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#小説

きみも【卒業】してしまうのか

きみも【卒業】してしまうのか

通り沿いの雑多な居酒屋で、夜風に吹かれながら飲むハイボールは最高だ。

「きみがいつまでも若くて安心した」

ジョッキに入った氷を鳴らしながら、友人は言う。同い年の彼とは23歳の時に森美術館で出逢った。意気投合して小松(およそ六本木にあるとは思えない大衆的な居酒屋)で飲んだのを覚えている。

当時、彼はM1、私は社会人1年生だった。理系と文系、業界も立場も違う。それでも、お互いに好きなものは

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泣けるほど幸せな3ヶ月間。私この為に生きてきたって胸張って言える。

泣けるほど幸せな3ヶ月間。私この為に生きてきたって胸張って言える。

楽しかった。幸せだった。毎日泣きそうに美しかった。頭の中で30年間、いやそれは言いすぎかもしれない、けれどずっとずっと描いていた世界の夢に、私は一歩も二歩も近付いて、毎日まいにち、今日もありがとうって思いながら過ごしてた。

海の向こうにどんな景色があるか知りたかった。夏のクロアチアの海は、夏の北欧は、曇った日のロンドンは、原チャリで駆け抜けるミャンマーの遺跡と土の色は。

旅をするために生きてき

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「現実を見ろ」という言葉の意味が変わる時。

「現実を見ろ」という言葉の意味が変わる時。

ねぇお父さん、留学に行きたいの。
ねぇ旦那さん、海外旅行に行きたいの。

あぁもう働きたくない。
もう辞めたい。

負の感情であれプラスの感情であれ、何か新しいことを望むときに、いつもどこかしらで出会ってきた「現実を見なさい」という言葉。

仕事はどうするの。お金はどうするの。家族との暮らしは、ほかの「現実的な」諸々のことは。

たしかにそうね……私はとても夢見がちなのかもしれない、と諦めてきたい

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