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「結婚の合意」をしたら、どちらの「氏」を選択するかについて平等に話し合いましょう、という話。

2020年は、私にとって大きな変化のある年でした。
結婚をして、「氏」を変えて、東京から離れたところへの移住もしました。
その中でも「氏」を変えたことは想像を超えた体験であったので、師走に熟々と書いてみることにします。

2020年2月に婚姻届を提出したのですが、結婚の合意をしたのは2019年です。
私は結婚の合意をする前に、結婚について分解しました。
結婚の歴史・意義・義務・責任・権利・手続き、そしてメリット・デメリットなどについても書籍やネットで調べて、妻と共有し、よく話し合いをしました。

第1に、好んだ相手とのペアリング(組み合わせ)であること。
第2に、義務・責任・権利が生じること。
第3に、「氏」が共有され共通化されること。

私たちは、結婚についてザックリと上記の3カテゴリーに区分けして理解を深めていく中で、現代においては2番目・3番目についてはデメリットの方が大きいが、それは制度が時代に合っていないからで、1番目の意義までを阻害する要因にはならないという結論に達して結婚の合意をするに至るという、割とロジカルなプロセスを経ています。

3番目の「氏」が共有され共通化されることについて歴史を紐解けば、現代から遡ること145年前の1875年(明治8年)に平民苗字必称義務令が公布されたことによって全国民に「苗字」を名乗ることが義務付けられ、その頃から家父長制も始まり、1898年(明治 31 年)に「家」を基本単位とする戸籍制度が開始されて、同時に「重婚」も禁止されることとなり、さらに戦後のGHQによるキリスト教的な思想も合わさって現代の「一夫一妻制」結婚観へと繋がっているものと考えられますので、戸籍に「筆頭者」が存在し、その「筆頭者」の戸籍に「入籍」することによって「筆頭者」の「家」が継続していく、したがって「入籍」する者は「氏」を「家」単位で共通化するために自らの「氏」を「筆頭者」の「氏」に変更しなければならない、との制度になっているのだろうという理解をしました。

この理解に基づくと、商売や血統の歴史等によってどうしても「家」を継続する必要がある(そうしないと大きなデメリットがある)という理由でもない限りは、どちらの「氏」を選択するかどうかについて結婚を合意した2人で平等に話し合うのは至極当然のことです。

01. どうしても「家」を継続する必要がある(そうしないと大きなデメリットがある)か
02. 現在の「氏」を気に入っているか(継続したい意思があるか)
03. どちらの「氏」の方が語呂が良いか

私たちは、上記の3点について話し合い、1番目は双方特に無い、2番目は妻は強い意志があるが私は無い、3番目は妻の「氏」の方が語呂が良さそうだ、という結論となり、私が妻の「氏」へと変更をすることに決定しました。

私が「氏」を変更すると、まず、必然的に戸籍の「筆頭者」は妻となり、私が義親の戸籍に養子縁組で入ったりするような手続きでもしない限り変更は出来ません。(そもそも筆頭者という概念が現代には不必要だとも思いますが)

そして、免許証・マイナンバーカード・パスポート・銀行口座・クレジットカード・各種保険・法人登記などなど、私の名義になっているものは全て変更手続きが必要となり、役所・警察署・銀行・法務局などへ赴き莫大な時間を費やすことになります。

また、パスポートや法人登記の氏名変更には、それぞれ6,000円や10,000円といった手数料までかかります。

「この国は、結婚をすると手続きに費用がかかるのか」と本当に驚きましたし、「氏」を変更する妻の割合が96%である実態から鑑みれば、性別による差別・偏見がない社会を目指す現代においては、夫婦同氏(姓)制度が、どれだけ女性に不利な状況であるのかと深く考え込んでしまいました。

手続きや費用だけではありません。

結婚直前の2019年末は、「ああ、結婚するんだなぁ」「幸せな家庭にしていきたいなぁ」などと幸せを噛みしめる一方、40年以上使用してきた「氏」が変更されることを想像すると、なんとも言えない自己の選択への不安のようなものが襲ってきてしまい、とても幸せなのに不安、「氏」の変更がなくノホホンと暮らしている妻に腹が立つ(妻ではなく制度の問題なのに)、というようなストレス状態に陥り、女性の方がマリッジブルーになることが多いと言われるのは、「氏」の変更も1つの理由なのではないかと強く感じました。

このように、結婚における「氏」の共通化については、手続き・費用・ストレスが大きいという事実を理解の上で、無条件に夫の「氏」に変更するのではなく、どちらの「氏」を選択するかどうかについて結婚を合意した2人で平等に話し合うべきなのではないでしょうか。

必ず夫の「氏」に変更しなければならない理由なんてないのです。

現在も選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に関する議論が一進一退で続いていますが、そもそも結婚を合意した2人で平等な話し合いがなされずに「氏」が選択されている実態の方が問題なのではないかとも思います。

さらには、「氏」の選択について結婚を合意した2人で平等に話し合うことが当たり前になっていけば、妻の「氏」を選択する比率も今よりは増えて、男性にも私と同じ体験をする人が増えれば、結果として選択的夫婦別氏(姓)制度の導入の議論も進みやすくなる可能性もあるわけです。

あなたが結婚をする時だけでなく、あなたの子供が結婚をする時、あなたの親戚が結婚をする時、あなたの友人や知り合いが結婚をする時、どちらの「氏」を選択するかについて結婚を合意した2人で平等に話し合うことを勧めてください。

民法第750条には、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定められています。

まずは、平等に話し合うことから始めませんか。

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