天気予報(雪がふる)【胆沢の民話⑨】岩手/民俗
『天気予報(雪がふる)』
参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会
あるところのお百姓のうちでお婿さんをもらいました。このお婿さんはとてもよくお天気を当てることが上手でした。家内の人達が天気のことで心配していると、今日は大丈夫お天気が良くなるから雨具の準備がいらないと言えば、その通りの天気になり、朝仕事に出かけるとき空が晴れているので今日はお天気だなあと言うと、お婿さんは今は晴れていても、今にきっと雨が降るから雨具を持って行くようにと、雨具の準備をさせて出かけさせました。そしてやはりその通り、次第に雲が厚くなり雨が降り出してきました。なぜ当たるのだろうと誰も不思議に思いましたが、その謎は解けませんでした。
春も過ぎて真夏を迎え、かんかん照りつける日が続くようになりました。お舅(しゅうと)さんが、ふとこういう事に気付いたのです。それはお天気のことを聞くと、お婿さんは決まって自分の部屋に行ってきてから答えることでした。
ある日みんなが働きに出た後で、悪いことだとは思いましたが、お婿さんの室にはお天気を当てる仕掛けがあるのではないかと思い、見たくて堪らなくなり、そっと行って見ると、何も仕掛けがしてありません。あったのは長持(衣類を入れる木箱)の上に、小さな行李(柳や竹で編んだ箱)が置いてあっただけです。何だろう、この中にお天気を当てる道具でもあるかもしれないと思って、蓋を取って見ますと、ただ一本、汚れて汚い褌が入っているだけでした。お舅さんは考えました。もしかするとこれがお天気の種かもしれない。試してやろうと、台所から小麦粉を持ってきて、これに振りかけ蓋をしておきました。
夜が明けて、天気の良い夏の朝を迎えました。仕事に出かけるに先立って、お舅さんがお婿さんに、今日の天気はどうだろうと聞きますと、お婿さんは自分の室に行き、しばらくしてから首を右に曲げ左に曲げして出てきて、渋い顔で答えました。
「今日はなんとしても雪がふる。」
と。