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優しい花屋さん #10

その後2人がどうなったのかは僕は知らない。 ただ一つ変化があった。 花屋を続けていて、 ずっと空いていた心の穴は静かに埋まっていた。 浩平が帰ったあと、僕はもう一眠りをした。 その夢の中で 真っ暗な闇の中にいる 淡く小さい光が僕に話しかけてきた。 「よくやった。」 これがどう言う意味なのかは イマイチわかっていないが おそらくあの二人のことであろう。 最近はとても楽しく花屋をやっている。 何故浩平にあんな話をしたのか、 心の底から湧き出た言葉達は 僕をあ

    • 優しい花屋さん #9

      「睨んでたつもりはなかったんです。 ただここかと思い見てました。」 「いいんですよ。仕方の無いことです。 ちなみにラベンダーの花言葉はどこで?」 「走った先に公園があって そこで休憩をしながら調べました。」 「そうだったんですね。」 「はい。こんな夜遅くなのにすいません。 俺も気が気じゃなくて。」 「気にしないでください。」 そして僕はおもむろに席を立ち 店の方へ歩いた。 「良かったら一緒に。」 浩平も僕の後に続き店の方へ足を運

      • 優しい花屋さん #8

        絞り出した優花の言葉は 思いもよらぬ出会いになった。 アルストロメリアとの出会いだった。 先の考える余裕さえない優花にとって 僕の放った言葉、 アルストロメリアの持つ花言葉は 救いの手であった。 「持続」長く楽しんでいた趣味からの出会い 「未来への憧れ」今後の未来への憧れ そして 「気配り」親に名付けられた名前の由来 『優しい花ような女性になりなさい。』 アルストロメリアを購入する際 優花は前を向くと決めたそうだ。 しかし 優花の前には分厚い壁が立ってい

        • 優しい花屋さん #7

          男は優花の彼氏で浩平と名乗った。 浩平の言う話によると 元々花を見たり、 育てたりするのが好きだった優花は 休みの度、ホームセンターなどへ行き 花を購入したり、種から育てたりしていた。 しかし、 ある時に勤め先の会社から 急に解雇通知を渡された。 上司に掛け合った所、 理由は有耶無耶にされたとの事だ。 それでは納得のいかなかった優花は 会社の知り合いなどに話を聞いて回った。 すると 別部署の男性との不倫が捏造されていた。 部署内のエースであった優花は 男性

        優しい花屋さん #10

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        • 優しい花屋さん
          10本
        • 私の推し
          3本
        • 1話完結シリーズ
          3本
        • ヒーローはやってこない
          9本
        • クラスメイト
          9本
        • 煙草はやめられない
          6本

        記事

          優しい花屋さん #6

          夜もまだ明けない頃。 外からする物音で目を覚ました。 誰かが店のフェンスを叩いている。 何か言ってるようだ。 酒の入った寝ぼけた頭では 処理が追いついていなかった。 時計を見ると1時過ぎだった。 重い身体を起こして店へ向かう。 ドンドンと叩く音と男の声が聞こえる。 「おい!いるんだろ!!出てこい!」 フェンス越しに男へ話しかける。 「裏口から行くので少々お待ちください。」 自室へ戻り、 水を一杯口にして外へ出る。 フェンスの前に立っていた男は こちらをキ

          優しい花屋さん #6

          優しい花屋さん #5

          女性が去った数時間後、 花屋の前を汗だくの若い男性が通った。 ただ通るだけであれば 印象にも残らなかっただろう。 しかしその男性は花屋を前にして こちらをキツく睨み走り去って行ったのだ。 僕は訳も分からず、 女性の事と男性の事でモヤモヤさせながら その日の店じまいを始めた。 目を見れないほどの顔をしていた女性。 こちらをキツく睨む男性。 「たまにある不運な日だったのだろう。」 そう思いながら店じまいを済ませ、 花屋の奥の自室へ入る。 なんでもないバラエティー

          優しい花屋さん #5

          優しい花屋さん #4

          「おにいさん。」 声をかけてきたのは 先日のOLらしき女性であった。 「どうされました?」 先日来店された際は通勤服であったが 今日は私服のようだ。 「今日もお花を買いに来ました。」 前回同様ニッコリとした笑顔で 「あの花を買ってから、 お花を眺めるのが日課になってしまって。」 放つ言葉一つ一つは前回と変わっていた。 「あ、あの紫色の花。とても綺麗ね。」 「これはラベンダーですね。」 「へぇ。これがラベンダーなんだ。」 「色々な物で香りとしては使用

          優しい花屋さん #4

          優しい花屋さん #3

          「この花綺麗ですね。」 開店直後の店内で僕に声掛けてきたのは OLらしき女性だった。 「この花ですか?」 「はい。とても綺麗な色。」 「この花はアルストロメリアっていう花でして、 花言葉は”持続”と”未来への憧れ”などですね。」 「へー。」 「花の色はピンクなので”気配り”もそうですね。」 「詳しいんですね。」 「伊達に花屋じゃないので。」 女性はクスッと笑い、 「じゃあこの花頂けます?」 と言った。 「もちろんです。」 女性は花を抱え会釈を

          優しい花屋さん #3

          優しい花屋さん #2

          真っ暗な闇の中。 目を開けた先に淡く小さい光が浮いている。 その光は僕から徐々に遠のいていく。 その光に近付けば近づくほど 光どんどん早く僕から離れていく。 「置いてかないで!!!!!!!」 声にした途端、 淡く小さい光は何も無かったかのように 消えてなくなってしまう。 また真っ暗な闇の中でひとりぼっちだ。 何かを忘れてしまったかのように ぽっかりと空いた心の穴は 目を覚ましても埋まらない。 分かってる。ここは夢の中だ。 じゃあいっその事。 辛く苦しい現

          優しい花屋さん #2

          優しい花屋さん #1

          -作文- 将来の夢 石田 咲(いしだ さく) 僕の将来の夢はお花屋さんになることです。 お父さんとお母さんがやっているお花屋さんを 一緒にやることです。 毎日キレイなお花をお客さんに渡してます。 お父さんとお母さんはお客さんにお花を渡す時 とてもニコニコしてます。 そんなお父さんとお母さんみたいな お花屋さんになりたいです。

          優しい花屋さん #1

          第3話 居たのが当たり前。

          あなたが居なくなったのは、突然だった。 ひとつ減った私だけの数字。 好きな人達が集まった数字。 なんの前触れもなく、あなたは姿を消した。 心配で、心配で。 あなたは 男の人で、 優しい声で、 歌が上手くて、 話し上手で、 若干訛ってて、 私を楽しませてくれて 私を癒してくれる どこに住んでいて、 どんな生活を送っているのかも分からない。 分からないことだらけの 私の…私の… あなたは私のなんだったのか。 居ないのが当たり前だったのに、 気づいた頃には居

          第3話 居たのが当たり前。

          第2話 居るのが当たり前。

          私のルーティーン。 開きっぱなしの携帯の画面を閉じる。 食事を済ませ、身支度をする。 決まった場所へ赴き、決まった仕事をする。 決まった時間が終われば、 疲れた体を引きずり、コンビニに寄り、 今日の晩御飯を買う。 テレビでも眺めながら、 コンビニ飯を口にする。 お風呂を沸かし、疲れた体を労るように 静かに湯に浸かる。 寝る前の身支度を済ませ、布団に入る。 そこからは携帯を眺め、 寝るまでのリラックスタイムに入る。 そして 決まった時間に、 あなたの声を聴

          第2話 居るのが当たり前。

          第1話 居なくて当たり前。

          私はあなたのことは何も知らない。 ただ、 あなたという人間が、そこで生きていて あなたという人間が、そこに存在している。 たったこれくらいの事しか、私の中にはない。 何がきっかけで、どんな巡り合わせで 私の体が動いたのか。 ただ、ふとした拍子に あなたの声を聴いてみたくなってしまった。 どんな声をしているのか、 どんな話をしているのか、 どんな言葉を使っているのか、 訛りとかはあるのか、 指がその声に触れるまでの数秒間 色々な興味が頭を駆け巡る。 触れた指が

          第1話 居なくて当たり前。

          裏切った俺と裏切らなかった僕

          「ここはどこだ」 2人の男が言う。 一人の男は 「どうして俺は、こんな場所にいる。」 と嘆き、 一人の男は 「どうして僕は、ここに立てている。」 と問う。 私の見てきた二人の男は、 2人とも努力家であった。 自分の事を”俺”と呼ぶ男は 自分の信念を持ち真っ直ぐと前だけを見て 突っ走る男。 自分の事を”僕”と呼ぶ男は 弱々しい中にも野心を燃やし 決して諦めない男。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ここはどこだ。 どうして俺は、こんな場所にいる。 自分の信じた道を走って

          裏切った俺と裏切らなかった僕

          将来の夢

          5歳 「ぼくはね!大きくなったら 仮面ライダーになるの!!」 10歳 「大きくなったら野球選手になる!」 15歳 「将来は夢か…」 18歳 「将来の夢?そんなもんないよw」 20歳 「とりあえず普通でいいや」 22歳 「いい会社に入れればいいよ」 〇歳 「 」 いつからだろう ドキドキという感覚を ワクワクという感覚を 忘れたのは あぁ あの頃に戻りたい

          将来の夢

          小さな幸せ 「挨拶」

          「おはよう」 なんでもない日常の挨拶だった 朝の習慣で 家族に 友達に 彼氏に 当たり前のように交わす挨拶だった 返事が返って来るのが 当たり前だった 何も感じず 業務のように発してた言葉 でもいつからか この業務のような挨拶は 家族としかしなくなった 友達も 彼氏も 「おはよう」と言っても 返してくれない 唯一交わす家族でさえ 私の言った「おはよう」 に返してくれない 家族に「おはよう」と言われて初めて 私が「おはよう」と返す 「寂しいな」 あの

          小さな幸せ 「挨拶」