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まっさらな気持ちで過ごした島での1年が、また都会で”スキルを磨く”選択に繋がりました。

島根県の離島、隠岐島前地域で大人の島留学・島体験に参画した皆さんの来島前・来島後、そしてこれからについてお届けする「私、島で働く。」

来島のきっかけから島での仕事や暮らし、自分自身の変化など
1人1人のストーリーをお届けしています。

今回お話を伺ったのは、2022年4月から西ノ島町役場企画財政課に所属し広報業務に携わっていた吉谷さん。

2022年度大人の島留学生吉谷さん
(取材当時社会人6年目)


「島に来て、暮らしの楽しさに気づいたし、ある意味自分の実力がわかる場所だから1度来てみるといい!」

そう話す吉谷さんは、外資企業での就業経験や転職を経て大人の島留学に参画した社会人生活6年目。都会で働いていた経験なども織り交ぜながら「”島で働く=キャリアを諦めること”なのか」をテーマにお話を聞いてみました。

少しボリューム感ある内容になっていますので、ぜひ目次もをご活用ください!


ようやく辞める決意ができて

ー新卒でヨガのインストラクターになり3年ほど勤務した後、同じくヨガ関係の外資アパレル企業に転職したという吉谷さん。自分の中で健康やセルフケアが、社会経験の中で軸になっていったといいます。

吉谷「転職して神戸から心斎橋に通っていたので通勤に1時間くらいかかっていました。朝早いときは始発で行く日もあって。周りも健康志向の子が多くとても楽しかったのですが、もう少しペースを落としてゆっくりと生活したいなと思うきっかけがあって。」

島に来てからもイベントでヨガ教室を開催してくれました。

吉谷「自分の携わっている仕事が”心身の健康やセルフケア”をテーマにしているのに、大都会でハードワークをしている自分の葛藤というか。そんな状況にもやもやしていたとき、大きな病気が分かって手術をしました。それが島に来るちょうど1年前。そろそろ退職してペースダウンしようと決めることができました。」

ーゆっくり過ごすこと・スローライフをテーマに島に来たという吉谷さん。実際に島に来てみると想像とリアルにギャップを感じたこともあったといいます。

吉谷「もともと人に会わずに1人でパワーチャージするタイプだったけど、島で外に出たら絶対知っている人がいて、家に居てもシェアハウスなので皆がいる環境。分かってはいたけれど、これまでの自分のパワーチャージの方法は難しいと思いました。」

ーただ、その生活にも半年経った頃には慣れたという吉谷さん。1人になれないこと=しんどいとは思わなかったそう。逆に、シェアハウスに誰もいない日、部屋に引き籠っていた日、外の人とも話さない日にしんどさを感じるようになり、自分こんなタイプだっけ?と自身の変化も感じたといいます。

吉谷誰かと一緒に美味しいご飯食べる方が一人で食べるより美味しく感じるとか、その後にリビングで団らんする時間が落ち着くとか、何事も楽しそうにするシェアメイトを見てやってみようと思えたりとか、そういった感覚を初めて体験しました。そんな感覚を持ち始めたのが、半年経った9月頃で。ようやく島に馴染めてきたように感じ始めましたね。」

手探りの日々を、取り敢えず、動いて、やってみて。

【企画財政課での主な業務】
・西ノ島町公式SNSの運用
・西ノ島町公式note立ち上げ、運用
・町内広報誌の作成
・その他広報業務
・西ノ島チャンネルの撮影

ー続いて、島での仕事について伺ってみました。前職でも、ブランドを広めるため企画・発信業務に携わっていたという吉谷さん。マニュアルがある仕事よりも、自分で自由に作り上げられる仕事が好きだったことから島での仕事も広報業務を選んだそう。

実際に働いてみると、反応がリアルタイムで島の人からかえってきたり、島ならではの人との距離の近さがモチベーションの維持に繋がっていたそう。一方、これまで働いていた都会での環境や民間企業との比較して苦労した場面も多かったよう。

吉谷「これまで所属していた会社が”皆で作り上げる”っていうスタンスだったので、島に来て1人で作り上げるっていうことが難しかったです。自分自身も経験や知識があったらいいけどほぼ未経験だし、広報のプロではないから、分からない部分も多く、手探り状態でした。一人でやってみると自分は全然実力がないと感じましたね。」

吉谷「そんな中、自分1人で決めて進めていくって結構勇気がいることで。行政という立場での発信になるので、西ノ島の印象も変わってくる。今進めている仕事が正解なのか正解じゃないのかもわからない、本当にこれで大丈夫なのかな?というところでモチベーション保つのは難しいことでした。」

ー他の自治体のPRを参考にしながら、取り敢えず、動いてやってみて、反応がよければ続けて。そんな風に仕事を進めていったといいます。

実際にインスタに掲載した写真

吉谷「最初のうちは、見るもの全てが新鮮で、絶景なんか見ると、絶対これを発信したい!って思うんです。でも段々それも日常になってきて、西ノ島の魅力ってどう映し出すのがいいのかな?って迷走してくるんです。」

「そんな時上司からアドバイスを頂き、各地区の懐かしい写真をインスタに掲載したり、懐かしの商店街なんかを載せた時は沢山のコメントが来て。”コロナで帰れてなかったから帰りたくなった”とか”懐かしくて落ち着く景色です”とか。ちゃんと島外の人にも届いてるんやなって実感できて嬉しかったです。」

暮らしと仕事の境界線

ー都市部での社会人生活を経験した後、大人の島留学に参画した吉谷さん。島に来るまで遊びと仕事を分けて考えていたけれど、そのやり方を見直さないと変わらないことを学んだといいます。

吉谷「休みの度に外に出て、地域の方とコミュニケーションをとるシェアメイトがいたんです。いつのまにか彼女は島中に知り合いが増えて、結果的に地域の方を巻き込んで大きなイベントを企画し大成功して。そんな彼女の姿を見て、私もみんなと同じリズムでちょっと外に出てみるようになりました。」

吉谷「無理をしない範囲で少し外に出てみたら、人間関係が広がっていって。西ノ島の同期の大人の島留学生は本当に元気でフットワークが軽くて、色んな所に行く人が多かったんです。それでまた仲良くなって、お誘いが増えて仕事に繋がったりお裾分けを頂けたり、好循環が自然と生まれていました。」

1人で住んでたらこんなに人脈も広がらなかっただろうし、皆の人脈が集結している感じがします。それがすごく良かったなって。皆仲良くなるタイプの人も違えば、遊びも違うから一人ではできない経験ができたのも良かったです。」

ーただ、小さなコミュニティでの暮らしの中で気にかけることも多かったという吉谷さん。そんな場所での在り方について聞いてみました。

吉谷「いい風に見られようとして疲れてしまった時期がありました。先ほどもお話ししたように、西ノ島のみんなは素直で明るくてとっても元気なんです。だから私も島留学生として明るく楽しそうに振る舞わなきゃ!って勝手に思っちゃう時期がありました。」

プラムを漬けた日

吉谷「私はわりとドライな性格で話し方やリアクションも一定なので・・それを変えないと!と無理に思ったり、明るいみんなを見て羨ましくさえ思えたり。でも私は私だし、そのままの自分を出した方がいいなって思い直すんですが、それができなくなっていって・・。」

そんな日々を過ごしながらも”暮らしの楽しさ”に目を向けていたという吉谷さん。島に来てからは、軸である健康的な生活ができたそう。朝太陽の光で起きて、家に帰って自炊をして、そのままお弁当を作ったり、朝はコーヒーを入れる時間を作れたり、こういった生活が当たり前にできるのが幸せだと感じたそうです。

大人の島留学の魅力はシェアハウスにあるような気がすると話してくれた吉谷さんですが、こうした暮らしの中でできた繋がりが仕事の進め方にも影響したそう。どんな変化があったのでしょうか?

吉谷「取材の依頼をした時にすんなり良いよって言ってもらえるようになったことが大きかったです。あと、段々と島のことも分かってきて、どんな人がいるのかも覚えてくるので、それに伴って仕事での悩みも変化していきました。」

「例えば、最初の頃は発信の仕方そのものに悩んでいたけど、”この人のこういう所がすごいからこういう風に発信したいです”っていう風に心情も変化していって。仕事の中で、アドバイスを求めるというより、これがやりたい!っていう風に少しずつ洗練されていった感覚がありました。」

都会と島の働き方の”違い”

ー都市部でのキャリアと地方や離島でのキャリア。環境が変われば、これまで積み重ねたスキルの活かし方や、よりよい仕事の進め方も変わる。両方を経験した吉谷さんにその”違い”について聞いてみました。

吉谷「都会はスピード感を持ってたくさんの量の仕事ができる場所、田舎は一つの仕事を丁寧にできる場所だと思います。例えば、インタビュー記事の添削。今までだったらスピードを考えて、メールで送って修正をもらっていました。けれど、島では直接その方に会いにいくことが増えました。」

吉谷「その場で車走らせて、お話を聞いた方のところに行って確認して頂く。そのまま30分くらいお話しをしたら、信頼関係も生まれるし、プラスアルファで新しいお話を聞けることもあるかもしれない。丁寧に仕事をしているなって感じがします。」

ー島という小さなコミュニティならではの働き方を実感していたようです。都会と島でのキャリアの向き合い方についてはどのように感じましたか?

吉谷「都会で積み上げたキャリアを島で活かしてバリバリ働く!”プライベートを犠牲にしてでも働く!”今はそういう時期!”っていうスタンスで来ると、少しギャップを感じるのかなと思います。」

吉谷「都会と島を比較すると、やっぱりこちらはプライベートから仲良くなってコミュニティに入っていくほうが自然の流れで。仕事のことを考えるのはその次かなって学んだんです。まずは地域のなかに入って島のことをしって、そこから自分がどう貢献できるのかなって考えるようになりました。」

都会・地方、両方を選択肢に持てる

大人の島留学制度を利用して島を選択てくれた吉谷さん。働き方や暮らしの違いを感じた日々の中で、選択肢の幅の広げ自身の実力を計ることができたといいます。

吉谷「社会人6年目の今、島暮らしを選択して、最初は定住も視野にいれていました。1年過ごした結果、島の自然と優しい島の方々にパワーチャージされ、島に来る前より仕事に対してのモチベーションが上がりました。その結果、もう一度都会で働いてスキルを磨こうと思ったんです。」

「それに島の方達も、”もちろん定住してくれれば嬉しいけれど、20代はどんどん外に出て挑戦して、また帰って来れば良い”と言ってくださるんです。都会と田舎の生活をどちらも経験して、自分の選択肢の幅が広がったなと思います。」

離島の日

島暮らしと聞くとハードルが高く思われがちだけど、”本当の自分を知れる場所だと思う、試してみる価値はある”。という吉谷さん。

吉谷「特に社会人の方にとっては、”今まで積み上げたキャリアを捨ててここに来る価値はあるのか”と考えると思うけど、その価値は十分あると思います。私自身、こちらに来て自分の力不足を痛感しました。」

「例えば、都会で働く中で何かプロジェクトを実行させたいとなったら、周りに同じようなプロジェクトをしている会社や友人がいるから視察にいったり真似をできたりする。けど、島で同じような考えをもった時、私だけの力では本当に何もできないんです

そんな時、私は都会で出来た気になっていただけで、一人の実力では何もできていなかったんだな、と気づくんです。そういう意味でも、自分の実力を試せる環境だと思います。」

吉谷「とはいえ、都会に比べて余白が多いので時間はたっぷりあります。私自身も、その時間で英語を学んだりヨガを深めたりしました。シェアメイトも島を目一杯観光する子もいれば、趣味に時間を費やす子、本当に素敵な時間の使い方をしていました。島でポツンと自分の現状を把握しながら、そこからどうするかをまっさらな状態で考えられる、今の私にとっての島はそんなありがたい環境でした。」

他にも、船の欠航、予定が崩れる、時間が遅れる等、考えてもないことが起きるのが島の日常。そこに対応する柔軟性と切り替える力がついたなって思います。と話してくれました。


あとがき

就職という選択

転職という選択

島に留学するという選択

それぞれの選択によって得られるものは変わってしまうかもしれないけど

ちょっぴり線が曖昧な島の日常の中で感じた手触り感は

自分にとっての原体験として揺るがない軸に繋がっていくかもしれません


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