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case1 山田家:妻の場合 #ちいさなものがたり
親の決めた結婚でした。
お見合いで一度だけ顔を合わせて、それからひと月も経たないうちに夫婦になりました。
主人のことを何も知らないままスタートした結婚生活でした。
若い頃の主人はいつも仏頂面でね、私の作る料理にも「うまい」とも「まずい」とも言わない。味はどうかと尋ねようにも、声を掛けさせまいとするオーラが漂っていて、会話ができない。好みを探るのが大変でしたよ。
でもこだわりの強い人でしたから、よ
case1 山田家:娘の場合 #ちいさなものがたり
お父さんかあー。口うるさい人だったなあ。
勉強はしてるのか、昨日はどこに行ってたんだ、なんだその髪色は、そんな派手な格好をするんじゃない…
いろいろ言われました。顔を合わせるとね、何かひとつ文句を言ってやらないと気が済まないって感じで。ちょっとでも口ごたえをしようもんなら「ばかもん!!」って怒鳴るわけですよ。あ、お兄ちゃんもその話したの?お父さんの口癖だったもんね。「ばかもん!!」って。
まあ小
case1 山田家:息子の場合 #ちいさなものがたり
頑固な親父でした。
ちょっとでも気に食わないことがあると、すぐに「バカモン!!」と大声をあげていたもんです。
短気というか…気難しいというのとは少し違うと思うのですが、なんて言ったらいいのかな。何をするにしても、親父なりにこだわりがあるんですよね。どれもこれも些細なことで、わざわざ言葉にするほどのことでもないので、周りに要望として伝えたりはしないんですよ。でも「これは俺の思うやり方じゃない」といっ