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#のののーと4

釣り堀という場所がある。文字通り釣りを楽しむ場所だ。お金を払って釣竿を借りる。

「嬢ちゃんは釣らないの?」

と知らないおじさんが声をかけてくる。

「うん、釣らない」
「何してるの?」
「え、ゲーム」
「ゲームかぁ」

私は釣り堀でスマホのゲームをしている。お金を払っているのだから自由だ。別に大きな音を出しているわけではない。静かに自分の場所でゲームをしている。それってネットカフェとかでよくない?と人は言うだろう。ネットカフェはダメだ。空気がこもる。静かだけどうるさい。その点釣り堀はいい。静かだ。このために船を出して海に浮かんでいるタイプの釣り堀に来ている。周りはいわゆる釣りの“ガチ勢”ばかり。その中をまだ20前半の娘がスマホゲームをしている。

「何のゲームしてるの?」
「え、何のゲームしてるの?」
「パズル」
「パズルねー。おじさんもパズルやるよ」

あー。来た。進撃だ。私の領域に入ってきた。話しかけてくるなよー。これ以降あの釣り堀には行っていない。

ある日のファーストフード。
「いつもあんた休日何してるの?」
「え、ゲーム」
「ゲーム!? 何の?」
「スマホ」
「どっか行こうよ」
「行ってるよ」
「どこに?」
「釣り堀」
「え、釣りが好きなの?」
「いや、ゲームやりに行ってる」
「釣り堀に?」
「釣り堀に」
「変わってるねー」
「そうかな」

別に変わってはいない。という何かしらして変わっているのか。世の中のベーシックとはそもそも何基準なのか。何の基準からはみ出たら変わってのか。その基準が争いを生むのではないか?とすら考える。

「ラブアンドピース」
「え?」
「え?あ、トイレ」

と言い、席を立ち私は戻らなかった。友達でも踏み込んでいいことと悪いことはあるんだよ。

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