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【書籍要約】成果の出るチームと、出ないチームの違い

理想のチームをつくるために

世の中には、個人の力だけでは達成できない物事が多いものだ。だから私たちは、「チーム」をつくって他者とつながり、タスクをつなげている。
ここでいうチームとは、「目標を共有しつつ、相互作用をしながら、物事を達成する社会集団」を指す。本書の重要なキーワードは、「チームワーキング(TeamWorking)」である。
この言葉は、「チーム(Team)」に「ワーキング(Working:物事がダイナミックに、常に動いている状態)」を付け加えたものだ。
「チームワーキング」とは、チームメンバー全員参加で、チーム全体の動きを俯瞰的に見つめ、相互の行動に配慮し合いながら、目標に向けてダイナミックに変化し続けつつ成果創出をめざす状態を指している。
今や、優秀なリーダーが一人いるだけでは、チーム運営はうまくいかない時代だ。チームメンバー全員の賢さと振る舞いこそが、チームの成果を決める。
だからこそ、現代のチームの理想の状態は、チームメンバーが「全員参加」し、ダイナミックなチームの動きを創出することで生まれる「チームワーキング:チームがダイナミックに動いている様」である。

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成果の出るチームと出ないチームの違いは、チームの捉え方にある。
成果の出ないチームは、チームを「一人のリーダーが率いるもの」「一度定めた目標に向かってまっすぐ進んでいくもの」と見立てがちだ。
そのため、チームワークを「リーダーが中心となってチームの目標と各自の役割を設定し、それに従って各メンバーが与えられた役割を着実に行うこと」だと捉えている。
成果が出ないチームで最重要視されるのは「初期のアクション」だ。初期に綿密な戦略を立て、役割分担することに重きを置く。
一方、成果の出るチームは、チームを「全員でリードするもの」「常に想定外の変化をする、動的でダイナミックなもの」と見立てる。
チームワークの定義は「チーム全員が、チームの状況を俯瞰するチーム視点を持ち、チーム視点で目標を見つめ、相互にフィードバックし合うこと」だ。
成果の出るチームにおいて最重要視されるのは、「期中にもアクションし続けること」である。
期初に設定した目標と現状にズレがないかを確認し、必要であればより現状に即した課題を再設定する。

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チームワーキングに必要な3つの視点

成果の出るチームと出ないチームの違いは、チームに対する見立てにあると理解してもらえただろう。
では具体的に、チームをどう見ていけばいいのか。メンバーに必要な視点は、「チーム視点」「全員リーダー視点」「動的視点」の3つである。それぞれ紹介しよう。
「チーム視点」とは、チームがダイナミックに変化し続けていく状態を常に俯瞰して見る、チームの全体像を常に捉える視点のことだ。
この視点がないと、自分に振られた「部分の仕事」だけに集中してしまい、全体が見えなくなってしまいがちだ。すると、仕事を一人ひとりが抱え込み、情報共有がなされなくなる。
「チーム視点」を通して、自分の仕事がチーム全体の目標にどうつながっているのか、全体の中でどの部分を担っているのかを把握し、常にチーム全体の動きに目を向けよう。
そうでなければ、いま自分がすべきことが見えなくなってしまうだろう。

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「全員リーダー視点」とは、全員がリーダーになりうるという前提で、自ら当事者意識を持ってチーム活動に貢献する視点である。
実際、リーダーシップの最新理論として注目される「シェアド・リーダーシップ(shared leadership)」の考え方によれば、「職場やチームに所属するメンバー全員が、チームの成果を高めるために必要なリーダーシップを発揮しているチームの状況」が望ましいとされる。
事業環境の不確実性・複雑性が増し、状況が常に変化する現代では、一人のリーダーがすべてに対処することは不可能だ。
特定の個人に頼るのではなく、全員がリーダーとなって、チームの成果を最大化することをめざしていく。
「動的視点」とは、チームを「動き続けるもの、変わり続けるもの」として捉える視点だ。これこそ、「チームワーキング」において最も重要な視点である。
外部環境に大きな変化がなかった時代には、長年一緒に活動しているメンバーと、前年度とほぼ同じ目標を、同じやり方で達成すればよかった。
だが今では、そうはいかない。常に情報共有をしながら、状況変化に合わせて目標を握り直したり、それぞれの業務を調整したりする必要がある。


行動原理(1)ゴール・ホールディング

「チームを見つめる3つの視点」を理解したら、次は、「チームワーキング」の状態をつくり出すための具体的な「行動」を見ていこう。
著者らは研究を通して、「チームワーキング」の状態を生み出すためには、3つの具体的な行動が重要であることを突き止めた。
1つ目は、「Goal Holding(ゴール・ホールディング):目標を握り続けること」だ。チームにはめざすべきゴールが不可欠である。
だが、目標設定ができていたとしても、変化する環境・状況の中で目標を見失ってしまうことがあるだろう。
それを防ぐためには、メンバー全員が目標を常に握り続けなければならない。これをゴール・ホールディング(Goal Holding)という。
めざすゴールはどこか、実現したいことは何かを常に全員で確認し合いながら、目標に向かって進んでいく。

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目標を握り続けるにはどうすればいいだろうか。ポイントは3つある。
まず、「全員がコミットする」目標を設定することだ。
調査によると、最初から最後まで「チーム全員が達成したいと思えるような目標を設定している」チームが高い成果を出していることがわかっている。
「SMART」の法則を満たした、具体的で、測定可能で、達成可能で、経営目標に関連があり、期限のある目標が望ましい。
次に、状況に応じて、目標に立ち返る行動を継続することだ。
目標に立ち返らないままだと、チームが目標とは別の方向へ進んでいることに気がつかないかもしれない。互いにコミュニケーションを取りながら、チームの状態を観察し、把握しよう。
最後に、必要に応じて、目標の見直しや再設定をすることだ。
そのためには、メンバー同士がお互いに心配事や悩みなどをオープンに相談し合える関係を築いている必要がある。

行動原理(2)タスク・ワーキング

2つ目は、「Task Working(タスク・ワーキング:動きながら課題を探し続けること)」である。
これは、チームでの課題解決において、解くべき課題やその解き方が妥当なものなのかどうかを、常に確認・修正していくことをいう。
タスク・ワーキングを行わなければ、いつの間にか方向がズレてしまいかねない。
まずは仮決めでもいいので、大まかな方向性を定めよう。そして実際に行動して修正を加え、またやってみる。
重要なのは、最初の課題設定で満足するのではなく、常にアクションして仮説検証を繰り返していくことだ。

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「解くべき課題」を設定できたからといって、すべてがうまくいくわけではない。チームの成果を左右するのは、「全員アクション」と「チームリフレクション」だ。
全員アクションとは、チームの全員が課題解決のために分担した役割を遂行(アクション)し続けていることをいう。
仮に自分の役割を果たさない人がいても、リーダーがその仕事を巻き取ってしまってはいけない。
リーダーがすべきことは、仕事を巻き取ることではなく、全員のアクションを促すことだ。
チームリフレクションとは、割り振られたタスクや実践した内容が課題達成のために適切であったか、チーム視点で振り返り続けることだ。
「このやり方はうまく機能しないので別のやり方を試した方がいい」などと、自分の役割を果たす中で見えてきたことをチーム全体に還元する。
「解くべき課題」は、仮決めでもかまわない。チーム全員で行動し、その結果をチームで共有・議論しながら、定めた課題が本当に妥当かを確認・検証し続けることが高い成果につながる。

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行動原理(3)フィードバッキング

3つ目は、「Feedbacking(フィードバッキング:相互にフィードバックし続けること)」である。
課題解決を行いながら、チームの状態・行動・成果について、自分の考えを相互に伝え合う。
研究では、チームメンバーがお互いに知識・理解・認識を共有し合っている程度(メンタルモデルの共有度)がチームのパフォーマンスに影響することが指摘されている。
また別の研究では、チーム内でメンタルモデルが共有されている場合、多くのコミュニケーションを取らずとも成果を上げられることもわかっている。
日本人の多くは、幼いときから「仲良しチームは良いチーム」と言われて育つものだ。その考えは時として、チームワーキングの妨げになる。
人間関係の悪化を恐れるあまり、相互フィードバックしづらい状況になってしまうのだ。
そのような状況を改善するために、3つのポイントを紹介しよう。
1つ目は、チームの目的を共有し続けることだ。チームは目的の達成のために存在しているのであって、仲良くなることがゴールではないと共有しておかなければならない。
2つ目は、チームのフィードバックに関するグラウンドルールを設定することだ。毎回の会議で「モヤモヤ共有タイム」を設けて、フィードバックの習慣化をはかるのもいいだろう。
3つ目は、1対1で話す機会をつくることだ。全チームメンバーの前では言えなくても、1対1なら伝えやすくなることがある。


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