見出し画像

〈Q&A〉大豆生田先生と考える 自然とのふれあいを大切にするドイツの園庭と日本の園庭

日本生態系協会さまと吉田南幼稚園さま(鹿児島県)にセミナー中に回答できなかった参加者からの質問へのご回答をいただきました。

Q1.ドイツでは自然景観設計士がアドバイスをし、園庭を変化させていったことが分かりました。
日本ではこの自然景観設計士にあたいする資格はございますか?

日本生態系協会さま
(公財)日本生態系協会が認証する「ビオトープ管理士」があたります。「ビオトープ管理士会」のサイトにて、一部の認証者を紹介しています。その他、地域の自然を生かした保育環境づくりの考え方をもつ保育者を認証する「こども環境管理士」もあります。
ビオトープ管理士サイト↓↓

こども環境管理士サイト↓↓

Q2.ビオトープの管理という点で質問です。有害昆虫による事故防止・対策について、学校・園の取り組みや子どもたちはどのように学習しているのか教えていただければと思います。

日本生態系協会さま
園庭で見られる危険な生きものは、ハチの仲間やイラガ、チャドガなど限られます。国内外の園では、危険な生物について、怪我の度合い、怪我を意図的に回避できる可能性の有無から、取り除くか否かを判断している傾向にあります。例えば、イラガの幼虫は、触らなければ、怪我をすることはありません。色や形も特徴的であり、おおよそ居場所も限られています。ビオトープコンクールの参加園でも、あえて取り除くことはせずに、園児にイラガの幼虫の居場所を示し、触るとどうなるかについて教えている園が見られます。その園の園児は、降園時に「この虫、危ないよ」と保護者に教えていたりします。

Q3.築山がある園とない園で発生するケガの度合いに違いがあると聞いたことがあります。築山がある園で生活している子どもたちの方が、大きなけがの発生件数が少ないということです。先生の園では以前と比べてケガの内容に変化はありませんか?

吉田南幼稚園さま
過去5年の園庭で起こった怪我の件数を大小含め調査しました。(屋内環境の怪我は除きます。)
件数に関しては毎年変動がありますが、10年前と比べると減少しています。また、度合いに関しても医療機関を受診するレベル(緊急性の高い)の怪我発生件数は確かに少なくなった気がします。
実際に調査すると面白いかもしれませんね。築山では「駆け上がる、駆け降りる」動作が生まれ、普段使わない筋力などへの刺激があります。また築山の周囲は死角となる部分があるため、子ども達もその付近では走るスピードを減速させたり、周囲を確認するなどの危機管理能力が育っているような気がします。
※園庭での怪我の件数(過去5年)
H30(3件→打撲‐2/ 靱帯損傷‐1)
R1  (6件→口腔‐2 / 打撲‐2 / 捻挫‐1 / 頭部外傷‐1)
R2  (1件→捻挫‐1)
R3  (1件→捻挫‐1)
R4  (3件→唇外傷‐1 / 打撲‐2)

Q4.スタートは手弁当で植栽などから少しずつ取り組まれたということですが、初めの頃に木の植栽以外では他にどの様なことに手をつけられたのか、参考までに教えて頂けたら幸いです。

吉田南幼稚園さま
植栽を植える以外に「水連鉢を購入しメダカを飼育する」「芝生を購入して園庭のコーナーに植える」「観葉植物等を地元企業さんにお願いしてリース契約し廊下などに設置する」などからスタートして、じゃぶじゃぶ池・築山・ツリーハウスなど1年ずつゆっくりと環境の変化を子どもや保育者と楽しみながら行いました。大きな変化について、子ども達は大喜びですが、保育者は子ども達の日常の行動が変化するため不安要素もあったようです。予想されるネガティブな姿も想定しましたが、それ以上に園庭環境の変化で生まれるポジティブな子ども達の遊びの姿を共有しながら進めていきました。

Q5.地域の自然は例えばどのように取り入れたらいいですか?地域の植物を植えるということですか?

日本生態系協会さま
昆虫など地域の生きものが生息しやすい環境をつくるためには、そうした生きものが食べることができる、地域の自然(在来)の草・中低木や高木を植栽することが基本となります。

Q6.園庭がピロティになっていて、日陰なのですが、自然との共主体は難しいですかね?

日本生態系協会さま
自然界でも日陰(緑陰)を好む動植物がいます。日陰ならではのビオトープの創出は可能です。

Q7.園庭・パークの管理や清掃などは職員や子どもたち全体で行っているのですか?業者さんを入れていますか?管理が上手に行きとどくコツはありますか?

吉田南幼稚園さま
鹿児島市は高齢者等活躍促進加算というものがあり、65歳以上のバス運転手を引退された職員が用務員として日々管理をしています。園庭敷地の清掃や剪定なども用務員を中心にバス運転手2名、運動指導員1名などで時間を見つけながら実施しています。プレイランドは敷地が広いため私も含め5名~6名程で草刈り機を使い清掃していますが、大変なので来年度から親父の会の奉仕作業で協力してもらい維持管理にも携わっていただきたいと考えています

Q8.見通しの良い園庭から、自然の詰まった園庭へ、安全面の確保などで、変えた・工夫したことなどがあれば知りたいです。

吉田南幼稚園さま
結果論ではありますが、見通しが良すぎる園庭の頃はボール遊びや鬼ごっこなどの遊びが混在してしまい怪我が多く発生していました。園に植栽等を植える際はゾーニングを個人的には大切にしており、遊び場が混在しないような空間作りを意識したので怪我等が減ってきました。この点は園庭の形状によって工夫すると安全面の向上にもつながるような気がします。

Q9.園庭で自由に遊ぶ際、死角になってしまう場所などの対応はどのようにしておりますでしょうか?

吉田南幼稚園さま
本園の園庭は完全な死角の場所がありません、その代わり部分的視覚(一方向からは死角だが角度を変えると死角ではない場所)はたくさんあります。保育者の園庭でのポジションは同方向からだけでなく園児たちを外から囲むよう様々な視点で配置しています。細かく、どこから見守ろう・関わろうと決めたわけでなく保育者が安全を考え自然とそのようなポジションをとるようになってきました。※築山土管の中、ツリーハウスの頂上は死角度が高いポイントとして自園ハザードマップに記載しています。園庭ハザードマップがあれば怪我が発生しやすい場所を保育者全員で共有しながら安全を見守ることができます。(それでも怪我が起こることはありますが、それも育ちの姿と捉えています)

Q10.園庭での未満児と以上児の遊び方の見守りを教えてください。人数の把握や職員同士の共有の仕方など。

吉田南幼稚園さま
基本的に定数以上の保育者が勤務しているので、園庭では各年齢の担当するクラスの子ども達が目に入る位置で見守り・関わりをしています。
【以上児】各年齢によって保育者の関り方は異なりますが3歳児クラスは先生と一緒に!という子が多いので小集団が一緒に園庭内を動きながら遊んでいます。4歳児後期~5歳児クラスは子ども達同士の遊びが増えるので、全体が把握出来る位置で見守りと関わりをする保育者。何か「気づきや探究する子」へ近い距離で関わる保育者がいます。これもルールを決めた訳ではないですが「安全・育ち」の両軸を大切にする保育者が考えたものです。
【未満児】基本的に保育者が子ども達の後ろをついていく援助が多いです。子ども達が、興味関心が高いモノや場所に進んでいくので、その能動的な行動を大切にしながら援助しています。

Q11.園が地域の拠点に。まさに当園でも目標にしているところです!私たちの地域だと、街中ということもあり自然環境も創っていく環境がメインになるかと思います。また、市も大きい部類の市になり行政や地域の方も巻き込んだ支援でもハードルが高くなるケースがあるかなと思っております。そういった環境地の中で園庭が子どもたちを中心とした多様な人、生き物の集いの場にしようと思ったときにチャレンジできることをアドバイスいただけますと幸いです。

吉田南幼稚園さま
回答になるか分かりませんが、鹿児島市の農地は数年前から基腐病という畑の病気が流行り、吉田南でも毎年植えるサツマイモの栽培が出来なくなりました。そこでコンテナファームという可動式菜園を園庭のあちこちに配置して動く菜園を作りました。菜園があるだけでも様々な生き物が現れるようになります。また、ASOBIOアンバサダーの方で行政と共にみつばちプロジェクトなどを行っている園もあったはずです。大都市になればなるほど、日常で自然と触れる機会が少ないですし、大規模な園庭改修はハードルが高くなりますよね。是非小さな事から少しずつ環境構成していき、子ども達が自然に興味関心を持てるよう楽しみながら職員の皆さんで考えてみてください。

Q12.まずは第一歩として予算をかけずに、落ち葉や廃材、地域の種などを使って生態系を作って行こうと思っています。他に工夫できることがあれば教えてください。

日本生態系協会さま
過去、ビオトープコンクールにおいて、1㎡程度の規模のものが上位5賞を受賞したことがあります。そこは園児が園の中で一番大好きな場所になっていました。予算の観点からいえば、水辺はお金がかかります。草はらの創出から始めることをおすすめします。バッタやカマキリの訪れを目標に場づくりを試みてはいかがでしょう。

吉田南幼稚園さま
私も予算がなかったので廃材や手作りからスタートしました。そこからの①環境の変化→②子ども達の変化→③保育者の変化、を目の前で見ていると巻き込まれる人が出てきて園庭で過ごす時間が楽しくなってきます。個人的には【どんなイメージがあって、どんなものを作りたいのか。子ども達にその環境を通してどのようなことを伝えたいのか】が大切でした。具体的なイメージが持てるように公園の画像をたくさん見たり、海外の公園デザインや教育機関の写真などをいつも見ています。
イメージや、その場に対しての願い、思いがあることが持続するために大切な要素だと考えています

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?