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【英論抄読】股関節骨折の術後6カ月における日常生活動作の低下に関する臨床的予測ルール

📖 文献情報 と 抄録和訳

股関節骨折の整復術後6カ月における日常生活動作の低下に関する臨床的予測ルール

Tanaka R, Umehara T, Fujimura T, Ozawa J. Clinical Prediction Rule for Declines in Activities of Daily Living at 6 Months After Surgery for Hip Fracture Repair. Arch Phys Med Rehabil. 2016 Dec;97(12):2076-2084.

🔗 ハイパーリンク

DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

💡前提知識
『CART;決定木』に関しては、以下のサイトを参照

📚 概要

[目的]
股関節骨折の整復術後6ヶ月における日常生活動作(ADL)の低下を予測する臨床予測ルール(CPR)を開発し、評価すること。

[デザイン]
前向きコホート研究。

[setting]
病院から自宅まで。

[参加者]
股関節骨折をした術後患者(N=104)。

[介入試験]
該当なし。

[主なアウトカム評価項目]
術後6ヶ月時点でのADLをBarthel Indexを用いて評価した。

[結果]
✓術後6カ月時点で生存が確認されたのは86例(82.6%),死亡は1例(1.0%),追跡不能は17例(16.3%)であった。
✓32名(37.2%)の患者が術後6か月時点で骨折前の水準までADLを回復していなかった。
✓ADL低下を予測するモデルとして、classification and regression trees(CART;決定木)を用いた。

(1)モデル1:年齢、骨折の種類、骨折前の介護度(感度=75.0%、特異度=81.5%、陽性的中率=70.0%)
(2)モデル2;ADL椅子移動、ADL歩行、年齢と術後2週間の自立度(感度=65.6%、特異度=87.0%、陽性適中率=75.0%、陽性尤度比=5.063)

モデル1
モデル2

✓両CPRモデルのAUROCは、それぞれ.825(95%信頼区間,.728-.923)および.790(95%信頼区間,.683-.897)であった。

[結論]
股関節骨折の整復術後6か月におけるADLの低下を予測するために、中程度の精度を持つCPRが開発された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

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この論文は現、広島大学の田中 亮先生の執筆された論文である。
決定木を用いて、術後6か月のADL低下の予測がとても分かりやすく示されている。

個人的には、モデル2が臨床的にかなり重要になると思われる。
つまり、術後6か月でADLがベースラインより低下しないためには(少し意訳して解釈すると)、

①術後2週間で車椅子移乗が自立しているか
②術後2週間で車椅子移乗が自立していなかった場合、車椅子操作は自身で行えているか(且つ、年齢が83歳より小さいか)

上記を満たしている可能性が高いといえよう。注意してほしいことは、上記の条件を満たしていない方を諦める、という判断をするためにこのモデルを用いないことである(当然であるが)。

さて、なぜこのような結果になるのかと考えたときに、やはり身体活動量が重要なキーワードとなるだろう。
そして面白いと思ったのは、その身体活動量は、歩行だけでなく車椅子移動においても、有効な予測因子になり得る、ということだ。

我々療法士は、「歩行」に着目することは多くても、「車椅子移動」に関しては病棟に委ねてしまっていることが少なくない印象である。
そうではなく、術後早期から、しっかりと車椅子操作の練習をし、病棟と連携して身体活動量が低下しないよう留意することが大切だろう。

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最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。

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