見出し画像

〈セミナーレポート〉大豆生田先生と考える 自然とのふれあいを大切にするドイツの園庭と日本の園庭

2024年1月18日(木)に玉川大学の大豆生田先生をお迎えし、自然とのふれあいを大切にするドイツの園庭と日本の園庭セミナーを開催しました。
今回は日本生態系協会さまと鹿児島県の吉田南幼稚園さまにご登壇いただき、ドイツの自然ゆたかな園庭づくり、常にアップデートする園庭環境などを事例から紹介していただきました。

自然ゆたかな園庭環境づくりに取り組んでいる園は全国に増えてきています。「こども主体」「環境教育」「地域開放」などの言葉も注目されていますが、実際に園庭環境に落とし込むことがどういうことなのか。
園庭環境について悩まれている園さまも少なくないかと思います。
今後の環境作りのきっかけに、ぜひご活用ください!

※こちらからセミナー動画をご覧いただけます。


ドイツの園庭:日本生態系協会(3分43秒)

日本生態系協会さんは人と自然が共存できる「くにづくり」や「まちづくり」に向けて国や自治体、学校などと連携しながら政策提案や調査研究、普及啓発などを行っている団体です。
1999年から隔年で開催され今年13回目の開催となった「全国学校・園庭ビオトープコンクール」も主催している日本生態系協会さん。
ドイツでも行われているコンクールを参考に、地域の興味深い事例を集約して各地に発信していくことで普及を目指すためにスタートされました。
幅広い発達段階を対象に実施しているが、近年では幼稚園・保育園・こども園の参加率が上昇しており、園児が試行錯誤したり、地域を巻き込んだりするなどおもしろい内容のものも多くなっているコンクールです。

(公財)日本生態系協会の主な活動

日本生態系協会さんのビオトープとの出会いは、ドイツです。自然と共存した街づくりに向けて、地域の自然をどう守り、どう再生していくのかという事例に出会いました。さらには学校でも環境学習のためにビオトープづくりが行われている。

自然との共生を考える野外の実験室

「学校ビオトープはただ自然とふれあうだけの環境でもなければ、自然との共生って何をしていいかわからない難しいものと思う人がほとんどだが、学ぶということが1番大切なことなので、うまくいかなくてもいい、むしろうまくいかない方がいい、という考えもある」とお話されました。

園庭に自分たちでビオトープづくりをするためにコンクリートを割る小学生
写真提供:(公財)日本生態系協会

ドイツでは各州から園に「今の砂場と遊具と芝生の園庭が園児にとって望ましい環境ですか?」「子どもの感性が育まれる環境を」というような言葉が発信されています。それにより各州独自でコンクールが開催されるなど様々な取り組みが盛んに行われています。
そんな中で4園の実践について、写真を交えてご紹介いただきました。

大豆生田先生講評(29分43秒)

日本生態系協会さんのドイツの事例に対し、大豆生田先生から講評をいただきました。

「人と自然が共存できる国や街づくりはこれからの保育の場でとても大事なテーマになってくる。子どもが大事なのはもちろんですが、それ以外のノンヒューマンの視点をもつことも大事で、自然をゆたかにすることで地域の活性化にもつながる」とお話された大豆生田先生。幼稚園教育要領や保育所保育指針にも入っていないドイツの環境教育の視点や、園庭環境には多様な人たちが関わり、みんなで作り続けるという視点も含めこれからの可能性が豊かになる事例ばかりだったと強調されました。

日本の園庭:鹿児島県吉田南幼稚園(34分35秒)

地区の人口が約1万人で鹿児島市の北部にある吉田南幼稚園さん。誰かが何かに魅力を感じてくれないと子どもも保育者も集まりにくい地域で園運営をしていると仰られていました。
その中で10数年かけて少しずつ変化してきたASOBIO園庭に対する取り組みのきっかけや子どもたちの姿の変化と遊びのフィールドを地域に広げている現在進行形の取り組みの経過をお話いただきました。

吉田南幼稚園さんの実践事例のテーマ

園庭の変化と共に子どもたちの遊びも変化してきました。緑が豊かになることでたくさんの生き物が生息し、生き物に触れる時間が増え、自然物を活用した遊びや五感を刺激する遊びが増えました。それにより園庭全体で様々な種類の遊びが生まれ、遊びのスキルも身についてきたとのこと。
園庭の豊かさが子どもたちの心の豊かさに繋がっていることを日々実感していることが橋口先生にとっても喜びなっているとお話されました。

吉田南幼稚園の子どもたちの遊び

先に登壇いただいた日本生態系協会さんのお話を過去に聞く機会があり、「園庭に地域の自然を取り入れられていない」という新たな問いが生まれました。
地域の休耕地を子どもたちに使えないかという相談を受け、この自然ゆたかな土地を「子どもたちと地域の人が関われる場所」や「園庭ではできないダイナミックな自然体験ができる場所」に整備するという決心をされました。現在も進めているこのプロジェクトについて、様々な事例を交えてお話していただきました。

遊びのフィールドを地域へ

大豆生田先生講評(1時間2分48秒)

吉田南幼稚園さんの事例に対し、大豆生田先生から講評をいただきました。

「吉田南幼稚園さんの園庭を変えていった話の中でとても重要だと思ったことが『園庭の拡張』という点。地域を保育のフィールドとして考えた視点はこれからとても大事な視点になる。人は身体を通して育つ中で、地域の自然にふれる原体験というのは育ちの中で極めて重要な視点」と大豆生田先生。
「園が街の真ん中に位置づくような取り組みが、いろいろな人にもっと知られて、ここで子育てしたいとなることを願っています。できる応援はさせていただきます」と締めくくられました。

園庭環境づくりのポイント(1時間9分39秒)

「自然を取り入れた園庭や、常に環境をアップデートしていく園庭をどのようにつくっていくか」弊社の長沢より説明いたしました。
弊社が手掛けるASOBIOでも地域の生態系を取り入れることや未完成の完成ということを意識してランドスケープデザインをしています。
その中でこだわっていることが2つあります。

1つめは園庭の植栽です。健全な森や林の姿を意識した植栽で様々な植物や生き物が共生できる環境を目指しています。2つめはチームビルディングです。園庭のデザインや設計は先生たちと1つのチームになってつくりあげます。その過程で保育環境を考え、先生同士がお互いに意見を交わすようなカルチャーを醸成することも目指しています。

植栽へのこだわりと風通しの良いカルチャーづくりが大切

質疑応答(1時間21分52秒)

最後に質疑応答の時間を設けて、ご登壇いただいた両園さまにご回答いただきました。これから環境づくりを進めようとしている方にとってのヒントを語っていただいております。
そのほか答えられなかった質問に関しては下記リンクよりご回答しております。
ぜひ、ご覧ください。
Q&Aはこちらから↓

https://note.com/ouchien/n/ne9a4dd235b5d


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?