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地域医療を支える病院広報のススメ  ~住民から選ばれる病院になるために~ #2

本コラムは、近年ニーズが高まっている「病院広報」について扱い、前編では、取り組む際のコツや院内の連携で気を付けるべきことを解説しました。
※#1はこちらから

今回は中編として、具体的に広報活動に取り組むためのツールの活用方法や、メディアを対象とした情報提供の手法など、実践的な内容をお届けします。

佐藤 剛:オズマピーアール ヘルスケア本部 エキスパート
大手化学・化粧品メーカーにて営業を経験後、マーケティング部門にてブランドマネジャーと営業戦略立案、研究開発部門にて新規事業としてアプリとクラウドサービスの開発マネジャーを務める。 OZMA PR入社後は医療・ヘルスケア領域にて、メーカー・医療機関・NGOなど多様なクライアントの広報組織立ち上げ、ブランディング、会見・発表会、リスク・クライシスコンサルティングなどコーポレート領域を中心に従事するほか、TETOTETOプロジェクト事務局として患者会支援も行う。MBA保有。


■病院広報の「三種の神器」さらに+αも

これまでのところで、医療機関が広報に取り組むメリットや気を付けるポイントについてお伝えしてきました。

それでは、具体的にどのような手法を用いると良いのでしょうか?
ぜひチャレンジいただきたいことを整理してみます。

<三種の神器>
既に用いている病院も多いと思いますが、改めて復習しましょう。

ホームページ
・時代が変化し、単に「情報が載っている」だけでは落第点
・多くの人は「スマホで検索→複数比較→受診する病院を決定」という行動を行っている
・「スマホ対応」「よく見られるコンテンツの整理」「情報が探しやすい動線」など、アクセス解析を行いながら“ユーザー目線”で運用する

SNS
・ホームページで表現できない「病院の雰囲気」「職員の人柄」など、よりカジュアルな情報発信に用いる
・「身近で」「気さくな」コミュニケーションを重ねることで、数千人から多いときは数万人に自分たちから情報を届けることができる
・ただし、「自分たちが言いたいこと」ばかりになったり、「事務的な連絡」が増えたりするとユーザーが離れていくので注意

広報誌
・病院で過ごす時間だけでなく、カバンに入れてもらうことで、家に帰った後もコミュニケーションを図ることができ、物理的・心理的なつながりを作れる
・できれば「学級新聞」のように文字情報を詰め込む形式でなく、写真などを効果的に用いて「雑誌」のようにレイアウトされた“読み物”にできるとなお良し
・データとしても作成しておくと、ホームページやSNSのコンテンツにも転用可能

<広報特有のツール>
続いて、マスメディアに向けてはこれらを活用すると効果的です。

プレスリリース
・新規の診療科やセンターの設立、共同研究や学会発表、市民講座など、病院はネタの宝庫、使わない手はない
・しかし「メディア向け文書」はチラシやキャッチコピーとは異なるお作法があり、見てもらう、取材してもらうためには様々な工夫が必要

ニュースレター
・「公表のタイミングに間に合わなかった」「他部門からの事後報告で知った」といった場合でも、職員のコメントや写真などを用いた豊富な情報を提供することでメディアとの接点、つながりを作る
・季節ごとの院内の催しなどには積極的に顔を出し、「撮影隊」として広報素材に活用できる写真を多く残しておくと便利

(プレスリリース作成やメディア向けコミュニケーションについては、こちらもあわせてご覧ください)


■どうしても「マスメディアに出たい!」とお考えの方へ

そうですよね、そう考えちゃいますよね。
役員や上司の“期待”と“圧”がかかっていることも(本当によく)ありますよね。

そこで私が病院広報の一環として記者の方とお話しすると感じる「メディアが医療機関を扱う視点」を簡単にお伝えします。

「やっぱりTVや新聞に取り上げてもらいたい!」とお考えの方は、これらも考慮しながらメディアむけの企画を考えてみてはいかがでしょうか?

① 「新しい治療薬の導入」「最新医療機器の導入」は、メディアにとっては「メーカー」の話題、医師から聞きたいのは「臨床での成果や課題」。

②病院について知りたいのは「どのように“地域の医療課題”を解決するか」という医療の専門家としての考え、具体的な取り組み、将来のビジョン。

③「聞かれたことに答える」だけでなく、「病院の理念」をアクセントで加えることで「一貫した姿勢」が伝わる。

④メディアへのお土産=専門性の高い人材=今後、医療をテーマに取材活動を行う際の企画相談、コメントや解説をしてもらう候補者を増やすこと。

⑤「健康情報」ではなく「医療情報」を扱えるメディアの枠は限られており、記者個人も様々なニュースに板挟みになっている、すぐに報道されなくても気長に待つ。

■最後に、地域住民から選ばれる病院になるために

昨今では、地域医療構想の議論に端を発し、病院の統廃合、機能の棲み分けや病床数の調整なども行われています。

そのような状況においては、医療機関にお勤めの皆さんも不安になったり、将来について考えたりする機会もあるかもしれません。

それは地域にお住いの方々も同じで、「あの病院はこれからどうなるの?」「治療はどう続ければ良いの?」と様々な感情を抱くものです。
私自身、少ないながらそのようなケースをお手伝いして感じることがあります。

実はこうした時にこそ、広報の役割である「ステークホルダー(利害関係者)との良好な関係構築」が効いてくるのです。

●地域の皆さんの「健康」や「安全」のために、種をまき、水をやるように地道にコミュニケーションを図ること。
●普段から積極的に、病院の考え、スタッフの顔、真摯に業務に取り組む姿勢、これらを示して「安心」と「信頼」を醸成すること。

これらの実現には、広報部門・担当者が必ずいなければなりません。

病院と地域住民、職員同士、みんなをつなぐ「鎹(かすがい)」として、病院広報に力を入れる医療機関が増えていくと、社会全体が今よりもっと幸せになるのではないでしょうか。

そんな期待も込めて、本コラムは終えたいと思います。

次回(後編)は、私がお手伝いしている横浜市の基幹病院の広報部門の方をお招きし、「実際、広報やってみてどうですか?」とリアルな声をお聞きする予定です。


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