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戯言感想帖

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購入した本をなんとなく紹介したり、読んだ本の感想を自由気ままに書いたりしています。漫画も含みます。
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#わたしの本棚

『新編・日本幻想文学集成 1』に夢中

『新編・日本幻想文学集成 1』に夢中

例の短編集の感想文を書き終えるまでは『新編・日本幻想文学集成 1』には手をださない、なんて言いながらゴールデンウィークに入ったことを良いことに手をだしたことを打ち明けます。

小説を読んで久しぶりに鳥肌が立ったので、構成とか引用とか小賢しいことを考えず、この感動を素直に書き残しておきたい。

厚みが4cmほどあるこの本では、以下の作品を楽しむことができる。

・安部公房 9作
・倉橋由美子 10

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お気に入り漫画を紹介してみる①

お気に入り漫画を紹介してみる①

今日はスマホ内の漫画の本棚にある、お気に入り作品3つを思うままに紹介してみようと思う。
尚、さわやか王道な「青春ラブロマンス☆」みたいなものは皆無である。

『可愛想にね、元気くん』暴懲愛之助(ぼこりあいのすけ)という見るからに穏やかでないペンネームで同人活動をする主人公。彼は自らの描く漫画の中でクラスメイトの「やちみどりさん」を痛ぶっては興奮する、という秘密の趣味を持っていた——

メガネ+みつ

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夢野久作『けむりを吐かぬ煙突』を読んで

夢野久作『けむりを吐かぬ煙突』を読んで

些細な違和感を捨て置くことはできるだろうか?

人には誰しも「別の顔」がある。

本作の主人公と思しき男性は大手新聞社の外交部に勤めているが、何かしらの「スキャンダル」をネタに富裕層を恐喝する悪徳記者の顔も持つ。

さて、そんな彼が目をつけたのはさる伯爵の未亡人。果たして記者は彼女から上手く富を掠めとることができるのか?

未亡人となった南堂夫人。
彼女は自らの寝室を図書館に改造し、その部屋の屋根

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夢野久作『何んでも無い』を読んで

夢野久作『何んでも無い』を読んで

病的な虚言癖を持つヒロイン、姫草ユリ子が憎めない。

ひめくさ ゆりこ。
なんかもう名前からして可憐さが溢れている。

彼女は男女、老幼を超越して誰からも好かれる才能があるだけでなく絶え間なく嘘を繰り出す「虚構構築の天才」である。

ユリ子が看護師として働いていた耳鼻科の院長、臼杵(うすき)氏の手紙、という形をとって物語は始まる。

この手紙は、臼杵氏の大学の先輩にあたる白鷹(しらたか)氏宛てに書

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室生犀星『お小姓児太郎』を読んで

室生犀星『お小姓児太郎』を読んで

苛烈に虐げられても尚、逃げ出せずにいた理由は何だったのか?

これは嗜虐的な関係に揺れる主従関係の物語。

若く美しい稚児小姓・児太郎と、彼に憧れを寄せる髪結師・弥吉の一風変わった関係性に主に焦点が当てられている。

しかし、今回の感想文では児太郎が殿づとめをしていることも踏まえた上で話を進めたい。

言ってしまえば……児太郎は「二重の役割」を担っている。主君(利治公)に虐げられる側であり、弥吉を

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最近買った本を紹介してみる

最近買った本を紹介してみる

前回の記事で「楽しいと思えることを大切にしたい」と書いたが、夢野久作にどっぷりハマっている。

なんでしょう、この唯一無二の世界。
学生時代に安部公房にハマったときのような興奮に近い。

『文豪たちが書いた耽美小説短編集』に収録されていた夢野久作の『瓶詰(の)地獄』はたしかに耽美ではあったけど、期待していたような「狂気」は感じられなかった。

そこで氏の代表作である『ドグラ・マグラ』に手を出したわ

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江戸川乱歩『人間椅子』を読んで

江戸川乱歩『人間椅子』を読んで

これはもう実際に読まなければ最後の「ゾクッとする」感覚は得られないし、私ごときでは伝えられないだろう。

なので、いつも通り自由に感想を述べていく。

「閨秀作家」である佳子(よしこ)のもとに届いた厚みのある封筒。
それはとある男性からの「手紙」であった。
我々、読者はこの手紙の内容を追っていくことになる。そして佳子が手紙を読み終えるまでを見届ける。

物語自体の感想に触れる前に私の中で引っかかっ

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芥川龍之介『袈裟と盛遠』を読んで

芥川龍之介『袈裟と盛遠』を読んで

袈裟(けさ)が本当に愛したのは一体誰だったのだろう、と思った。

物語は人妻の袈裟と、その愛人・盛遠(もりとお)の独白で構成されている。3年半ぶりの再会の末、ついに男女の関係となってしまった2人。
情事の果てに盛遠は「夫殺し」を袈裟に持ち掛けるが果たして……?

結論から言うと、袈裟と盛遠の思惑は何1つ噛み合っていない。

そんな中にあって「女性の容姿の衰え」がお互いの心を揺らし、行動までも変化さ

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永井 荷風『畦道』を読んで

永井 荷風『畦道』を読んで

作品を読んだあと、タイトルに込められた意味に思いをめぐらせ……「なるほど」と思った。

「わたくし」と約10年ぶりに再会した友人の回想が物語のメイン。
のどかな田園風景の中、友人が経験した非日常とは?

永井荷風といえば……中高の文学史で習った『あめりか物語』を著した人だな、というなんとも浅薄な印象のもと読み始めた。
(こうして記事を書いてみると、根っからの文系のわりにこれまで純文学にあまり触れて

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岡本かの子『過去世』を読んで

岡本かの子『過去世』を読んで

最後のたった一行で解釈が広がる楽しさを知った。
静かながら迫力のある艶やかさが炸裂していた。

語り手の「私」の友人である、美しい女主人・雪子の回想がメイン。
躾の一環として雪子が預けられた、蒐集家Y氏の家についての記憶とは?

…岡本かの子氏の著書は恥ずかしながら全くの未読であったため、この作品に限っての感想になるが非常に読みやすかった。

雪子の口調が上品なのは言うまでもなく、回想にあたる地の

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谷崎潤一郎『刺青』を読んで

谷崎潤一郎『刺青』を読んで

わずか12ページの短編で、私はずっと興奮していた。

以下、感想を思うままに書いてみる。

刺青師(ほりものし)として名高い、清吉という男がとある娘の背中に刺青を彫る…そんな物語。

こう書いてしまうとなんとも味気なくなってしまうのが口惜しい。

しかし作者の描写の巧みさ、形容の見事さによってなんとも張りつめた妖しさの漂う作品に仕上がっている。

ページに占める漢字が多く、文体は硬質。
学生の頃に

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『文豪たちが書いた耽美小説短編集』を購入した

『文豪たちが書いた耽美小説短編集』を購入した

今日は用事がてら、大型書店に寄ってきた。

例によって、

『なぜ私は一続きの私であるのか』

『完全解読 ヘーゲル「精神現象学」』

『死に至る病』

などに惹きつけられたが、これらは後日改めて図書館で借りることにした。

そして今回購入したのは
『文豪たちが書いた耽美小説短編集』。

白抜きが映える、表紙に踊るは「耽美」の文字。
レジ担当が若いお兄さんで少し恥ずかしかった…。苦笑

長らく自分

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