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日本は三戦の渦中にある
台湾と言えば台湾、ウクライナと言えばウクライナ。日本はあたかもテニスの観客のように飛び交うボールの行方を追う思考様式から抜け出せずにいる。目先の動きしか見えない状況対応型の日本は、日本の隙につけ込もうとする国々から見て、こんなに扱いやすい国はない。
実を言えば、日本は中国の「三戦」の渦中で翻弄されており、それがハイブリッド戦争への脆弱性をさらけ出す結果となっている。
◎極超音速ミサイルへの視点
北朝鮮は4月2日、極超音速で滑空する弾頭(HGV)を装着した新型の固体燃料式の中距離弾道ミサイル「火星16型」の初めての発射実験に成功し、1000キロを飛翔したと発表した。防衛省は600キロ、韓国は650キロとの見解を示している。
これを受けて、6日のNHKサタデーウォッチ9と、9日の読売新聞などは「探知や迎撃が困難」と報じ、国民は不安を掻き立てられることになった。
一方、小野寺五典元防衛大臣
護衛艦のドローン撮影事案を受けて再掲します。>これが米軍のセルフ・チェックだ
原子力規制委員会は2023年12月27日、テロ対策の不備を理由に出されていた柏崎刈羽原発への運転禁止命令を2年8カ月ぶりに解除、原発は再稼働に向けて動き出した。しかし、原子力規制委員会の委員が「異議なし」と唱えるニュースを前に、私は違和感を禁じ得なかった。
私は東京電力の中央コンピュータセンターなどのセキュリティを担当したことがあり、その関係で2003年12月、柏崎刈羽原発のフィジカル面の防護態
五百旗頭眞さんの思い出
五百旗頭眞さんとの出会いは1991年4月、六甲山頂の六甲山ホテルで開かれた日本IBM主催の六甲会議。以来、同会議のメンバーとして10数年をご一緒し、想い出も色々ある。同じ誕生日で2年先輩ということもあり、勝手に親近感を抱かせていただいていた。
阪神・淡路大震災での消防当局の不作為を批判した拙著『ヘリはなぜ飛ばなかったか』を高く評価し、自宅が全壊するほどの体験に基づいた書評を書いてくださったこともあ
戦っている組織は処罰も厳しい
このところ、自衛隊の不祥事への懲戒処分の記事が目につく。
例えば、2022年12月上旬には将来の海上幕僚長候補とみられていた第5航空群司令が着任9カ月で異例の解任に追い込まれた。この海将補は、コロナ感染者を賞与の査定から外すと訓示したり、複数回にわたり家庭内感染した隊員に「あなた、バカですか」と罵倒したとされる。
そればかりではない。12月13日には海上自衛隊で自衛隊史上前例のないほどの厳罰が
自衛隊高級幹部の靖国神社参拝を軍事アナリストはどう見ているか https://note.com/pkutaragi/n/n978031619abe
◎判断力が問われる自衛隊首脳
能登半島地震から1週間あまりだというのに、しかも第一線部隊が災害派遣に血の汗を流しているというのに、陸上自衛隊の高級幹部が脳天気さを世間にさらし、当の陸上自衛隊の内部からも「陸上自衛隊が国を守れないことを世界に露呈してしまった」と深刻な声が挙がっている。
ひとつは1月9日、陸上幕僚監部の副長(陸将)ら20人が航空安全祈願の目的で靖国神社に参拝した件、いまひとつは前
◎誤報の教訓に学ぶ(小川和久)
10月21日配信の毎日新聞政治プレミアで、誠に恥ずかしい誤報をしてしまった。毎日新聞側と協議のうえ、次のように訂正し、記事を削除したのだが、謝罪を含めて後始末としてはまだまだ足りない点がある。何を言っても言い訳にしか聞こえないかも知れないが、今後、私自身が同じような過ちを繰り返さないため、そして、読者になにがしかの参考にしてもらうため、「顛末書」とも言うべき角度から誤報に到った経過を述べておきたい
もっとみるnoteの記事を削除します
私が入手したメールは「日本大使館の全員がウクライナ語ができるわけではない」とすべきもので、「ウクライナ語ができる人間が一人もいない」という表現は間違いでした。お詫びし、正確を期すため記事を削除します。
日本の防衛力整備は無責任で幼稚な「買い物リスト
安保三文書(国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画)の改訂が大詰めなのだそうだ。年末までに何とかしなければならないという金切り声や、防衛費大幅増額に両手を挙げて歓喜する関係者の様子を眺めながら、「日本は国を守れない」という気持ちを強くしている。打ち出された防衛費の使途を見ても、国家の安全を守ろうとする強い責任感が感じられず、ひたすら買い物リストが作成されていく様は幼稚ですらある。
軍事インフラの不在で中国は空母キラーだって使えない 軍事アナリスト・小川和久
米国のペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国が台湾周辺で軍事演習を始め、マスコミには「台湾封鎖」という大見出しが躍った。私は次の点を指摘し、翻弄されないよう冷静な議論を求めた。騒いでいるだけでは、中国の掌の上で操られ、本当に必要な防衛力整備の目が曇ることになりかねないからだ。
確かに中国はあたかも台湾を海上封鎖するかのように台湾本島周辺に演習区域を設定し、弾道ミサイル11発を撃ち込み、うち5発は
・「台湾封鎖」に踊らされるな 静岡県立大学特任教授 軍事アナリスト 小川和久
米国のペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国が台湾周辺で軍事演習を始め、マスコミには「台湾封鎖」という大見出しが躍っています。しかし、マスコミが大きく取り上げるのは致し方ないにしても、専門的には整理する必要があります。騒いでいるだけでは、中国の掌の上で操られ、本当に必要な防衛力整備の目が曇ることになりかねないからです。
確かに中国はあたかも台湾を海上封鎖するかのように台湾本島周辺に演習区域を設定
日本の要人警護の死角
安倍晋三元首相の悲劇的な事件を受けて要人警護のあり方が問われている。
一般国民から見ても杜撰だった警備の在り方を受けて、警察庁は「検証・見直しチーム」を設けて対策を打ち出すことになった。
しかし、政府の安全保障と危機管理に専門家として関わり、テロ対策については『アメリカの対テロ部隊』と『銃撃テロ対策ハンドブック』を翻訳出版した立場で言うと、日本の専門家が日本的な発想でいる限り、要人警護のレベル
KDDI事故で懸念される日本のサイバー防衛
おおかたの日本国民は意識すらしていないかも知れないが、86時間にわたって回線が不通となったKDDIの事故は、日本国を屈服させるのに軍事力を行使するまでもない現実を白日のもとにさらした。
結論から言えば、今回のKDDIの事故はサイバー攻撃を疑い、国を挙げて対処する必要があった。
サイバー攻撃というと、日本ではサイバー空間で完結するものと思い込まれているが、攻撃する立場に立つとそうではないことがわ
『NEWSを疑え!』第1044号(無料版 2022年7月8日号)消防団の準常備消防化が防衛力を高める
◎軍事アナリストの目
・消防団の準常備消防化が防衛力を高める
静岡県立大学特任教授 軍事アナリスト 小川和久 6月21日付の毎日新聞に、目を疑うようなトップ記事が掲載されました。
「消防団員に銀行口座を新規に開設させ、その口座の通帳やキャッシュカードを団幹部が回収し、行政から振り込まれる報酬を団員個人に直接渡さない不正が複数の消防団で行われていることが毎日新聞の取材で判明した。銀行口座を本人以外