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のののーと

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【のののーと】ショートショートのまとめ。 主にコメディのショートショート。一日一更新できたらいいなの気まぐれ更新。
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#物語

のののーと10

のののーと10

「わぁ雪だ。こんな季節に雪なんて」

私がベランダから下に向かって発泡スチロールを削っているだけでこいつは雪だとはしゃぐ。物凄い行列に並ばせてこれは儀式だというと「そんな神聖なのあるんだ」と喜んで2〜3時間平気で並ぶ。そんなやつだ。そんなやつだこいつは。
「今日どこ行く?」とそんなやつが聞いてきた。
「棒を倒して倒れたほうに行こう」と適当なことをいうと目を丸くして「そんな、方法が!?」と驚く。この

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#のののーと6

#のののーと6

「昨日の晩御飯なんでした?」
「お雑煮です」

お見合いではないけど、アプリで出会いたくて始めたが初対面の人と話すのに疲れた。
こたつの中でみかんを食べながらテレビを見る。季節は6月だ。

いいじゃないか。こたつ好きだし、みかん好きだし、お雑煮も好きだし。季節関係なくない?じゃあ聞くなよ「昨日夕飯は?」とか聞くなよ。何なんだよ。会話のキャッチボールがウィットにとんでないやつの定型文だろ。夕飯の話と

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#のののーと5

#のののーと5

「くるしゅうない。おもてをあげえ」

と殿様に言われている。でも私は苦しかった。私は苦しかったのだ。

寝れない日は布団で横になるが特にすることはない。夜這いなどという行為は体力を使う。かといって外に出歩くわけでもない。全てをこの布団の中で解決させたい。
天井を見るが特に何もない。「あ、あそこに染みがあるな。何の染みだっけな」程度だ。
寝返りをうちまくる。これは快挙だ。数えてはないが今この国で私が

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#のののーと4

#のののーと4

釣り堀という場所がある。文字通り釣りを楽しむ場所だ。お金を払って釣竿を借りる。

「嬢ちゃんは釣らないの?」

と知らないおじさんが声をかけてくる。

「うん、釣らない」
「何してるの?」
「え、ゲーム」
「ゲームかぁ」

私は釣り堀でスマホのゲームをしている。お金を払っているのだから自由だ。別に大きな音を出しているわけではない。静かに自分の場所でゲームをしている。それってネットカフェとかでよくな

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#のののーと3

#のののーと3

「やー」

って何? 色々喋らせておいて「やー」って言うの何? どこの方言? 「やー」には何が含まれているの? 少なくとも私は嫌な気持ちなっているから「やー」という物質にはアレルギー反応を起こしている。
三人組で手を前に出してやる「やー」は好き。元気になるから。でも散々話させておいての「やー」はなんだ。

この「やー」どっちかというと後ろ向きな感情のことが多い。マイナスな言葉だ。プラスな気持ちで「

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#のののーと2

#のののーと2

好きなものを手に入れてしまうのが嫌いだ。手に入れた途端それは熱を帯びなくなると思ってしまう。それは何故だろう。分からない。いつからだろう。分からない。
物心ついた時? という物心とはなんだ。物に心があるのか? あるか。物にも心はあるか。そうか、そうだな。おばあちゃんが言っていた気がする。うーん。おじぃちゃんだったかな。

「好きです。付き合ってください」

と帰り道。突然呼ばれて行ったらこれだった

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#のののーとの1

#のののーとの1

「いってらっしゃい」

と決まって手を振る相手は忙しいのか後ろ姿しか見せない。夜は遅く帰って、朝は早く出ていく。これはすれ違いというレベルではない。もう別居だ。
結婚生活も長く続けていくと同じことの繰り返しとなる。マンネリだ。ここはビシッと言う時だ。

「あのさ、これはマンネリだと思うの。あなたは毎日朝早く出ていって夜遅くに帰ってくる。顔を見合わせるのはいつ?こんなこと言いたくないけど仕事と家庭ど

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