マガジンのカバー画像

無題

22
随想あれこれ。その時感じたこと、考えたことの集まり。 物思いに耽るとき、何を片手にしていますか?私はだいたい白湯かそば茶です。
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

無題

無題

今日は雨が降っている夜で、とっても気分がいいです。

母が眼鏡を外しながら私の顔を見て、ふふふと笑う。

そういうとき、私は今日見た景色と、これから見たい景色を思い浮かべている。空いている電車、ブティックのディスプレイ、同級生の顔、知らない湖、蝉の抜け殻、白い足、艶のある頬っぺた。

今はハイヒールに疲れた足と少し余計な肉のついたお尻をタオルケットに包み、ざらざらした音で眠りにつくところ。

無題

大丈夫かな、ちょっと無理そうかも、でも大丈夫だと思う。
そういう思いで出かけて、ひどい靴擦れで家へ帰ってきた。

でもそういう日は気がつくと足元か、あるいはそれより少し先に転がってるそれらに気がつく。ソファにはクッション、茹でた卵が少し半熟、とっておきのためにまだ下ろしていないワンピース。

小さなお犬サマは涙目で絆創膏を貼り直すのを横目にあくびをする。なぜだか私は今日もまた眠りにつくのに時間がか

もっとみる
無題

無題

半端でツヤツヤしたお月様が出ていたので写真に撮ろうとしたら、案の定遠くの白い星か、できたばかりの胎児のようなぼんやりした光にしかならない。

それで湯船に浸かりながら頬杖をついて、あれこれ考えたり悩んだりふふふと笑ったり歌ったりしていた。入浴剤入れればよかったな。マンドポップを流しながら楽しい出来事を思い浮かべたらちょっと寂しくなった。頭の中でカレンダーを広げて、一つずつ赤いペンでチェックを入れる

もっとみる
無題

無題

パソコンが発する微熱、ベビーパウダーの甘ったるい香り。
非常に居心地の良い居心地の悪さみたいなものがずっと頭の中にあって、こびりつく、というよりはもやがかかったようなそんな感じがしている。後ろ向きみたいな前向きで、そんなに高くない温度の揺めきがこのへんをうろうろしては時々思い出したみたいにちょっかいをかけてくるのだ。
でもそれ以外はなんてことない。カプースチンを弾く肘がいつもより揺れるだけ。ペダル

もっとみる
無題

無題

毎日雨の音の中で眠りにつくか、あるいは目覚めていたのが急になくなって淋しい。だからちょっと(いつもよりも)おセンチな感じで眠りにつこうとしている。

部屋で聞く弱い雨だれでとても落ち着くし、物言わぬ友人が近くにいるようなそんな気がしていた。
明日からはエネルギーに溢れた日差しが窓から入ってくる。私には眩しい。今はまだ、小さくて薄暗い、安全な自分の部屋の中でちょっとした幸せに頬を緩める日が続けばいい

もっとみる
無題

無題

水やり蝉の抜け殻を拾ったらとても軽くて、なんだか涙が出てきた。
暑いので植物にホースで盛大に水をやる。こういう季節は日差しも湿気の強い匂いもあんまり好きではなかったけれど、青い葉っぱから滴る雫を見ると何だか自分まで生き生きしているような感じに見舞われた。でも、早朝からもう既にエネルギーに溢れた日差しが私にはとってもつらい。だけれど、暑い暑い言いながら外に出て、水を撒いたり、季節を見つけたりして、部

もっとみる
無題

無題

満員電車でギスギスして靴の踵を踏まれたり、肘で鞄を押しやったり、そういうのが馬鹿らしい。夜の街を行き交う人々は、そういう冷たさがない。夏とはいえ、しっとりした少し冷たい空気の中で、踊る陽気な外国人、花火をする男女、散歩される白い犬、お酒の缶を持つ人達、煙草の煙、シャッターが降りた街、濡れた地面が色んなところに反射して鈍く光る。

ほんとうの暗闇、大自然のそれとは全く違う都会の暗さは、寂しげでもひと

もっとみる