見出し画像

優しい花屋さん #4


「おにいさん。」

声をかけてきたのは
先日のOLらしき女性であった。

「どうされました?」

先日来店された際は通勤服であったが
今日は私服のようだ。

「今日もお花を買いに来ました。」

前回同様ニッコリとした笑顔で

「あの花を買ってから、
お花を眺めるのが日課になってしまって。」

放つ言葉一つ一つは前回と変わっていた。

「あ、あの紫色の花。とても綺麗ね。」

「これはラベンダーですね。」

「へぇ。これがラベンダーなんだ。」

「色々な物で香りとしては使用されてますが
実物を見た事ある人は少ないかもですね。」

ラベンダーを見ていた僕の目は
一瞬、女性から目を離していた。

その隙を見計らってか、次に女性の顔を見た時

僕はすぐさま目を逸らし、
再度目を合わせることは出来なかった。

こちらを向いてにっこりと笑う女性。

「今日はこれをくださる?」

「もちろんです。」

心の底では平常心という言葉が連呼されていた。

「ありがとうございました。」

女性が帰った後、

花屋の奥に入り緊張の糸が切れたかのように
膝から崩れ落ちた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「ラベンダー」

花言葉
「沈黙」「あなたを待っています」
「私に答えてください」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?