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短編小説 | 余はいかにして「チャリンチャリン太郎」となりしか

 ここで、私がいかにして「内村閑蔵」を捨てて、「チャリンチャリン太郎」になったのかについて語ろう。

 私は平凡な会社員として平凡な日々を送っていた。サラリーマンとしての生活は、それなりに充実したものだった。様々な人々が1つの目標に向かって、心を1つにして働くことは美しいものだ、と思ったときもあった。
 しかし、時が経つにつれて、しがらみが増えてくると、自分の想いよりも会社や職場仲間たちに迎合しているだけだ、と思うようになった。
 このままでは自分を見失ってしまう。自分の人生を生きるのではなく、利潤だけを追求する会社の一員に堕してしまう。

 私は職を辞し、組織に属さず、1人自分の理想を追い求めることを決意した。
1つの場所にとどまれば、自然としがらみが私をからめとる。
 私はチャリンコ🚲️一台で、自分探しの旅に出た。その日から、流浪の生活が始まった。東から西へ。西から東へ。所持金は徐々に減って、とうとうゼロになった。もはや流浪の日々もこれまでか。
 しかし、所持金がゼロになったとき、奇跡が起こった。

 腹がへって、身動きがとれず、やむを得ず公園のベンチで横になったことがあった。空腹感を紛らわせるために、即興のラップを口ずさんだ。

🎵おなかがYo
へりす💨🐿️gi te Yo.
🎵ぐーのNe mo Yo~
おなら💨もYo~~
🎵なーんも出てこねぇYo~~
屁💨だけじゃねえ~
身💩も出てこねえーYo~~~
🎵Yo~~よしだYo~~
Yo~~おおいずみYo~~
Yo~~ひととYo~~
🎵はらへったYo~~
おなかがすいたYo~~
お金がないYo~~どうしYo~~


 それほど大きな声で歌ったわけではないのだが、気が付いたときには、私のベンチの辺りには、百人を越えるリスナーがいた。

「哀愁のあるラップですね」

「感動しました」

「勇気が出ました」

「生きていてよかったです」

「身から錆びは出ましたか?」

「これ、下剤です、よろしければ…」

 賞賛と同情の嵐が私を巻き込んだ。
 次の瞬間、チャリン、チャリンという投げ銭の音が聞こえた。
 夢か幻かと思ったが、その日以来、公園のベンチで即興ラップを披露すると、一度に10万円を越える投げ銭が集まるようになった。
 いつしか私は、誰が言い出したのかは定かではないが、知る人ぞ知る「チャリンチャリン太郎」になっていた。
 諸説あるようだが、「チャリンチャリン」は投げ銭の音だという説や、チャリンコから採られたという説が有力である。私自身は、詳細を把握していない。「太郎」はどこから出てきたんだか。
 ただ私は「チャリンチャリン太郎」と名乗り、流浪の旅を続けるつもりだ。


おしまい


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(1224文字)[タグまで含む]

たらはかにさんの今週のショートショートのお題「チャリンチャリン太郎」をお借りして書きました。
400字程度の作品は先日投稿しましたが、今回は少し長めの文章なので、応募のタグは付けないで投稿します。
「チャリンチャリン」で投げ銭の音を連想してしまって、前作と同工異曲のような作品になってしまいました。

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