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【キラキラ光る、小さな幻想世界へ】    テテシゴト インタビュー


テテシゴト 個展「ミニチュア立体造形刺繍の世界」を、
2024年1月31日(水) – 2月12日(月・祝) の期間にピカレスクギャラリーで開催いたします。

今回は、テテシゴトさんにご自身のことや制作エピソード、今回展示される作品についてインタビューしました。ぜひお楽しみください。


ー 自己紹介をお願いします。

teteshigoto-テテシゴト-です。
「立体造形刺繍」という独自の技法を生み出し、それを駆使して、ミニチュアサイズの幻想的な世界を作っています。

私の制作する作品は、主に森、芝、苔などの緑豊かな自然の中に、花やキノコが息づいているものが多いです。現実にありそうな風景や、現実には見られないファンタジー感のあるものを、極細の針と糸で表現しています。
糸だからこそ表現出来る柔らかさや色使い、そしてとても小さなサイズで作り出す技術を、ぜひご堪能ください。

ー 現在の作品の世界観が生まれたきっかけを教えてください。

以前、とあるイベントの委託出店の依頼を受け、アクセサリーを相当数制作しました。その頃は刺繍は一般的なものしかしておらず、また、できるだけウケが良さそうなものを作らねばと気負ってしまい、今の作風とはまったく違う物を大量に制作しました。

そのときに「私が作りたいのはもっと違うものな気がする」と感じ、ふと思い立って完全な立体のキノコを作ってみました。数種類のラメ糸を用いて作った青いキノコが完成した瞬間、「これだ!」と強く感じました。

もともと幻想的な風景などが好きだったので、そのイメージを常に頭に浮かべながら制作したところ、現在の作品の世界観にほど近いものが仕上がりました。それからは、「ひたすら幻想的な世界を、そしてより小さく細かいものを」と目標に掲げ、作りつづけています。

ー 現在使用している素材で作品をつくる理由を教えてください。

私は全ての作品で、糸を使用しています。幼少期から裁縫をするのが好きだったので、糸と針には長年馴染みがあり、「何かを作る・表現する」と考えた時、自然と手にしたのが糸と針でした。

私は芝や苔を作ることが多いのですが、糸特有の柔らかさや繊維は、それらを表現するのにぴったりです。また、刺繍糸は色の種類が豊富なので、立体感も表現しやすいです。一つのパーツに何色もの糸を使用して、幻想的な色合いを表現したりもします。

作品によってはレジンを組み合わせることもあります。糸だけでは出すことができない「透明感」をどうにか表現したいと考えたとき、思い付いたのがレジンでした。本来なら、糸にレジン液が染み込めば、糸はあっという間に黒くにじんだ色になってしまい、柔らかさも皆無となります。しかし、試行錯誤の末、やっと糸をにじませることなくレジンに閉じ込める手法を生み出すことに成功し、その技を駆使した作品もいくつかあります。

刺繍の技法で立体のミニチュアを作り、時にはレジンを組み合わせて幻想的な世界を創り出す。それが私だけの唯一無二の表現方法だからこそ、糸を使って制作し続けているのです。

ー 普段、何からインスピレーションを受けていますか?

風景の写真集や、花や緑の図鑑をよく見ます。

植物が好きでベランダガーデニングをしているのですが、たくさんの花や観葉植物を育てていると、よく作品のイメージが頭に浮かびます。私の作業場はベランダのそばにあるのですが、そこから見える空の色や、遠くに見える山の景色から、インスピレーションを受けています。

私は青系の色が好きなので、育てている花も青や紫で揃えています。
青や紫、緑の植物と、その向こうに広がる空の移り変わりを眺めていると、すぐに幻想的な世界を作りたくなります。

ー 影響を受けたアーティストや、作品はありますか?

現在の作風(立体造形刺繍)においては、影響を受けた特定のアーティストや作品はありません。

しかし「幻想的な世界観」という観点では、子供の頃に観た『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』という映画は印象に残っています。
この映画を観たあと、当時の私はすぐに粘土とワイヤーを使ってオブジェのようなものを作りました。その作品はもう捨ててしまいましたが、デザインや色味などは記憶に残っていて、現在私が作る作品の世界観に少しだけ近いように思います。

ミュシャの作品は色合いや植物の表現が好きなので、もしかしたらその世界観も多少影響を受けているかも知れません。

ー これからどんな作品を作りたいですか?

今と同じように、これからも幻想的な世界観をメインにした制作をつづけていきたいです。

ミニチュアサイズのパーツをたくさん制作して、刺繍でそこそこ大きめのジオラマを作るという目標もあります。絵本のようにストーリー仕立ての作品もやってみたいです。

そして、これは幻想的な世界観とは全く別ものなのですが、時間に余裕が出来たら、ミニチュアサイズの甲冑(かっちゅう)や日本刀を、立体刺繍で作りたいと思っています。


ー ご出展いただく作品のコンセプトを教えていただけますか?

「キノコの雨宿り」

新作のデザインを考えようと色鉛筆を見た瞬間、大きなキノコの下にたくさんの小さなキノコたちが集うカラフルなイメージが浮かびました。せっかくなら、大きなキノコを傘に見立てて、小さなキノコたちが雨宿りをしている風景を作りたい ―。そう思いつき、この作品のテーマと全体像が決まりました。

はじめは、雨の表現をどうするか、全て糸で表現するかビーズを使うかで悩みましたが、どうせなら思い切って新しいことに挑戦してみたいと思い、レジンを使用してみることにしました。
レジン液は本来、糸とは性質の相性が良くありません。糸にレジン液が触れた途端、糸はあっという間にレジンが染み込んで黒ずんでしまいます。
どうすれば糸にレジンが染み込まず、ちゃんとレジンを固められるか、その難題をクリアするために、試作と失敗を何度も繰り返しました。

ようやく糸をにじませることなく、レジンと組み合わせる方法を確立し、成功したのがこの作品です。木の枝、キノコの傘、そして芝に雨を模したレジンを飾り付けることで、刺繍だけでは決して表現できない濡れたようなキラキラ感を演出することに成功しました。

様々なサイズのキノコに、木の枝先のカラフルな実、そしてレジンで表現している雨。全てがバランスよく組み込まれた、私のお気に入りの作品です。

「キノコ鉱石の眠る丘」

立体刺繍で作ったパーツをレジンの中に閉じ込める、という無謀なチャレンジの初の成功作品です。

かねてより「ミニチュアの立体刺繍作品を安全に持ち歩けるようにしたい!」と思っていました。私の作る立体刺繍は、半立体ではなく完全な立体で、なおかつミニチュアサイズなので、置物としては問題ないのですが、持ち歩くには強度が足りません。

それを何とか持ち歩きたい、気軽に持ち歩いてもらいたい――
そう考えて思いついたのが、「レジンの中に作品を入れて固める」という方法でした。
これを成功させるには、パーツがレジン液によってにじんだり黒ずんだりしないよう処置しなければなりません。その処置方法を考案するのにかなりの時間を費やし、多くの数のパーツを駄目にして、ようやく完成したのがキノコ鉱石です。

完成したキノコ鉱石を、まずは置物として昇華させたのが、この「キノコ鉱石の眠る丘」です。今でも立体刺繍作品をレジンに閉じ込める際、何度失敗しても挑戦を続けられるのは、この作品を完成させられたという自信があるからです。

ミニチュアの立体刺繍×レジンの原点であるこの作品は、私に勇気をくれる大切な存在です。

「あの日見た星空」

この作品が出来た背景にも、「持ち歩きたい問題」があります。立体刺繍作品をレジンに閉じ込めれば持ち歩けるというのは、私の中ですでに解決した問題です。しかし、レジンに閉じ込められるのはあくまでも「立体刺繍のパーツ」であって、風景全体を閉じ込めることはさすがに出来ません。

それは何故か――風景を作る時によく使う「芝」の表現が、レジンに閉じ込めると台無しになってしまうからです。スミルナステッチという技法で作る芝は、ふわふわとしているから芝に見えます。そのため、レジンを使わずに、なおかつ作品に直接触れることなく持ち歩く方法をと考えたところ、この「ガラスドームの中に風景を作り閉じ込める」というアイデアが浮かびました。

小さなガラスドームの中に、壮大な風景を作りたい。そしてそれを持ち歩けたらどれだけ楽しいだろうか。その想いを形にしたのがこの作品です。
小さいながらも、奥行きを出すために芝の色もキノコのサイズも工夫しました。

この作品で、私史上いちばん小さいキノコも誕生し、立体造形刺繍の可能性は無限だなと改めて感じました。

ー お客さま、ご来場予定の皆さまにメッセージをお願いします。

普段、InstagramやX(旧Twitter)で見てくださっている作品を、ようやく直接ご覧いただける機会がやってきました。

私はラメ糸を多く使用しているので、実際の作品はとてもキラキラしています。しかしミニチュアであるがゆえに、写真や動画ではキラキラと光る様子をなかなか伝えきれません。今回の個展を機に、作品のキラキラ感を間近で見てもらえたらとても嬉しいです。

そして、作品の小さなサイズ感にも驚いてもらえると思います。
「刺繍で立体でミニチュア?」といった印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、実物を見ていただければ、「刺繍で立体でミニチュア!」と印象が変わるはずです。

初の個展、少しでも興味を持ってお越しいただけたら幸いです。

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テテシゴトさん、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。

皆さまはどのエピソードが心に残りましたか?
ピカレスクスタッフは、テテシゴトさんご自身が「つくりたい」と願うものを形にするために試行錯誤を繰り返されたそのプロセスに感銘を受けました。たくさんのチャレンジを重ねて生まれた、小さくまばゆい幻想の世界にお会いできる日が楽しみです。

テテシゴトさんの作品実物を一堂に鑑賞できる、初の機会になります。皆さまのお越しを、お待ちしております。

テテシゴト 個展「ミニチュア立体造形刺繍の世界」


〈会期〉2024年1月31日(水) – 2月12日(月・祝)

〈詳細〉https://picaresquejpn.com/teteshigoto_exhibition_2024/

〈テテシゴト 公式SNS〉
X(旧Twitter) https://twitter.com/@tete_shigoto
Instagram https://www.instagram.com/tete_shigoto/

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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561

■開催中&過去に開催した展示一覧
https://picaresquejpn.com/category/information/

■開催&開催予定の展示一覧
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/

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