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『取』という字に耳が使われている理由を知れば、人の話したくなる

 なぜ『取』という漢字に耳が使われているのか?
 そんな、日本人の98.9%が考えもしない(たぶん)ことについて、考えてみましょう。

 漢字は、日本語にとってなくてはならないものです。しかし、元は大昔の中国で生まれたものです。

 大昔の中国といえば、『戦い』ばかりやっていました。

中国の戦国時代が舞台の漫画『キングダム』
原泰久/集英社/19巻 p26


 戦争では、敵を倒せば倒しただけ褒美がもらえます。
 しかし、ゲームとは違うので、『画面の右下に倒した敵の数が表示される』なんてことことはありません。

コーエーテクモゲームス『真・三国無双6』

 倒した敵の遺体を持ち運ぶことも、物理的に難しいです。
 そこで、討ち取った敵の左耳を切り取り、それを証拠としたのです。耳の数で戦功を数えたのでした。

 つまり、『取』という字は、『耳を切り取っている様子』から作られたのです。(右側の「又」の部分が手を表しています)

『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』p15
小山鉄郎/共同通信社


 今回の日本語 記事は【漢字の成り立ち編 パート2】です。

👇パート1は、こちら👇


1.道


 道という字には、『首』があります。
 なぜでしょうか?



 古代、外界に通じる道は、邪悪な霊に接触する非常に危険なところと考えられていました。

 そこで、異族の人の首をはね、それを持ち歩き、その呪力によって邪霊をはらい清めて進んでいたのです。
 首を持ち歩くなんて今では考えられませんが、現代の価値観とはまったく異なる時代の話です。

 ここで新たな疑問が・・・・・・。
 では、「しんにょう」は何を意味するのでしょうか?

しんにょう



 実は、「しんにょう」は十字路で足を止める様子です。


 したがって、「しんにょう」が使われる漢字には、移動に関する字が多いです。 

  • 退


 さらに、『進』について。この、


 赤丸で囲まれている部分は、「尾が短い鳥」を指します。

『白川静博士の漢字の世界へ―小学校学習漢字解説本』p106
福井県教育委員会/平凡社



 尾が短い鳥は、後退できず前に進むことしかできないので、『進』に使われています。

(軍隊の進退を占う際、鳥を使ったという説もあります)

2.点は必要?


 上の字は、どちらが正しいでしょうか?(点の有無のちがい)

 正解は・・・・・・


   





 
 右です。点は必要です。


 正直に言ってください。

 『博』に点を打つかどうか、迷ったことはありませんか?
 『専』に点が必要かどうか、混乱したことはありませんか?

 私はありました。

 『博・専・恵・穂』「点がいるのか、いらないのか四天王」と言います。

 そこに『縛・薄』が加わわると、「点がいるのか、いらないのか六軍団」にパワーアップします。

『ダイの大冒険』 文庫版2巻
稲田浩司 ・三条陸/集英社

 


 結論からいうと、「音読みしたとき、ハ行の音があれば点が必要」です。

  • 博(ハク)

  • 縛(バク)

  • 簿(ボ)

 それに対して、以下の字は「音読みしたとき、ハ行の音がないので点は不要」です。

  • 専(セン)

  • 恵(ケイ)

  • 穂(スイ) ※「ほ」は訓読み


 では、なぜハ行の音があれば点がつくのでしょうか?

 実は、この部分は、


 『甫』+『寸』からできています。
 さらに、『甫』を分解すると、『父』+『用』に分けられます。


『父』の、


 右上の点が、『博』の右上の点にあたります。
 そして『父』の音読みは「フ」ですから、ハ行の音につながるのです。

 ただ、ここまで由来を覚えておく必要はないと思います。
 点が必要かどうか迷ったら、「ハ行の音なら点が必要!!」と思い出してください。

3.線は、何本?


 『子どもたち』の『たち』を漢字で書くとき、

 で迷うことはないでしょうか?




 正解は、『達』(横線は3本)です。
 二度と迷うことのないよう、字源(漢字の起源)について一緒に勉強しましょう。

 『達』の中には、『羊』がありますね。
 これは、文字通り羊です。


 『達』の右側は、もともと、


 であり、羊が産道を通ってゆっくり産まれる様子を表しています。
 さらに、昔の中国において羊は安産のシンボルでした。

 漢字を作った人(誰なのか、わかっていません)は、「さわりなくものごとがするすると通っていく様子」を『達』で表現したのです。

「漢字を作った人」の勝手なイメージ図


『プレミアムカラー 国語便覧』p381
足立直子 他監修/2017年/数研出版

 
「達成」「到達」といった熟語を見れば、「障りなくものごとが通っていく」という意味がわかるのではないでしょうか。

 また、『達』に「しんにょう」がついているのは「道をさまたげられることなく通っていく」という意味を持つからです。こちらは、「通達」「速達」といった熟語で理解が深まるはずです。


4.今までと逆をやってみましょう

 
 今までは、具体的な漢字を挙げ、その字源を知るという流れでした。今度は、字源から漢字を考えてみましょう。

 下の3つの要素から生まれた漢字は、何でしょう? 


『白川静さんに学ぶ  漢字は楽しい』p38
小山鉄郎/共同通信社







 これは、『祭』です。

 左上は、一枚の肉です。「にくづき」の二本線は、肉の筋なのですね。
 下は、神様を祭るテーブルです。
 右上は、神様に捧げる肉を置く「手」です。

 お祭りのとき、神様に肉を捧げる様子から『祭』という字が生まれたのですね。



 次は、

『白川静博士の漢字の世界へ―小学校学習漢字解説本』p67
福井県教育委員会/平凡社

 です。

 ・・・・・・私は真剣です。

 決して、野原しんのすけがよく見せているやつではありません。

クレヨンしんちゃん公式ポータルサイトより

 


 これは、『心』です。
 心臓の形を元にして作られたのが『心』という字なのです。

5.まとめ


 漢字の字源を知ると、理解が深まります。書き間違えることも激減します。何より、楽しいのではないでしょうか。

 もし、どうしても覚えられない漢字があれば、字源を調べてみることをオススメしますよ。(インターネットでも調べられますので)


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