで心配だった。

 彼女が何をしているかは10年前で止ま

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑱

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑱

 井上さんが笑いながら
「昨日、すごい酔っていたね?体調大丈夫?」

 僕は申し訳ない気持ちで、
「本当に迷惑をかけて、申し訳ございませんでした?」
「いやいや、大丈夫だよ。最後の方は良く話してたから面白かったよ。覚えている?」
「全然、覚えていません。何か失礼な事言ってたらすみません」
「大丈夫だよ。楽しかったよ」
と笑いながら井上さんが言ってくれた。

 これが、高校の同級生やコンビニのバイト

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑰

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑰

 目を冷ますと、職場にあるベットで寝ていた。いつ、ここに来たのかも分からなかった。
 職場は真っ暗で時計の針は3を指していた。やっと、ここがどこかを把握する事ができた。

 勤めていた介護事業所はマンションの一室を借りていた。10人くらいの職場においては、わりと広い部屋なのだろう。
 パソコンが5台。コピー機があり、トイレ、小さいキッチンがあり部屋は机で囲まれている。
 そして、奥に仮眠用のベット

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑯

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑯

 自分が今過去に戻りたいと思った事はないし、戻った所で良い大学に行って有名になりたいとも思わない。
 映画では過去に戻ったり未来へといくSF映画が流行っているが、僕には理解できなかった。

 この介護の仕事をして、未来には行きたいがこの人が認知症になる前はどんな人だったのかと気になる事がある。

 昔を知っているのは、その人の友人や家族などだけだからである。
 職業、性格や趣味などはアセスメントを

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑬

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑬

 初任者研修もいつの間にか最終日を迎えた。
 現場で働きながら通えたおかげで、とても為になった。最初は知らない人ばかりだったが、良い先生のおかげもあり有意義な時間を過ごせた。

 何気なく人と付き合ってきたデジタル化した僕の生活だったが、アナログ的な生活は産まれ変わったみたいに新鮮だった。

 最終日にはテストがあった。難しいかなと思い解いてみたが授業とレポートをこなしていたので合格する事ができた

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

 初任者研修に通いながら、訪問介護(以下ヘルパー)で実践する事は凄く為になった。コンビニという仕事はコンビニの上司に習うだけだが、介護という仕事は、介護を熟知した先生に習うので面白かった。

 勿論、井上さんに聴くとがあったが、自分自身が何が不得意なのかもわからなかった。学校の試験でも何が不得意という分析など自分自身に何が必要という事を考えなかったからかもしれない。

 授業を受けた事で、井上さん

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑪

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑪

 介護の実習でベットメイキングの仕方など、今迄にやった事が無い事を教わった。シーツはシワがないように伸ばす。これは床ずれ(以下、褥瘡(じょくそう)を防ぐ為でもある。
 褥瘡と聴いて、仕事でもお尻に褥瘡が出来ている人がいて、アズノールという薬を塗る事がある。

 その経験もあり、最初は小さな傷がお尻に出来るだけだと思っていたが、写真を見せられてグロテスクな後に少々ひいてしまった。
 重傷の褥瘡の人は

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