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2019年8月の記事一覧
雀の子【胆沢の民話⑯】岩手/民俗
『雀の子』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
遊び疲れて家に帰る途中の太郎は、道の真ん中で急に便を催したくなりました。木蔭かとも思いましたが、そんな物色をする暇もなく、道路の真ん中でやってしまいました。
気分良さそうに悠々とやっていると、遙か道の彼方に、二本差しの武士がこっちに向ってやって来るのが見えました。
太郎は大変だと思いました。無礼者と、首の根っこをバッサリやられ
馬を盗んだ盗人【胆沢の民話⑮】岩手/民俗
『馬を盗んだ盗人』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
盗人の名人がありました。名人と言えばおかしいですが、その盗人は、何日何時頃と予告して盗るので、その時刻に注意していながら、まんまと盗まれるのでみんなから驚かれておりました。
ある長者(金持ち)がその盗人に、自分の所の馬を盗んでみよ、と言いました。長者の所には馬が5頭おりました。5頭一緒に盗んだら、その盗んだ5頭の馬を全部
屁っぴり嫁ご【胆沢の民話⑭】岩手/民俗
『屁っぴり嫁ご』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
いい嫁に恵まれて喜んでいる姑に、この頃心配なことが持ち上がってきました。それはここ4、5日前から嫁の顔色の優れないことでありました。姑はそれとなく聞きますが、嫁はニッコリしながら横にかぶりを振るだけでありました。
それがニッコリが消え、かぶりもしなくなったので姑は、
「何でもないという事はなかろう。あんまり顔色も冴えない
子供に目玉をやった母【胆沢の民話⑬】岩手/民俗
『子供に目玉をやった母』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
名主に用事のできた三之亟(さんのじょう)は、一人身の気安さから、昼食の後片付けもせず家を出かけました。道も半ば頃かと思われる所に来た時、遙か前方に5、6人の子供等の騒いでいるのが目に入りました。何事かと小急ぎに近付いてみると、子供等が一匹の蛇を道の真ん中に出して、棒切れや竹などで乱暴しているところでした。
蛇とはい
えものは二分【胆沢の民話⑫】岩手/民俗
『えものは二分』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
太郎、二郎、三郎の三人兄弟がありました。3人は1軒の家から、姉妹3人を嫁にもらい、行ったり来たりも3人一緒にしていました。
今年も嫁の家から刈上げ振舞いに呼ばれたので行くことにしましたが、三郎は弓矢の名人なので、お土産に獲物を持っていくからと、太郎と二郎を先にやりました。三郎は弓矢を持って、堤のほとりを歩いていると、鴨がい
屁っぴりぢいさん【胆沢の民話⑪】岩手/民俗
『屁っぴりぢいさん』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
ある所に日本一を自称する屁っぴりのおじいさんがありました。なるほど日本一と自慢するほどあって、注文に応じて即座にぶっ放すのはまだ初歩の方で、屁音と言いますか、そのものに節(曲)などもつけまして歌などもやりますものですから、可笑しいということを通り越して、感心する人が多く、確かに日本一の値打ちはあると皆が認めました。
勿
長者の嫁になった末娘【胆沢の民話⑩】岩手/民俗
『長者の嫁になった末娘』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
ある所に長者がありました。その長者に一人の子供がありました。
長者の一人っ子といえば気ままで弱虫か、そうでなければ病弱という事になっていますが、どうしてこの長者の子供だけは利巧で健康で、それに容姿も立派でありました。ですから両親はことのほか大喜びでした。だからといって子供のことを自慢して歩くという事をする親バカでも
天気予報(雪がふる)【胆沢の民話⑨】岩手/民俗
『天気予報(雪がふる)』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
あるところのお百姓のうちでお婿さんをもらいました。このお婿さんはとてもよくお天気を当てることが上手でした。家内の人達が天気のことで心配していると、今日は大丈夫お天気が良くなるから雨具の準備がいらないと言えば、その通りの天気になり、朝仕事に出かけるとき空が晴れているので今日はお天気だなあと言うと、お婿さんは今は晴れてい
たからの話【胆沢の民話⑧】岩手/民俗
『たからの話』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
ある所に沢山の財産を持って豪奢な生活を営んでいる人がありました。その人は俺は日本一の幸福と思っていました。財産があることによってどんな事でもできるし、食いたい物も食えるし、こんな恵まれた生活ができるのも財産こそは宝だと他人にも吹聴しておりました。
その財産家の家からあまり離れていない西隣に、貧しく暮らしてはいるが、6人もの子
五人のお婿候補【胆沢の民話⑦】岩手/民俗
『五人のお婿候補』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
ある所に、沢山の財宝に恵まれて何不自由のない生活をしている夫婦がありました。夫婦には一人の娘がありました。その娘は親孝行であるばかりでなく、稀にみる美人でもありましたので、夫婦の喜びようは大変なものでありました。
その娘も父母の限りない慈愛に応えて、順調に育ってくれました。そして年もいつしか17になっていました。17にな
ふるやのもるや【胆沢の民話⑥】岩手/民俗
『ふるやのもるや』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
お婆さんがお爺さんに言いました。
「今夜も虎が馬を狙って来るべなぁ、世の中で虎ほど怖いものはない。田畑を荒らし馬もとって喰う、本当におっかねぇ。」
と、お爺さんは
「虎よりもふるやのもるやが怖い、今夜のように雨降りになるとことさらだ。」
と答えました。厩舎の方では、馬を盗みに来ていた馬泥棒と、馬をとって食べようとし
時鳥になった三郎【胆沢の民話①】岩手/民俗
『時鳥(ほととぎす)になった三郎』
参考文献:いさわの民話と伝説 胆沢町教育委員会
友達と別れて家に帰った三郎は、
「あずきご飯を食べたい」
とお母さんにせがみました。お母さんはびっくりして、
「どうしてどうして、うちのような貧乏では、あずきご飯など食べれない」
と冷たい返事をしました。しかし三郎は、お母さんのそれくらいの返事で引っ込んではいませんでした。あずきご飯を食べたいとうるさく