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異文化交流がしたいなら史学科に来ればよろしい

 日本史であっても、歴史を学ぶことは異文化交流だと思っています。

日本史を専攻していた大学時代、ゼミの先生に開口一番、こう言われました。

「現代の常識で史料を判断してはならない」

たとえば明治・大正期の農村で。若い奥様が、農作業中に赤いタスキをかけていた、と書かれていたとします。

現代の感覚だと、彼女はお洒落だな、と思うでしょう。もしくは、何も感じずに読み飛ばしてしまうかもしれません。現代の女の子が赤いワンピースを着てお出かけをしているような感覚で、何の違和感もなく。

しかし、明治・大正期の女性は、たとえ若くても結婚したら白、よくてピンクのタスキを使うのが常識でした。赤いタスキは、未婚女性が使うものと見なされていたのです。つまり、上で挙げた「例」がもし本当に出てきたら、異常な光景だと気づかなくてはなりません。

このように、現代とは異なる常識の中で話が進んでいくのが、歴史研究で使う「史料」です。私たち現代の人間がそれらを読む時は、当時の人の立場に立って読む必要があります。現代人からしたら「不思議だな」と思う行動が彼らにとっては普通だったり、その逆もあったり……。

この感覚、何かに似ていませんか?そう、国際交流・異文化交流です!外国人の友人と遊んだり海外に行ったりすると、例えば物の伝え方、食事のマナー、交通ルールの違いなどに驚くことがたくさんありますよね。そして、相手の文化に歩み寄る必要があります。歴史学も、全く同じです。当時の人の常識を理解し、彼らの立場に立って史料を解釈する必要があるのです。これができないと間違った解釈をしてしまい、導き出される結論さえ変わってしまいます。国際交流で例えると、相手と仲良くなれない、ということです。

難しく思われがちな一次史料(簡単に言うと、当時の人が書き残したもの)ですが、一次史料を的確に読みこなすことは、過去を生きた人々と仲良くなることと同じだと感じています。

なぜ、異文化交流に惹かれるのでしょうか。自分の世界を広げたいから?世界にはびこる問題を解決する手段になるから?歴史を勉強しても知識は深まるし、社会問題を紐解く鍵にもなります。「国際交流・異文化交流」と「歴史学」は距離が離れた分野と見なされがちですが、実は共通点がたくさんあるんです。

歴史学だけでなく、どんな学問にも当てはまることですが、学問とは、興味の対象に異なる切り口からアプローチすることであると感じています。あなたの興味の大元に、最もいい方法で切り込める手段(学問)とは何か。同じ対象でも、手段(学問)の数だけ解釈のバリエーションがあります。

ひとつの学問の形にとらわれず、様々な切り込み方を身につければ、それだけ物事の本質に近づけるのではないでしょうか。「役に立つ学問」「役に立たない学問」などと振り分けられてしまう現代ですが、どの学問も等しく価値があり、世界を良くすることに貢献しているのだと言い切れるようになりたいものです。

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