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たぬきと子(小説)

たぬきが一匹いた。

そのタヌキは、いった。

「人間の子になりたい」

私にはその時期、子どもが出来た。

兄弟のようにそのたぬきを愛しているつもりだった

我が子には兄弟がたぬきだとは言ってなかった。

信じてくれないと思ったからだ。

ある晩、たぬきに言われた

「ここ3年で実の子と扱いが違うのでは?」

そこでハッとした、

人によって態度を変えることのない人間だと思っていたが、
そうではなかった。

息子が小学生に上がるまでにいろいろあった。

第一次成長期や、イヤイヤ期を通して

我が子の性格が確立されていった。

ひねくれていたのだ

兄弟と呼べる兄は私の子に対し優しく

私も特別扱いをしていた結果

自分は特別な存在だと見誤ったようだった。

全て私の責任だったが目を逸らしたかった

私はタヌキのせいにした。

最悪な父親だ。

5歳の頃、たぬきは言った。

「私の寿命はそろそろ近い」

私は冗談だと思った

たぬきの寿命はもっともっと長いからだ。

「嘘をつけwそんなことなぜ分かる」

たぬきは神妙な面持ちをした顔して

「ずっと人間に化けていたから」

その続きを聞かず、私が割り込んだ。

「それは…確かか?」

たぬきは言葉にせず、静かに何かを悟ったように頷いた。

その日から我が子とたぬきの扱いは逆転した。

たぬきに残りの1年を楽しんで欲しい一心で…

我が子を忘れていた…

また態度を人によって変えた

半年後、たぬきは化けるのが下手になった。

たまにしっぽが見えると我が子から説明された

そのことをタヌキにも説明すると、

自分から説明したいと言い我が子の元へ歩み寄った。

10分ほど経っただろうか?

まだ2分しかたっていない…

心臓がキュッとなる時間だった。

5歳にして我が子はこの事実を受け止められるだろうか

不安でいっぱいだった。

その頃、たぬきを特別扱いしていると我が子はたぬきを嫌っていた

7分後、笑い声が聞こえてきた。

たぬきが場の空気を良くするジョークをいったようだ。

思ってみればあのたぬきも5歳だ。

化けるのも最初からとても上手かった。

だが5歳どおし、気が合うのかもしれない。

10分後、二人が出てきた。

何とも言えない空気がそこにはあった

我が子が口を開く

「このこと、何で言ってくれなかったの?」

さっきまで5歳に見えた我が子が成長して見えた。

「お前がショックを受けると思っ…」

私が説明しようとすると我が子は

「何も知らないままお別れだったじゃん!!」

私は息子に対する態度もタヌキに対する態度も

全て間違ってしまっていたと思っていた。

息子の性格はひねくれていて、

たぬきはよくわからない性格だと思っていた。

私は嫌だと思ったことに目を背け続け、

タヌキを家族として認識することさえも拒んでいた。

こんな些細なことにすら気づかなかった。

我が子達は、この5年で沢山成長していたようだった。

息子が7歳になり、小学校に入学した。

タヌキは化けられる時間は短くなったがまだ生きれている。

幸福な家庭を築けたと思っていた。

ある日、たぬきが家を出た。

珍しくなかった。

私は普段なら後を追わないのだが、悪寒が走った。

追わなければ

なんとなくだ。

本当になんとなく…

そう感じ、私は後を追った。

初めて私の勘があたった。

たぬきは倒れた。

私は初めてタヌキになった我が子を見た。

我が子だ。このタヌキは我が子だ。

家に連れて返った。

「私たちに気づかれ無いところで死のうと思ったのだろう…」

私が言うと、息子は泣いていた。

滅多に泣かない息子が泣いていた。

嫌っていたと思っていた。

息子はタヌキを特別扱いしたことで
タヌキを嫌っていると思っていた。

私は初めて身内以外の人間以外の死で涙を流した。

私にとってこの7年間は、いろいろな感情の変化のあった…

楽しい生活だった。


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