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フローラの十二か月―植物・祝祭・物語


フローラの十二か月―植物・祝祭・物語

 題名からは、何の本なのか、想像しにくいですね。
 ごく大ざっぱに言えば、この本は、フランスの伝統文化について書かれた本です。

 フローラとは、ローマ神話に登場する花の女神の名です。生物学の用語に取り入れられて、「植物相」という意味でも使われます。
 ヨーロッパ文学の世界では、植物全体の比喩として、よく使われます。

 どこの国でも、伝統的な文化には、その地域の植物が、深く関わっています。
 この本は、フランスの伝統文化について、植物との関わりから、解説しています。

 解説、とはいえ、堅苦しいことは、まったくありません。筆者の語り口は、軽妙です。するする読めます。これは、訳者さんの力も大きいのでしょう。

 それでいて、内容は、高度です。
 この本を通読すれば、フランスのみならず、ヨーロッパの伝統文化について、相当な知識が得られるでしょう。
 それも道理です。この本の筆者は、本職が植物学者です。フランスでも、指折りの知識人の一人だと思います。

 植物に興味のある方、フランスに興味のある方に、お勧めです。
 「フランスのクリスマスってどんなふう?」とか、「フランスには、どんな花が咲くの?」といった程度の興味でも、大丈夫です。
 ページを開けば、たちまち、あふれる教養の世界に誘われます。

 ヨーロッパの知識人のお約束として、ギリシャ・ローマ神話、および、キリスト教の知識も入っています。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

フランス祝祭日カレンダー(1995年の場合)

迷い込む危険を冒して

序章 暦と気候について
 ユーリウスとグレゴリウスあるいは時間の測定
 過ぎる時間から変わる天候へ

第一章 氷霧
 眠れる森の種子
 新年にヤドリギを
 冬のさ中に緑であり続けるキヅタ

第二章 蘇りしもの
 春の祭典
 「枝の主日」のツゲ
 油と塗油の秘跡――オリーブ
 木と「十字架」――レバノンスギ
 復活祭の園
 一茎のスズラン

第三章 夏の盛り
 自然が最盛期に達するとき
 聖ヨハネの日の火と薬草
 ゲッケイジュの冠とカシワの葉
 花束と旗
 聖母のバラ
 コムギの刈り入れとブドウの収穫
 果実のとき
 仮庵【かりいお】の祭り

第四章 死と蘇り
 秋の色
 フランチェスコとテレサ
 万聖節――キク
 死者の日
 花と花輪
 十一月十一日
 聖ニコラ――アーモンド
 クリスマスの夜
 十二月二十五日
 聖シルヴェストル祭

謝辞
概略書誌
訳者あとがき――尾崎昭美【おざき あきみ】

◆フランスの主な祝日



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