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「二つの願い事」

6月某所

廣子と学は、幼馴染で幼稚園からずっと仲良し。

今日も、高校の帰りに駅で待ち合わせをしていた。

いつものように、マックでポテトとオレンジジュースを、

頼んで席で今日あったことを話す。

日によって、廣子の話をずっと聞いていることもあった。

一頻り話終えた二人は、帰る途中にある、神社へと足を運んだ。

夕陽が沈んで、辺りは薄暗くなっていた。

神社の境内へと続く階段を、二人競争をするかのように、

駆け上がっていった。

息を切らしながら二人は、お賽銭を入れて願い事をした。

何を願ったのかは、お互いに知らないまま。

神社でお別れして二人とも、家に帰っていった。


学は、部活動をやっていなかったが運動神経が良かった。


あっという間に、夏休みに突入。

海に行って、真っ黒に日焼けして男らしくなりたい。

そんな思いが、学の脳裏を駆け巡った。

一方廣子は、どうしても夏休み期間中にやりたいことがあった。

それは、海の家でのアルバイトだった。

親戚の叔父さんが、海の家を鎌倉でやっていたのもあるが、

アルバイトで貯めたお金で、買いたいものがあった。


学は、海に行って廣子に会えるので、鎌倉まで行くことにした。

会えたことは会えたのだが、とても忙しそうに働いている廣子。

なかなか話が出来ずに、学は一人浜辺で物思いにふけていた。

夕陽が沈み、人も少なくなり始めた頃、

かき氷を持ってやってきた廣子。

「お待たせ」 「今日、人が多くて…」

「お疲れ様」 「よく頑張ったね」

そう言いながら、ちょこんと横に座って1本のスプーンで、

かき氷を食べ合う二人。

たわいもない話をして、学は笑顔を残して帰っていった。


夏休みが終わり、いつもの放課後、廣子を待っていると。

廣子が、大きな袋を持ってやってきた。

「お誕生日、おめでとう」

と言って、大きな袋から何やら取り出して学に手渡した。

その瞬間、学は、今日が自分の誕生日だったことを思い出した。

手渡されたものは、真っ白なランニングシューズだった。

運動神経が良く、元陸上部で活躍していた学。

「もう一度、思いっきり走って欲しい」

廣子は、学の走っているキラキラした瞳をもう一度見たかった。

学が走ることをやめたのは、母親の事故死が原因だった。


あの日も、夜練をしてずっと走っていた。


「ありがとう」


学は、廣子に一言だけ御礼を言って、涙を隠すようにしながら、

神社まで走って行った。


(廣子が、一生懸命アルバイトして買ってくれた)


心の中で、何度も呟きながら学は、もう一度走る決意をした。


次の日の朝早く、学は陸上部のトラックを一人で走っていた。

廣子にもらった、真っ白なランニングシューズを履いて。



学の神社でのお願い事は、もう一度、走れるようになること。


廣子のお願い事は、学が走っている姿を見ることだった。


そしてもう一つ願い事が…それは、二人だけの秘密。



※この物語は、フィクションです。


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