アイドルなんか辞めた方がいいよ 輝いてるのはあの時だけだよ アイドルなんかならない方がいいよ きみの輝きは売り物じゃないよ 夢を売る仕事に夢を見た14 好きなものに手を伸ばした12 なりたいものになろうとした13 きみは間違いじゃないよ11 でもきみが夢を売れるわけじゃないんだよ 夢を剥ぎ取り売る人がいるんだよ きみが少女である限り 周りが大人である限り 残念ながらきみはバカで 周りの大人はもっとバカ アイドルなんか辞めた方がいいよ 輝いてるのはあの時だけだよ アイドル
アマネの生きる星には、朝の季節と夜の季節がある。朝の季節は五年、夜の季節は七年あり、星に暮らす者はそれぞれの季節用の家を建てて生きている。 アマネは裕福な家系の一人娘で、朝の家も夜の家も街で一番大きく豪華なことで有名だった。街にアマネを知らない者はいなかったし、アマネがどれだけ愛されているかについても同様だった。 アマネ自身も、自分が周囲にどれだけ愛されているかよく理解していた。アマネが生まれてから八度目の夜の季節三年目の時に、弟が一人生まれた。一人娘であるがゆえに非常
友達がアイドルをやっている。 大学の時の友人で、アイドルになるところ、活動を頑張るところを側とは言えないかもしれないが見てきた。 頻繁に遊んでいたわけじゃないけど、私は彼女がずっと好きで、陰ながら応援していた。 自分の人生がうまくたちゆかなくなって、自分のやりたいことというのを見つめ直してみたときに、そのひとつが「彼女の側で応援する」ことだった。 正直に言えば「地下アイドル業界」なるものをこの目で見て経験にしたかったとかそういう気持ちもあるが、人手不足の事務所に私が入って運
葬式に行きたいな、と思った。 不謹慎というか、そのようなことを考えたら死んでほしくない人が死ぬような気がして打ち消したくなるが、打ち消せる思考などほとんどない。それに、これは定期的に思うことだ。 葬式とは、私の中で思い出だ。父方母方双方の祖父母に兄弟が多かったからか、物心もつかない頃からいくつもの葬式に連れられて行った。 誰だかわからない人の葬式に何度も何度も連れて行かれるうちに、子供の私に葬式は「旅行のきっかけ」くらいのものになった。 高齢の親戚がいる限り、葬式は発生する
2023にはじめて経験したことと、 2024のやりたいことリストです。 2023に初めて経験できたこと メンコンに行く 雨の中野でテントを立てる シェアハウスに住む 前年比300%以上の人に出会う ちんどんやさん体験をする 北海道でドライブ いとこの赤ちゃんを愛でる 友人の結婚式に参列 陸の孤島へ行く トイストーリーホテルに泊まる ナイトビニールプール アイドルやさんになる イラレを使えるようになる 経理ができるようになる パワハラと劣悪労働環境へ法的措置を取る コロナる
※仕事で鬱になった直後殴り書いた日記です。当時の勢いを残すため何も手を加えてません。よってたいへんに読みづらいです。 日記10/26 死にたいです 仕事を減らして貰ったにも関わらず疲労感は蓄積するばかり 経理だけならと快諾しておいてまともにできていない 一日1.2時間後が限界で、寝転がってぼうっとして何も考えられずにいる 仕事面でもやりたいことがもっとあったはずなのに 会社潰したくないから頑張ろて思ってたはずなのに 今全部どうでもいいや なんかもう無理 好きな本も読めない
お久しぶりです。 小説を上げるために立ち上げたnoteも賞の応募に専念とかなんとか言って途切れてしばらく経ってしまいました。夏に一度更新したけれど。 色々と環境が変わって今シェアハウスに住んでいます。 そのシェアハウスにて、文フリに本を出そう、シェアハウスでアンソロジーを作ろう、テーマは「生活」で。 となって、私は嬉しくってアンソロジーに加えて短編集を出しました。 短編集は在庫分のちほど通販予定ですので、よろしければ是非。 本題はアンソロジーです。「生活」がテーマ、かつ自分
無人島に行ってきました。 正確には陸の孤島であり管理人さんと貸与物のある、特別なキャンプ場といった感じでしょうか。 友人の企画のもと三十人以上の方が参加した修学旅行のつらいとこを全部抜いたみたいな一泊二日の旅行はあまりにも濃く、未だ楽しかった気持ちが抜けきっていません。 一日目、新宿を少々迷いつつシェアハウスのメンバーとなんとかバス前に到着。近くのコンビニでお昼を買いつつ、この中のどのくらいが同じ無人島に行くのだろうか……とぼんやり考えました。 なにせ三十人以上なので初対
白いTシャツがずらりと並んでいる。黒いパンツも。全部同じに見える。彼に興味が無いわけじゃないはずだけど、彼を理解するのは難しい。 大学生の時に告白されて、格好いいけど変わり者で有名だった彼を恋人にした自分に惹かれてすぐに付き合った。女友達から羨まれ、男友達からあいつ変人じゃんと揶揄われて嬉しかった。その時から彼は白いTシャツに黒いパンツがトレードマーク。初めて泊まりに行った時と変わらないクローゼット。部屋だけは少し広くなった。卒業して一年、同棲を始めて半年が経つ。 彼の
フローリングの溝に覗かれている。 テーブルに向かったりベッドに寝転がったりして視線を逸らすけれど、気が付いたら見てしまう。見られているよりは見つめ合っているほうがいいと考えてのことかもしれない。わからない。私は私の肉体のことがわからない。脳と心すら切り離されている。 フローリングの溝の向こうには際限のない暗闇が広がっている。または泥沼が。または下水道が。または鏡に映ったような世界が。または水銀が。私を覗く者は加害者に違いない。なんらかのたくらみがあって、隔たれた世界から
防波堤のフナムシとストロングゼロの空き缶。五年前にドンキで買ったスウェットにナイキのサンダル。しゃがみこんで吐いてる彼女を見て「私にしたらいいのになあ」と思った。 真夜中の零時に呼び出された。 私はもう布団の中でうつらうつらしていたけれど、サイレントモードにし忘れたスマホがけたたましく鳴り始め、若干の苛つきを覚えながら電話を取った。 「みずきぃ。ぐすっ。今会えるっ?」 私は布団から飛び上がって、返事をしながら髪を梳き、スマホを耳に当てたままアパートを飛び出した。生
お父さんが死んで初めてのお盆。 飛行機に乗らないと行けないおじいちゃんの家に、僕とお兄ちゃんとお母さんで向かう。 僕が生まれた時から暮らしていたのとは違う町にお父さんが埋められているのが不思議だったけど、お母さんは「そういうものだから」と繰り返し僕をなだめていた。僕じゃなくてお母さんをなだめているみたいだった。 法事は退屈だ。ずっと座って黙っていないといけないし、みんな暗い顔をしている。お母さんは無理に笑っていろんな親戚の人に挨拶をしているし、おじいちゃんもおばあちゃ
淡いノイズが聞こえて、カーテンの中へ潜り込んだ。明け方の空の色もまた淡く、私の目を覚ます力を持たない。曇りガラスに耳を当てて、嵌め殺しの窓枠に肘を引っかけてもたれかかる。 雨の音。 それも結構強い雨。ガラス越しに絶え間なくざあざあとノイズが走る。向かいのビルや真下のコンクリートに打ち付ける雨粒の音。目を瞑る。暗闇で目を瞑るよりは薄い暗闇で耳を澄ませる。無意識に足の指がぴくりと動いて、親指の爪がパパに当たる。パパは死んだように眠っている。 陽気な人で、昨日はお酒も飲んで
月並みなことを言うようだけど、きみは何よりも綺麗なんだよ。 朝露の煌めきより、午睡の重さより、夕日の熱より、星の微かさより。 ただそこに在るというだけで僕を認め、許し、時に罰するきみは、何よりも素晴らしいもの。 きみが生まれてきた世界は素晴らしい。きみが生まれてきたのだから。 初めてきみに会った時に僕を貫いた衝撃は、今も僕の軸となって、僕はその周りをぐるぐる回りながら生きているにすぎないんだ。きみは僕の中心。僕の存在意義。 白い肌も、冷たい体温も、僕が切り落として
川を下っている。 澄んだ水が淡い空を反射して煌めいている。 木製の小舟はところどころ黴て黒ずんでいるもののその役割を十分に果たしている。 私は前を向いている。 楷を川底に突き立てて無理矢理に前進している。 川の流れは緩やかである。 川岸には満開の桜草が帯を成している。 私は前進している。 川を下っている。 川幅は広く、私は真ん中で漂っている。 時折強い風が吹き抜ける。 私は小舟ごとぐるりと回転する。その時に限って、楷はなんの役割も果たさなくなる。 私は後退している。 川を下っ
コンビニのバイトを始めて数か月経つ。だいぶ業務にも慣れてきたし、職場の人達ともそれなりにうまくやっている。 しかし、最近になってちょっと気がかりな、というか憂鬱なことがある。数週間前に入ってきた後輩だ。 彼は口数少なく、お客さんに対しても無愛想で時々店長に注意されている。一緒のシフトになることが多く、まだ業務を覚えきれていない彼に教えることもよくあるのだが、その度緊張する。この子は今口うるさい先輩を疎ましく思っているだろうか、それとも教えてもらったことに感謝してくれて