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優しい花屋さん #9


「睨んでたつもりはなかったんです。
ただここかと思い見てました。」

「いいんですよ。仕方の無いことです。
ちなみにラベンダーの花言葉はどこで?」

「走った先に公園があって
そこで休憩をしながら調べました。」

「そうだったんですね。」

「はい。こんな夜遅くなのにすいません。
俺も気が気じゃなくて。」

「気にしないでください。」

そして僕はおもむろに席を立ち
店の方へ歩いた。

「良かったら一緒に。」

浩平も僕の後に続き店の方へ足を運ぶ。

僕は花屋に並ぶ一輪の花を手にして
浩平に語り掛けた。

「浩平さん。
『花』という漢字の由来ってご存じですか?」

「由来?知りません。」

「『花』という漢字は元々『華道』の『華』から
草冠を引き継ぎ『変化する』という
意味を持つんです。」

「はぁ。」

ポカン顔で聞く浩平に
にっこりと笑いかけ続ける。

「先程受け継いだ草冠と『変化』の『化』、
これを合わせると『花』という
漢字が出来ます。」

「ほんとだ。」

手のひらでなぞりながら浩平が頷く。

「これは諸説あるんですが、
小さな『つぼみ』から、美しい『花』へと
移り変わる姿をなぞらえた
漢字とされてるんです。」

ラッピングを終え、浩平に手渡す。

「今は確かに上手くいかない
時期かもしれません。

でも冬が終わり春が来れば
また、花は美しい姿を見せてくれます。

良かったらこの花を優花さんに
プレゼントしてあげてください。」

「これは?」

「こちらはカキツバタという花です。」

「カキツバタ…」

「花言葉は”幸せは必ず来る”です。」

ずっと曇っていた浩平の顔は明るさを取り戻し、

大きく、深くお辞儀をしたあと
優花の歩いた先へと走っていった。

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「カキツバタ」

花言葉
「幸せは必ず来る」

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