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優しい花屋さん #8


絞り出した優花の言葉は
思いもよらぬ出会いになった。

アルストロメリアとの出会いだった。

先の考える余裕さえない優花にとって

僕の放った言葉、
アルストロメリアの持つ花言葉は

救いの手であった。

「持続」長く楽しんでいた趣味からの出会い
「未来への憧れ」今後の未来への憧れ

そして

「気配り」親に名付けられた名前の由来

『優しい花ような女性になりなさい。』

アルストロメリアを購入する際
優花は前を向くと決めたそうだ。

しかし

優花の前には分厚い壁が立っていた。

元々優花の勤めていた会社
業界トップの成績を誇る会社であった。

そんな会社が優花程の有能な社員を手放したのだ。

他の会社で成績を残されては困ると
同業の会社に根回しを施していたのだ。

そのため、
転職は困難となっていた。

連日不採用の通知が鳴り止まず、
中には履歴書だけで落とす会社もあった。

そういった環境下で優花の心は廃れていき、

花へ癒しを求めるようになった。

そんなある時、
優花は浩平にある花の写真を見せた。

それが『ラベンダー』であった。

「ねぇこの花、とても綺麗だよね。
花言葉も素敵なの。」

「へぇ。綺麗だな。」

元々、花に興味の薄い浩平は
聞き流すかのように聞いていた。

次の日。

浩平が家に帰ると

部屋に飾られているラベンダーと
それを虚ろな目で眺める優花の姿があった。

「優花?それ昨日言ってた花か?」

「そうよ。」

「綺麗だな。
でも花ばかり見つめてないで
少しは家のことやっておいてくれよ。」

「…」

「優花?」

返事を返さない優花。

浩平が帰ってきた部屋は
服も散らかりっぱなし、

食器などは放置

購入した時に巻かれてたであろう
花のラッピングは床で風になびいている。

「優花!聞いてるか!?」

少し声を荒らげてしまった。

「うるさい!!!!!」

廃れていた優花の心には
浩平の言葉は雑音であった。

「どうせ転職も出来ず毎日家にいるだけの女よ!
私も好きでこんな生活してる訳じゃない!!

私も早く新しい仕事を見つけて働きたい!」

「ごめん。そんなつもりじゃ…」

鈍く高い音と共に
鈍痛が浩平の頬へ走った。

「痛ぇ…」

「出てって!」

そういった優花の手には
ラッピングを剥がすのに使ってであろう
ハサミがあった。

浩平は気が動転し走って家を後にしたという。

その走った先に花屋があり、
ここで買ったのかと見て走り去ったという。

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