第3話 居たのが当たり前。

あなたが居なくなったのは、突然だった。

ひとつ減った私だけの数字。
好きな人達が集まった数字。

なんの前触れもなく、あなたは姿を消した。

心配で、心配で。

あなたは

男の人で、
優しい声で、
歌が上手くて、
話し上手で、
若干訛ってて、

私を楽しませてくれて
私を癒してくれる

どこに住んでいて、
どんな生活を送っているのかも分からない。

分からないことだらけの

私の…私の…

あなたは私のなんだったのか。

居ないのが当たり前だったのに、

気づいた頃には居るのが当たり前で

そして、急に居なくなってしまう。

夢なのか、幻なのか。

手が届くようで、届かない。

靄と同じ存在。

そこに確かに存在はしているが、絶対に掴めない。

あなたはそんな存在だった。

指から発せらせる声は、いつもとは違うけど。

大丈夫。

この声でも、私の夜は過ぎていく。

私の夜は朝になる。

いつか口にしてるだろうね。

「あんな人いたねって。」

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