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十個は「ジュッコ」ではなく「ジッコ」と読む。

「十」は、「ジュウ」と読みます。

「十行」は、「ジュウギョウ」。
「十倍」は、「ジュウバイ」。
「十円」は、「ジュウエン」ですね。


ところが、
「十個」は「ジッコ」と発音します。




いやいや、自分は「ジュッコ」と発音してるよ!!

怒り狂って反論しようとしてるアナタ。


本来は、「ジッコ」なのです。



他にも、

  • 十冊(ジッサツ)

  • 十点(ジッテン)

  • 十本(ジッポン)

などがあります。


なぜ、「十個」は「ジュッコ」ではなく「ジッコ」なのでしょうか?
この記事で、一緒に勉強しましょう!!



1.歴史的仮名遣い


 「ジッコ」の謎を解くカギは、『歴史的仮名遣い』にあります。

  
 歴史的仮名遣いとは、以下のような表記のことです。

 中学や高校の国語で出てくるヤツらですね。



「は・ひ・ふ・へ・ほ」

は、

「ワ・イ・ウ・エ・オ」

と読む(ただし単語の頭文字を除く)、といったものです。

 

 『歴史的仮名遣い』の『読み方』や『現代仮名遣いに直したもの』を追加した表を下に載せました。

 


 そして、歴史的仮名遣いには、もっと複雑なものもあります。

【補足】
歴史的仮名遣いについて詳しく知りたい方は、ベネッセ(進研ゼミで有名ですね)のサイトがわかりやすいのでおすすめです。

 


 今回重要なのが、「5」と「6」です。

 要するに、『iu』と発音する部分が『yuu』に置き換えられます。
 図示すると、

 こういった具合です。
 つまり、

 わけです。(これめっちゃ重要)


2.「十」と歴史的仮名遣い


 そして、ここで「十」の出番。


 「十」は、もともと「じふ」と歴史的仮名遣いで表記されました。

 この「じふ」の読み方は、

から、

とされます。なぜなら、

という法則があるからです。

【補足】
『ふ』は、『う』と同じ扱いを受けます。どちらも『ウ』と発音されるので。

 

 表にすると、

 こうなります。
 さぁ、これで「十」が「ジュウ」と発音されることは確認できました。


 
 ここで、いったん子猫の写真でも見て休憩しましょう。

猫ちゃんは記事の内容に関係ありません


3.ジュッコとジッコ


 「十」が「ジュウ」と発音されることはわかりました。
 
 しかし、

なぜ「十個」は「ジッコ」と発音されるか

は、まだ謎のままです。

 そこで、「十」がつく言葉を並べてみましょう。そして、その発音も合わせて書きます。

 これらを、ぜひ声に出して読んでください。
 「1~9番」のどこかから、「読みづらいもの」があらわれるはずです。







 おそらく、多くの人は「ジュウサツ」「ジュウテン」「ジュウコ」は、読みづらかったと思います。

 そこで、先ほどの表を読みやすい発音に変えると・・・・・・

 となるでしょう。
 多くの人は、このように発音しているのではないでしょうか。

 「ウ」が「ッ」に変わりました。
 この現象を『促音便そくおんびん化』したといいます。



【促音便化】
 発音しやすいように、あるおとが、「ッ」に変わること。

例①「走りて」→「走って」
例②「取りた」→「取った」

 ほとんどの人が無意識に使っている。
 促音とは、「ッ」のこと。

4.さぁ結論!


 「十個」について、「ジュウコ」と読むのは発音しづらいので「ジュッコ」と促音便化されることがわかりました。


 
 しかし、ここでトラップカードが発動されます。


高橋和希『遊☆戯☆王』


【※トラップカード】
 漫画『遊☆戯☆王』に登場するカード。
 状況を一変させるような効果を持つ。


 そのトラップカードの内容は、

 という先ほど触れた法則です。


は、

が適用されて、

と、なりました。
しかし、このままでは発音しづらいため、促音便化されて、

に変身。


 ところが、促音便化により「ウ」が消えてしまいました。

 そのため、

 の法則は適用されません。
 したがって、「ゅ」が挟まれることはないのです。

 「十冊」も「十点」も同じ理屈です。

といわけで、

 なぜ「十個」は「ジッコ」と発音されるか

 の回答は、

 といえるでしょう!!!


猫ちゃんも満足!



 辞書にだって、ちゃーんと「ジュッ」ではなく「ジッ」と書いてあります。(「十進」は「ジッシン」と読む)

『学習国語新辞典』(全訂第二版)p307
小学館/2006年



5.だから何なの?


 しかし、実際に「十個」は「ジュッコ」と発音されるのが一般的のはずです。(今日こんにち、「ジュッコ」という発音は誤りとは言えないでしょう)


 言葉は変化するもの。
 使いやすい方、発音しやすい方に、変わっていくことがあるからです。


 ですが、もし――

「十個」を「じっこ」と発音する人がいても、決して「まちがってるよ!」と非難しないでください。
 本来はその人が正しいのですから・・・・・・。



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